海外で新卒として現地就職を狙うためのアピールのしかた
オーストラリアの大学院を新卒で現地でエンジニア(技術者)として就職しました。結構前の話になってしまいますが、同じようなことをした人が周りにほとんどいないので、いくつかの記事に分けて体験談を書いていこうかと思います。
ちなみに海外での新卒就職はかなりキツイ、そしてコストとリスクが高いです。ですが見返りは大きいです。気軽におすすめはしません。
僕の経歴を簡単に紹介:
* 卒業直前に現地での新卒ポジションで採用される
* まだ学生ビザだったので採用オファーは永住権に申請するという条件付き
* オーストラリアで建設系の大学院に2年
* 当時の英語力はIELTS7.0~7.5くらい
* 就活期間は在学中の2年をフルに活用
* 仕事の応募数は合計で50くらい
いろいろな好条件がそろってなんとかオファーがもらえたという感じでした。
この記事では新卒での就活で重要だったことについて書いていきたいと思います。個人の意見がふんだんに含まれてますのでご注意ください。
内容はおもに求人に応募する場合についてです。
募集している仕事と自分をマッチさせる
一番重要なのは仕事・求められる人物像と自分が最高にマッチすることをアピールすることだと思います。
40社くらい応募してから気づきましたが、募集要項と自分の経歴とスキルがうまくマッチできていると圧倒的にレスポンスがもらえやすくなります。そしてインタビュー(面接)ではさらにどういった人間か、職場にフィットするかといったことが見られます。
そもそも採用側からすると応募者について知らないので信用できません。本当に求められる仕事ができるのか、人柄は職場に合うのか、コミュニケーションがうまくとれそうか、仕事を楽しめそうか、すぐに辞めたりしないか、などなど新しい人(特に新卒の外国人)を採用するときにはかなりの不安があるものです。
そして応募する側がするべきことは、これらの不安を1つ1つ取り除くことです。どうやるか?仕事と自分をマッチさせることで採用側に信用してもらいます。
* 仕事の内容と責任
* 人柄
* 英語力
* 仕事への興味
* すぐに辞めないか
といった点について採用側の不安をなくして信用してもらえるようにしましょう。
仕事の内容と責任
海外では新卒のポジションとはいっても仕事での役割や責任について書いてある求人がたくさんあります。応募するときにはそれらを1つ1つ「自分ならできる」ということを履歴者やカバーレターでアピールしましょう。
そうすることで採用側が持つ「あなたがこの仕事をこなせるかどうか」の不安を取り除くことができます。
例として"Graduate Civil Engineer"をSeek(オーストラリアの求人サイト)で調べて出てきたものをパラフレーズしたものを見てみます。
Applicant must have the followings:
* Comprehensive understanding of engineering principles and relevant Australian Standards and Regulations;
* Manage project budgets and site registries;
* Deliver quality assurance with relevant compliance;
* Preparations of response to queries from clients and stakeholders;
* Demonstrated skills in Microsoft Project applications;
* Assistance with other duties as required
たとえばこういったスキルや知識が求められるとして、1つ1つ履歴書とカバーレターで「自分ならできます、なぜならこういった経験があるからです」と具体的な例をだしながらaddressしていきます。
新卒として職務経験がない場合にどうアピールするかというと、大学・インターン・バイト・ボランティアなどの経験がメインの武器になります。それらをうまくinterpretして要件を満たすように書いていきます。
要件の中で難しいのは最初の4つなので、それらについて例となるアピールを考えてみましょう。
* 大学でのプロジェクトで架空のビル建設プロジェクトを題材にして、プロジェクトの予算管理や建設サイトのマネージメントを実際のガイダンス・条例・法律を使いながらひと通り経験したのでそれらの理解と応用力がある
* 品質管理についての大学でのコースとアサインメントを通じて実際に必要なコンプライアンスについて学んで、それを大学のプロジェクトに応用した
* カフェのバイトで顧客やチームと日常的にコミュニケーションをとり、質問や要望を正確に理解して適切に対応してきた経験があるので、それをエンジニアとしてclientやstakeholdersとのコミュニケーションに活用する自信がある
今思いつく限りで書いてみましたが、こういった感じで実務経験やインターンの経験がなくともアピールしていくことができます。もちろんインターンやなんらかの形での実務経験に勝るものはありません。
最悪ちょっと盛ってもいいので、1つ1つすべての要件を満たしているようにしたほうがレスポンスがよくなります。もちろん明らかな嘘はいけません(学士をもっている、~で働いたことがある、など)
人柄
海外(英語圏)では合理的にものごとを考えることが多いですが、採用する側も人間なのでやはり応募者の人柄によっても選考結果は左右されます。
基本的にはやはり明るくて一緒に働きたいと思われる人のほうがレスポンスがきやすいです。さすがに履歴書やカバーレターでは判断するのが難しいので、インタビュー(面接)で判断されると思います。
では応募者として何ができるかですが
* 常に笑顔でいる
* 声は大きく、自信をもってゆっくりはっきり話す
* ポジティブな反応や捉え方をする
* 目を合わせて話す
* ボディーランゲージを使う
はい、コミュ障にはかなりきついです。僕はどっちかというとコミュ障側だったのでもはや演技をするくらいで面接に臨んでましたが、やはりこういった話し方をするとけっこうウケがよかったです。
中でもポジティブな捉え方はどんな職種や職場でも大切で、インタビューではそれを見せるチャンスになります。
例えばインタビューでの質問でよくあるのが
* あなたの短所は?
