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「伝わる」という過信

遠隔授業期間が終わって

5月末まで続いた遠隔授業の期間が終わって,分散登校や時差登校を経て,だんだん「今まで通り」の学校生活に戻りつつあります。授業時間が通常より短いので効率的に勧めなければということでICTの活用もされてはいるものの,遠隔授業の揺り返しなのか「やっぱり対面の授業(で講義式)がいいねえ」という声も以前より多く耳にするようになりました。

私たちの話って伝わっているのか?

先日,プレゼンテーションについて改めて考える機会がありました。そこで気づいたのが,教員の話って本当に伝わっているのだろうかということです。自分が授業で扱っていることは生徒に伝わっているのでしょうか? 何を今更ですが,「伝わる」のだという「過信」がないかなと思ったのです。

話せば伝わる

そのきっかけは人数の少ない場でのプレゼンテーションについての意見交換でした。少ない人数であればこそ,相手の反応を見ながら話を変えつつアドリブで話していった方がいいのではないか。大きな会場ならともかく,小さな場であれば自分をしっかり見て聞いてもらうためにもスライドなどは使わない方がいいのではないか。そんな意見がありました。

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どれだけ覚えているのか

たしかに少人数相手でごく短いスピーチ程度であればスライド用意することなんてまあまずないし,簡単な内容だったら伝わるし覚えているんじゃないかな。でも,ある程度の長さになってくると,伝わるか伝わらないかは人数の問題ではないし,ただ話しただけでちゃんと伝わって記憶にも残るのか,どうなんでしょうか。

人数が少ないとみんなちゃんと自分の話を聞いているように思うし(実際,そのように見えるし),話せば伝わって,それを覚えてくれているんじゃなかろうかと思うのはもっともです。

でも一対一で話していたって「本当に聞いてた?」と思う経験は皆さんしてますよね。よほど相手や内容に関心があればしっかり聞いていますが,そうでもなければそこにいる人数に関わらず,たいして聞いてないし覚えてないのでは? あら,私だけなのかな。

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伝える方法

じゃあどんな時でもスライド作ったりハンドアウト作らなきゃいけないのかよって話ではありません。人数がどうだろうとなんだろうと,もっと「自分の話は伝わらないんだ」ということを意識しないといけないということです。

どう話したら上手く伝わるのか,使う言葉,話す順番を意識するのは当たり前だろうし,黒板でもホワイトボードでもメモ用紙でも書くことができるものが使えるなら使った方がいいだろうし,実際に何かモノを見せられるのならばあった方がいいだろうし,もちろんスライドなんかが使えるのだったら使うのがいいでしょう。

自分の話は伝わりにくいはずだから,よりよく伝わる方法を考えたいよねということです。

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ICTあればこそ

遠隔授業期間,説明をしていて不安になりました。果たして画面の向こうの生徒に伝わっているのだろうかと。そしてもちろんスライドを使って説明をしたし,そのスライドを使ってデジタルテキストを使ったし,説明を動画で撮影していつでも見られるようにもしました。

扱った内容によって見事にテキストのダウンロード数や動画の視聴数は異なりました。自分の伝え方を振り返るのに素晴らしい素材となりました。そして,話すだけじゃ本当に伝わらないよな,と思いました。

もしICTが使えなかったら,私は何度も同じ説明を繰り返さないといけなかったかもしれないし,何度も同じ板書をしなければいけなかったかもしれない。生徒によってテキストで確認したい,動画で確認したい,先生から直接確認したい,と要求はバラバラです。伝えるための手段を複数用意することで,本当に先生に確認したいという生徒に対応することができます。先生が一生懸命説明してくれるのはありがたいんだけど,それよりはテキストでじっくり確認したいんだよなあ,とか,動画で何回も気になるところを聞きたいんだよね,という生徒にとってもありがたいことでしょう。

個別最適化

ICTの活用というと,「個別最適化」がよく取り上げられます。例えば,AIが最適な問題を選んでその生徒に合った出題をしてくれる,これも素晴らしいことです。ただ個別最適化はそれだけではありません。教員側が伝わる方法を複数提示できること,それを生徒が自由に選べるようになることも個別最適化です。

生徒が聞いていてくれるから伝わるのだと過信せずに伝わる方法を探し続けたいと思うのでした。

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YouTubeのラジオで喋ります

で,ここからはおまけ。まだ公開されていませんが,YouTubeのラジオ番組?で喋ることになりました。今まではスライドがあって喋っていたのでよかったんですが,何もなしで「トーク」だけで伝えるって本当に難しいですね。伝わるなんて本当に過信しちゃいかんなと思います。

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