デンマークにおける「学び」の素描 ①大切にされているバリュー(No.4)
1.授業の雰囲気とバリュー
2.デンマークの教育におけるバリュー
デンマークへ来て3週間を過ぎ、間もなく1ヶ月が近づこうとしている。
成人のための学校・フォルケホイスコーレの生活リズムに身体が段々馴染んできた。
言語や文化のちがいにも、少しずつだが慣れてきた。
1ヶ月が経とうとしている今、一番の目的である、”デンマークの教育”の核心を探っていきたい。
精神面・運用面・制度面の三つの観点から、”デンマークの教育”の実際の姿を掴み、その上で、じぶんなりに、全体像を捉えてみたい。
そのためにも、心に残ったことや、「核心に近いのでは?」と感じた場面を、粗くだが書いてみよう、と思う。
今回は、私が現在いるフォルケホイスコーレの一つの授業の中の、印象的なことを記したい。
毎週木曜日に受けている”Uncovering Denmark”という授業である。
(授業の概略は、拙ブログNo.3参照)
https://note.com/taktaktak_rooooo/n/n4e5f4333d1ae?fbclid=IwAR26_szRGsZehqMz_QXI0XPSDGR-P0fIi0xGZCf4j8jRcji3cWtZutHPgD4
1.授業の雰囲気とバリュー
毎回授業の初めに、生徒・教師間でバリューの共有を行う。
共同で授業を創っていく上で、学びをより促進させると考えられるバリューについてである。
以下の写真の左上に書いてあるのが、それだ。
(本日1/30の授業から。テーマは、”デンマークにおける教育”)
四つのバリューが掲げられている。
(1)Make mistake(間違いを起こすこと)
(2)Trust, Honest(信頼、正直)
(3)Host yourself(あなた自身の"主"であること)
(4)No stupid questions(ばかげた質問は無い)
(1)Make mistake(間違いを起こすこと)
最重要のバリューであるとされている。
”間違うこと”が学びの過程において最も欠かせない要素である、ということのようだ。
また、何かに「挑戦しよう」としたときには、間違いが付いて来るということのようだ。
「間違いを愛する精神」が、学びや挑戦の促進力になる、と僕は捉えた。
(2)Trust, Honest(信頼、正直)
Trust(信頼)は、生徒間、そして生徒対教師間において非常に重んじられている要素である、と感じる。
自分自身を尊重し、相手を尊重することにより芽生える相互信頼、垣根の無い信頼感だろうか。
Honest(正直)であることの学びへの良い影響についても、強調されている。
(3)Host yourself(あなた自身の"主"であること)
成人の学校・フォルケホイスコーレの学校生活の柱となっているようにも思えるバリューだが、授業でも同様に大切とされる。
例えば、一人一人、目を閉じたければ閉じるし、身体を伸ばしたくなったら伸ばすし、トイレに行きたければ行くし・・・ということが挙げられる。
言動の主導権は、あなた自身が握っている、という感覚かもしれない。
言われれば当たり前なのだが、日常の中で意外と忘れがちなことでもあると感じる。
”授業”というものへのイメージに照らし合わせてみると、どう感じるだろう。
(4)No stupid questions(ばかげた質問は無い)
どんな質問にも価値がある、ということのようだ。
一つの質問が、他の人の好奇心に訴えかける。
異なるパースペクティヴをもつことを促す。
また、自分の中に浮かんだ質問が、他の人の中にも浮かんでいるかもしれない。代弁にもなる。
「質問」の価値は、自分にとってはもとより、他の人へ与えるインパクトを考えてみても、大きなものがありそうだ。
2.デンマークの教育におけるバリュー
以下に書くことは、上述の授業の中で触れられたことである。
このホワイトボードの様子は、本日の授業の最後の様子である。
(デンマークの教育に関して、重要なことが詰まっていると思うので、今後も度々触れたい。)
今回は、その中でも、デンマークの教育の中で大切にされているバリューについて。緑のペンを使って下の方に書いているのが、それだ。3つ、ある。
(1)problem solving(問題を解決する力)
memolization(暗記する力)に対比して、強調されている。
デンマークの教育におけるバリューの中でも、特段、大切にされているようだ。
世界を見渡しても、教育や学びにおいて、memolization(暗記)に価値の力点が置かれている例はあるだろう。
だが、デンマークでは、比較的に、家庭教育や幼稚園から始まり、専門的な教育等含めて、大学に至るまで
一貫して、problem solving(問題を解決する力)に価値の力点が置かれているようである。
(2)Trust(信頼)
Discipline(規律)に対比して、強調されている。
同様にデンマークの教育の中で一貫して、価値の力点が置かれているようだ。
学びは、生徒と教師間、あるいは人間と人間の間のTrust(信頼)を基にして初めて、促進されるのだろうか。
そして、この"信頼"のバリューには、実は「equal=対等・平等」というバリューが含まれている。
教師であろうと、生徒であろうと、学びを創っていく上では誰しもが全く、対等かつ平等である、という感覚。
ここでの"信頼"のバリューは、"対等・平等"の原則の上に初めて成り立っている、と言えそうだ。
(3)Passion+Fun(情熱+楽しさ)
Control(支配)に対比して、強調されている。
このバリューも、デンマークの教育の中で一貫して力点が置かれている、ということのようだ。
特に、”Fun”であることは、私が在籍するフォルケホイスコーレでは要とも言えるくらい、価値をもっている。
学校で共に学ぶ仲間の様子を見ていても、"Fun"な感覚や体験がもたらす個人や集団への影響力は、計り知れないものがある、と感じている。
"Fun"であることがデンマークの教育の中で価値の力点が置かれていることの背景には、デンマークの方々の、歴史の中で培われてきた知恵と哲学が隠されている予感がする。
それくらい、"Fun"であることがつよく重んじられている空気感を、(現時点では)デンマーク教育の中に感じとっている。
以上、今回は、一つの授業の中で得た視点をもとに、仮説的な内容も含めてざっと書いてみた。
こうした素描を重ねて、少しずつ、”デンマークの教育”の全体を捉えていければ、と思う。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?