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「1LDKに120人で住んでいる」お話

「せまいよ、ほんと狭い」

だって120人だよ?およそ60㎡の部屋に120人が同居。一人当たりに充てられた面積なんて考えるのもメンドクサイくらい。まあ僕はトイレから遠い部屋にしてほしいとリクエストをしたい。そこは譲れない。

実際にこんなことは起きない。「こんな状況」になることは多いけど。

大学時代の友達が転職をした。どうやら転職先の上司が変わり者で、その上司は「職場ではほとんど会話もしない、趣味も大してないが、唯一心を許せる友達がいる」らしい。友人は、「なんかこのタイプの人間、身近にいるな」と思ったらしく、意を決して話してみたところ、「上司の友人=自分の父」だったそうな。

世間って狭いよな。という言葉で締めくくられたエピソード。その通り、世間というものは狭い。テレビで見ていたスポーツ選手が隣のマンションに住んでいるのだから、日本って実は3,000人くらいしかいないんじゃね?とか思ったりする。

世間は狭い。僕は最近はその狭さがうっとうしくなる。隣の人が何をしているのか、自分の知り合いが実はどんな性癖があって、あの人はこういう人で、過去にこんな良くないことをしていて、実は○○には反対する意見らしいよ。という、ザックリ言って「どうでもいいこと」が見えてしまう。

みんなそうなんだから仕方ないでしょう。と思うときもあるけど、いらない情報は指のささくれのようなもので、その時は「チクッ」と痛い程度だが、一度気になると、気にせずにはいられない。なんならさっきより痛くなった気がする。

「家族ルール」

誰だって仲間や友達は欲しい。その手っ取り早い方法が、共通の趣味や意見をもつ人と繋がることで、共通点の多い人と頭の中で同居してしまえば、時間という要素を差っ引いて、短期間で仲間をつくることが出来る。

2,3人の共同生活ならいい。ただ僕らはせっかくできた素晴らしい仲間をさらに増やせないか?という気持ちになる。その結果、小さな要素で構成された巨大な繋がりが出来てしまう。すごく小さい部屋に「どうぞどうぞ」と招き入れてきた結果、「1LDKに120人で住む」という状況が出来てしまうのだ。

誤解のないように伝えたいのは、僕は友達が増えることはいいことだと思う。僕も様々なご縁もあって、SNSのフォロワーが1500人を超えた。何も変哲のない30代独身男と知り合ってくれた人が多くいることは非常にうれしい。仲良くいろいろやり取りしたいのは本心としてしっかりある。ただ単に、常に大多数の人と「繋がっている」「知っている」状態というのがしんどく思うというところだ。

見て見ぬふりをすればいいのに、「ルールに従ってよ。こんなことはダメですよ」みたいな感情が生まれてしまう。見て見ぬふり、気にしない。という所作は、今の世の中難しい。さまざまなツールで瞬時に情報が管理され、閲覧でき、それを伝える術は知っているだけで10個はある。その結果、同居人120人の嫌なところを全て知ることになる。

ならその家から出てはどうか。と思うけど、出家は難しい。せっかくつながった人々だ、失うのは…なんて感情が芽生える。これがとても厄介。結果ずるずるとゲキ狭共同生活は続いてしまう。いつもどこかでモヤモヤした気持ちで生活するのは、確実に自分を削っていく。

テントを持ち寄ればいい。

人間関係は、広場にテントを持ち寄って生活する感覚でいるのがいいと思う。

テントというのは絶妙なアイテムで、個室をつくることが出来る一方で、隣の人の気配を感じることもできる、「準個室」だ。

焚火の周りに集まってワイワイ話すのもいい、みんなでゲームをしたり、休みたいならテントに入ればいい。誰一人疎外感を感じることなく過ごすことが出来るだろう。周りの話し声は聞こえたり聞こえなかったりする。「聞こうとすれば聞けるかな?」という感じ。

そしてなにより自分の家が別にあることが重要だ。テントに持ち込める物資にも限界がある。「洗濯しなきゃいけないから帰るわ」と一言残して、自分の意志で家に帰ることが出来るし、周りも特にそれを咎めもしないし、否定もしない。そしてまた集まりたくなったら、テントを持参し集まる。

こんな人間関係がつくれたらいいなぁ、とぼんやり思ってしまう。そうすることで相手を否定することなく、自分を曲げることなく、そして雑音を耳にすることなく、過ごせるのではないだろうか。と思う。

快適な生活をおくることで、快適な人間関係を築く。わかっていてもなかなかできないから、今回は文章にしてみた。

よし、そろそろ1LDKの我が家を掃除をしよう。大雪の翌日の土曜日なんてやる事と言えばこんなもん。微妙に広いから掃除は面倒だけど、やるなら今日だと思う。

明日はテントとか見に行ってみようかな。今年はグランピングにチャレンジする予定だから。

#今こんな気分


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