* 今までの失敗経験は?
* できないことやわからないことがあったらどうする?
というようなネガティブなことに関する質問です。
こういうときにはまずは正直に自分のことや考えについて言ってしまい、そのあとに必ず「なので~するように工夫することで問題を解決できるようにしています」というように対策をしていることや「それを逆に利用することによって問題を見つけ、そして解決できるようにチームで協力していく」というようにネガティブなことを表裏一体に考えてポジティブなことに昇華させるといったことで一緒に働きたくなるような人に見えます(多分)。
新卒の場合は売り込める経験がほぼないのでこのあたりでも努力が必要になります。
一番最初の仕事をとるのが一番大変なんで頑張っていきましょう。
英語力
外国人として応募する場合に採用する側・される側ともに不安に感じるのが英語力です。なので書類選考は必ずネイティブにチェックしてもらう、そして面接については事前に練習をしておくことが必須です。
まず書類ですが、大体の場合にはメール・履歴書・カバーレターを書くことになります。これらはテンプレートをまずは用意しておいて、応募するポジションごとに変更を加えましょう。そしてネイティブにチェックしてもらって修正しましょう。
たとえば留学生なら大学に就職課みたいなのがあるはずなので、そこでそもそものアプリケーションのつくりかたを学んで、さらに添削してもらいましょう。そうでなければ個人や企業がしている添削のサービスを利用してしまうのもいい方法です。
面接は想像通り難易度が高いです。どうすれば上手くいくかというと、ずばり練習しておくことです。ネイティブでも緊張してうまくできない人がいるので僕らのような非ネイティブはさらに準備しておく必要があります。
とはいえ急に英語力が上がることはないので、出来ることと言えばとにかく早めにはじめることです。面接のサポートも就職課やサービスを利用すればできます。
準備することといえば
* 面接の流れや質問を学ぶ(予想外の出来事を減らす)
* よくある質問とその答えをある程度準備しておく(がちがちに固めるよりアドリブをできる余裕をもつ)
* 質問を準備しておく(仕事・キャリア成長・一緒に働く人への興味を示す)
といったことができます。
あとは本番でどうなるかですが、個人的な意見としては「面接官と友達になる」くらいの感覚でいくとうまくいきやすかったです。要は人柄のところで言ったことを実践して、あとはフォーマルではなく大人カジュアルな感じ(言葉使いは堅くせずに内容はしっかりとする)で仲良くなろうとすると、ちょうどいい塩梅で相手に好かれやすくかつ自分もうまくアピールができると思います。
仕事への興味
仕事に興味をもっていることは絶対条件といってもいいでしょう。そしてそれをアピールするにはこれまでにしてきたことと、将来的な目標などを利用できます。
これまでの経歴を仕事に結びつけるなら
* 関連する企業や組織でインターンをする
* 大学での専攻や選択科目が関連している
* プロジェクトやアサインメントでのトピックが関連している
* 関連するボランティアやWork Experienceに参加する
* 現役のメンターをもつ
* 大学内外でメンターになる
* 自分の専門分野のprofessional associationなどのメンバーになる(例えばEngineers Australiaとか)
こういった活動や行動が専門領域への興味を証明してくれます。さらにその道のプロと知り合いになるチャンスも生まれるので、Refereeになってもらったり、直接仕事を紹介してもらえる可能性も出てきます。
(僕の友達は実際にprofessional associationのメンバーになって、そこで知り合った人のチームで新卒での仕事を貰っています。)
さらにカバーレターやインタビューでは将来的なキャリアや目標について応募する仕事との関連性をアピールしましょう。
具体的には
* その仕事を経験することでどう将来の目標に近づけるのか
* その企業や組織で経験を積むことがどうキャリア形成の役に立つのか
といったことについて自分の考えをまとめて、伝えられるようにするといいです。
