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デンマークー自然のたより (No.2)

「共生の中の学び」

1.共生による学校
2. 学び方ー3つのワードー


1.共生による学校
 
フォルケホイスコーレは、全寮制の学校である。
3ヶ月もしくは6ヶ月の間、約120名の生徒(Krogerup ホイスコーレについて)が在籍をし、寝食を共にしている。
興味深いことに、全員ではないが教師も校舎のすぐ傍に居を構えている。
 
まさしく、「共生」がその特徴である。

このことは、フォルケホイスコーレの起源と深く関係している。

19世紀半ばに、グルントヴィという牧師が提唱した学校、フォルケホイスコーレは、
教育的環境から疎外されがちであった農民たちを包括するようにして、扉を開くようになっていった。

教師も生徒も長い時間を共にし、語り合い、お互いから学び合うことで、生徒自身の中にすでに存在する知恵に光をあてていった。
(今でも「enlightenment(啓発)」という言葉が使われている。)

生徒同士、教師も含めて、暮らしまで共にすることで初めて、深い啓発が起こる、と考えられていると言えるかもしれない。

2週間弱を過ごしてみて、お互いに「共生」をすることが、相手のことを知るとともに、おのずと「自分自身」を見つめることとなることを感じている。
「相手と自分」との共生と対話を通して、毎日学んでいるような感覚である。学びの中を生きているかのようだ。

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(約120名が共にする生徒の宿舎に近接する教師の部屋)


2.学び方ー3つのワードー

共生を基盤とした「学び方」も、非常に個性的で、魅力的である。

3つのワードがキーとなっているように感じる。

ちょっと想像してから、見てほしい。



①Cozy(居心地の良さ)
②Co-create(共にー創る)

③Doing(行動する)



①Cozy(居心地の良さ)

ぼくが一番文化的ショックを受けた部分でもある。こんな学び方があったか!と、目から鱗がら落ちた部分でもある。

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(これは、政治とユートピアについて学んでいる授業の様子である。この授業に沿って、3つのキーワードを説明したい。)

教室には、すでにマットが用意されている。
あなたにとって、一番Cozy(居心地の良い)な状態で受けて(居て)ほしい、という配慮である。実際に、立っている生徒がいた場合など、「Comforteble?」という投げかけが教師からあった。
また、全ての授業で、コーヒーやティーは欠かせない。

「ユートピアな社会を阻害している要因は?」という問いかけに、ブレインストーミングで考える場面があった。

居心地よくその場にいながら、生徒からはアイディアが半ばエンドレスに生まれてくる。

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(小1時間くらいの間で、ホワイトボードはアイディアで埋め尽くされていく。)

Cozyであることと、学びの深まりには、相関性がありそうだ。




②Co-create(共にー創る)


次に来るのは、Co-createだろうか。

生活を含めた学びを、「共に創って」いくという精神が共有されている。

上述の授業で、「ユートピアを阻害している要因」を挙げ合っていったのちに、
「ユートピアを実現した社会とは、どんな状態であるか?」を続けてブレインストーミングで出し合っていった。

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(こちらも、見る間にアイディアが出されていく。「No money」「No loneliness」「Personal freedom」等々、多種多様なアイディアが生徒から出された。)

さらに、出されたアイディアの中から、本当に必要だと思うものを各自5つずつ選んだ。

多く投票されたアイディア5、6個程を、実際に学校で取り組む段取りに入る。プロジェクト化される。

自分がどのプロジェクトに入りたいかを選び、グループ毎の学習と実行に移る。

この授業を通して、個人的な経験などから生まれ出てくるアイディアが他の生徒を刺激し(かつ勇気付け)、異なる発想やパースペクティヴをもつことが自然と促されていることに気付いた。

共に、学びを創っていく感覚が残った。



③Doing(行動する)

そして、学んだことを学校生活の中で、絶えず、具現化してゆく。

上のプロジェクトの中で、僕は「Diversity is the norm(多様性が生活の規範となる)」というグループに入った。

プロジェクトとして、

(1)ポスターを作り、好きな時に自分自身のことについて自由に書き込 
   み、 Diversity(多様性)が校内にあることを可視化させる。
(2)Diversity(多様性)にまつわるお題カードを作り、夕食のテーブルに
   設置、お題に基づいてトークをする。

ということを行った。

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(プロジェクト始動後、数日後には廊下に貼られた(1)のポスター。参加
 型であることに、意義がありそうだ。)


このように、授業が、毎日の生活の中の行動へ移されていく。


そして、自発的に起こす行動を通して、これまでの経験や文化などにより、自分自身を縛っていた振る舞いや考え方の枠組みがあることに気付かされたりもする。


校内でDoingが多発して起きていく教師のコーディネートの上手さとさりげなさもさることながら、

生徒の方々の強かで、素早い行動力が発揮されていく様子を目の当たりにしては、驚く。

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