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デンマークにおける学びの素描②ー高校訪問(前編)(No.6)

今回、こちらにいる留学生の仲間と共に、高校に訪問することが叶いました。
その様子を、素描してみます。

現地に着いてから見聞き感じた様子を、時系列に沿って描きます。

仲間3人と共に訪問を行った。Espergærde Gymnasiumという学校である。
訪れることになった経緯は、今いるフォルケホイスコーレ(成人のための学校)のTeacherが教え子であった先生が現地にいる、ということから仲間の一人がその人と繋がりを持ったことがきっかけだ。

その先生が「比較宗教学」を教えているため、日本の宗教について生徒たちに話をして欲しい、ということだった。同時に、デンマークの高校や教育について、質問をして良い、ということだった。
ちなみにその高校は、留学生等も多いという特徴がある。


1.学校到着〜授業まで
 1)開放的な環境
 2)高校の仕組み
2.授業に参加をして


1.学校到着〜授業まで

1)開放的な環境

学校に到着をすると、その先生に頼まれてか、生徒さん3名が待っていてくれた。笑顔で明るく歓待してくれた。皆しっかりした様子である。
生徒さん達が、そのまま筆者らを校内をガイドしてくれた。

足を踏み入れて「あぁ」と心に感じたのは、「開放性」である。
入り口を通ると、大きなホールがまずある。そして、窓が大きく多い。
設計からして、「外」や「自然」との隔たりがなく、繋がりを感じられる工夫が施してあるように感じる。
(表題の写真が、そのホールの様子である。)

その大きなホールに、机椅子が点々と置いてあって、生徒さん達が集い、パソコンを広げて「話しながら」課題に取り組んだりしていた。日本の大学と似ているようで、それとも違う。

そして、そのホールだけではなく、いわゆる生徒同士が集って共同して何かを行ういわば「オープンスペース」が、学校の至るところに見受けられた。

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こうした環境は、デンマークの教育の特徴を如実に表わしているように思われる。

デンマークの授業は、《(話しながら)共同で調べて → 発表》 
という形がベースになっていることが比較的多い、という特徴である。
いわゆる、《Problem solving × Presentation》型の授業設計である。
特に、高校段階の年齢では、その比重が高そうである。
(授業のあり方については、幾つかの学校を訪れながら更なるリサーチが必要である。)

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2)高校の仕組み

高校の仕組みについて、ガイドしてくれた一人の生徒さんから聞き取りを行った。

高校入学に際しては、日本で行われるような「入試試験」はデンマークには無い。そのため、その生徒さんによると、高校に入ること自体は難しいことでは無い、ということであった。
自分の学びたい学習内容の興味関心に基づいて、高校を選択することが多いようだ。
(この点については、リサーチを進めたい。高校毎に、学習内容や、特色の上でどれくらいの違いがあり、生徒が進路の決定をどう行うのか。)

また、デンマークには「高校進学」という選択肢のもう一方で、「職業学校」という選択肢がある。すでに将来的に「やりたいこと」がある生徒に対して、高校段階から専門的な学びと技術の習得を深めていってもらうためのコースである。

ちなみに、高校に入ってからの学習が大変なようだ。
というのも、高校段階における成績が、そのまま大学進学等を行う場合の点数となるようだ。なので、高校における学びには一定のプレッシャーがあるかもしれない。

また、高校在学中には多数の試験がある。これが、授業を通して学んだことから更に調べ、考えをまとめていく「記述式」によるものが殆どである、ということなのだ。大きな試験では、数十枚に及ぶ分量を課せられることもあるようだ。所感では、大学の論文に近いのではないか、という感じをもつ。それを、高校段階に落とし込み、生徒と教師の距離も近い環境の中でより多く取り組める環境をつくる。

そして、そうした学びのプロセスを(粘り強くも)通すことで、16歳という大人の入り口とも言える段階から、表現力や思考力、広くは人生を切り開き社会を担っていくための主体性や、他者の考えにも十分気を配るような視野をもった対話力を鍛えている、ということか。


他には、もし自分自身の成績を更新したい時などは、高校3年生段階の受け直し(正式名称はまだ不明)、という選択がとれるようである。
これは、自分が在籍をした高校とは独立した機関でおこなう、ということのようだ。同年齢だけではなく、高校や専門教育を卒業後働いていた大人が、新たな進路を切り開くために大学進学を志してその高校3年生段階を行うことも、選択肢としてあるようだ。

このことが「普通」となるのも、デンマークには日本に強く見受けられる「年齢文化」が薄い。
訪問した高校でさえも、ある程度多様な年齢の生徒さんが通ってきているということだった。
大学等も、関心に基づいて「一度働いてから入る」ことなどもあるとなると、必然的に、周りには多様な年齢の人がいることともなる。


ちなみに高校3年生で卒業も決まったというその生徒さんは、翌年の動向について、ギャップイヤーを利用してワーホリを取得、日本に1年間暮らす、ということだった。

日本の教育制度との違いであるが、デンマークでは高校を卒業後に1年から2年間「ギャップイヤーをとる」ということが、有力な選択肢の1つになっている。
その間に、ヨーロッパやアジア、アフリカ、どこでも自分自身の興味が向く海外へ中長期のスパンで旅行や働きに行ったり、現在筆者が籍を置くフォルケホイスコーレ(成人のための学校)に半年間通ったりする。

この「ギャップイヤー」の通念上の意義は、個人に対しても、社会に対しても、一定以上の大きなものがあるように感じる。

海外への長期渡航を筆者自身も大学時代に(休学をして)行ったことがあるが、それを高校卒業後すぐに行えることの価値は大きいだろう。
というのも、高校の段階で探究型による学びを深めて視野をある程度まで広げた段階ののちに、直接、外の(生の)現実世界を浴びる。視野が更に広がるのは勿論、それは、学びを通じて得た仮説や認識を、結晶化するプロセスになるのではないか。

そして、早期に、人生と社会(世界)に対する主体性が育まれる。



ここまでデンマークの高校について制度面から描いてみたが、筆者なりに感じるポイントを最後にまとめたい。

・「やり直し」に開かれている(→高校3年生段階のやり直し等)
・私やあなたが「何をやりたいのか」にベースを置く(→ギャップイヤーの
 通念上の存在や、高校の授業の取り方等)
・探究型の学習がベースにある(→高校の試験等)
・学びと人生の連結感(→「働いた後、大学に行く」という選択等)

(後編へ続く)

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