例えば僕の場合には、自分の専門分野でもさらに興味がある分野でスキルをつけて、それをベースにしていろんな国でスペシャリストとして働いていけるようになりたい、とかそんな感じのことをインタビューで言ったのを覚えてます。実際に面接で、短期的(1~2年)と長期的(5~10年)のキャリアと目標について話してくれと言われたので喜んで説明したのを覚えてます。
そうして応募する仕事が将来的にやりたいことに強く関連していることをアピールすると採用側の不安(仕事に興味がない・すぐに飽きるかも、など)を下げることができるはずです。
すぐに辞めないか
仕事への興味と似てますが、どちらかというと応募者の生活に関するすることです。新卒外国人の場合には、その国・街に住むことができるか、フィットしているか、その地に人間関係や社会とのつながりがあるか、といったこともよく聞かれる・もしくは気にする人が多いです。
なぜならそういった私生活での充足がないと精神的に疲れてしまったり、孤独すぎて引っ越したり国に帰るのではないか、といったことを不安に感じているからでしょう。実際にそういった理由ですぐに仕事を辞めたり帰国したりする人もいるので、私生活の充実をそれとなくアピールできると採用側も少しは安心できます。
そのためにこちらが出来ることと言えば、地域とのつながりやコミュニティーに属していることなどでアピールできます。
たとえば
* その土地に家族や親族がいる
* 地元のスポーツクラブや交流会に所属している
* 定期的な交流会やイベントを主催している
* ボランティア活動をしている
* 地元のフリーマーケットや祭事などに参加している
とくに職場がある街に住んだことがなかったり、住んでいる期間がまだ短い場合などはとくに不安材料になりえるのでなにかしら地域とのつながりをアピールできると良い感じです。
僕の場合はすでに4回ほど転職+国・街の引っ越しをしています。そしてそれらの面接でほぼ毎回その国・街に親族や知り合いがいるのか聞かれました。同じように僕の友人(外国人)もよく聞かれるらしいので、やはりホームシックなどで仕事を辞めたり、健康を害さないかなどの不安があるのではないかと思います。
家族や親族はいなかったのですが、新卒ポジションの面接では地元の大学院を卒業したのでそこまで心配はされていなかったとは思います。それ以降の面接では適当に(架空の)友達が何人かそこに住んでるので大丈夫です、とか言ってごまかしました:)
とにかくこういった地元とのつながりも外国人だととくに不安材料となるので、たとえその地にまだ住んでいなかったとしても、趣味とかを通して地元の交流会かなんかに所属する予定です、と言うこともできます。工夫して採用側の不安を下げられるようにしましょう。
まとめ
今回は新卒で海外就職をする場合に重要だと感じたことについて書きました。
基本的には「募集している仕事と自分をマッチさせる」というのが最も重要で、採用する側がもつ以下のような不安を取り除けるようにしましょう。
* 必要な仕事と責任をこなせるか
* 人柄が良く一緒に働きたいと思えるか
* 英語力が十分でしっかりとコミュニケーションができるか
* 仕事への興味があり成長していく意思があるかどうか
* すぐに辞めずに続けてくれるか
本質的には日本での就活と似たようなものだと思いますが、海外ならではの問題や嗜好もあります。そしてこちらは外国人で英語力とビザという特殊な問題もあるのでローカルの人と比べるとどうしても不利になります。
ここまで書いてきて最も重要なのはとにかく早く就活をはじめることです。ローカルよりも不利ならば早く準備や練習を始ることで対抗できるようにしましょう。
最後に個人的な意見ですが、とにかく数多く応募しまくるのは非効率的です。一般的なこと(この大学を卒業した、成績がいい、仕事に役立つ単位をとった、資格がある、など)だけを連ねても採用側の心には刺さらないというか、不安を解消するまでには至りません。その結果なんのレスポンスも得られずにただ時間のムダになってしまうという感じです。
僕の経験上では、求人にのっている仕事のrequirementsを1つ1つ満たしていることを具体的な例とともに提示すれば電話面接やポートフォリオを見せてくれ、といった反応がもらえるようになりました。
あとは採用者の不安を極力減らしてこちらを信用してもらえるように最大限アピールしていけばチャンスが増えてくるはずです。
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