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末梢動脈疾患のリハビリテーションに関して①

今回は末梢動脈疾患の病態と治療方法について書いていこうと思います。

はじめに     

末梢動脈疾患(Peripheral Arterial Disease:以下PAD)は, 広義では冠動脈以外の動脈病変と考えられており、本来は脚だけではなくお腹や腎臓などの動脈も含まれています。ただ、欧米諸国ではPADと下肢閉塞性動脈硬化症は同義語として用いられているため、このnoteでもPAD=下肢閉塞性動脈硬化症として扱っていきたいと思います。

PADってどんな病気?


私たちの細胞は血液に含まれる酸素を栄養分として活動をしています。しかし、脚の血管の動脈硬化が進行してくると、血液の通り道が狭くなり細胞に十分な酸素がいきわたらなくなります。PADとは、細胞への血流不足により脚の痛み(間欠性跛行)や足の冷感、痺れを発症する病気です。病気の進行に伴い症状が変化していくため、疾患の重症度判定には病期と症状を結び付けたフォンテインの分類(Fontaineの分類)が用いられます。

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では動脈硬化はなぜ起こるのでしょう? 

動脈硬化とは加齢や生活習慣の悪化により血管の内側にコレステロールが溜まったり血管がもろくなることをいいます。動脈硬化の原因としては①高血圧、②糖尿病、③高脂血症、④喫煙などが挙げられます。特に50歳以上でこれらの生活習慣病を有する方はPADの発症リスクが高くなるため注意が必要です。

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PADの治療方法

PADの治療方法は大きく分けて3つあります。

1つ目は薬物療法で血管拡張薬(血管を広げる薬)や抗血小板薬(血液が固まりにくくする薬)を使用して症状の緩和および脳血管疾患の予防をします。

2つ目は血行再建術(手術)で手術の内容はカテーテルを用いた血管内治療と、外科的に治療を行う血管内膜摘除術やバイパス術に分けられます。外科的治療に比べてカテーテル治療は創部も小さく体への負担が小さく済みます。ただし、動脈硬化が進行し血管が完全に閉塞してしまっている方はバイパス術など外科的治療が適応となります。

そして3つ目が運動療法です。運動療法はPAD治療の第一選択肢となることが多い治療法です。先ほど出てきたフォンテインの分類でⅡ度以下の方は基本的に運動療法が優先されて行われ、運動療法でも効果が見込めない場合、および日常生活に大きな支障をきたす場合は手術が適応となります。近年では、薬物療法と併用して運動を行う薬剤併用運動療法なども実施されてくるようになってきました。

運動療法って何?

運動療法とは  '障害や疾患の治療や予防のために運動を活用すること' 参考: e-ケアネット 厚生労働省

PAD患者に対する運動療法は主に歩行訓練を中心とした継続的な運動介入がガイドラインで推奨されています¹。 運動の導入時期は医療スタッフ監視下でのトレーニングを推奨されており、運動の頻度は週3回以上で、30分~1時間程度の運動療法が1日の運動量として推奨されています。1回の療法中, 歩行訓練の負荷量は、運動開始から3~5分で下肢疼痛が出現するよう設定します。疼痛が出現した後も歩行を継続し、痛みが中等度以上になった時点で歩行を中断し、脚の痛みが治まるまで安静にします。その後、運動を再開し, 再度中等度の疼痛が出現するまで歩行訓練を実施し、この運動と休息の繰り返しを約30分~60分程度継続します。

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以上、血管疾患の病態と治療法に関してでした。

次回からは、血管疾患のリハビリテーションにおける課題と工夫について書いていこうと思います。


1)TASC II Working Group, 日本脈管学会:下肢閉塞性動脈硬化症の診断・治療指針II  日本脈管学会 編集, メディカルトリビューン, 2007

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