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日本とアメリカのwebデザインの違いについて

日本とアメリカのwebデザインの違いについてAIでデータ解析を行い分析したブログ記事が巷ではバズっているようです。そこで私自身も前々から思っていた「なんで日本のウェブサイトはこんなにごちゃごちゃしてるんだ」ということについて改めて考えてみたいと思います。

日米のWeb構造をデータ解析

まずは英語の元記事はこちら。結構奥が深く、どうやってデータを集めたかまで詳しく解説しているので、IT関連の人にも参考になる記事だと思います。

次にこの記事に対して反応した日本人のTwitter投稿がこちら

原文とこれらTwitterの反応も一通り読んだ上で私の感じたことや最近思ったたことをまとめてみたいと思います。

最適な情報量とは?

Simple is the Best

まず初めにwebに限ったことではないですが、「シンプルが分かりやすい」というのは人種や国に関係なく万国共通だと思います。しかし情報を減らせば減らすほど良いというのではなく、求められている情報を最も効率よく提供するということがUI/UXを含むデザインシンキングでは重要です。

なのでそこを無視してなんでも減らせば良い、というのは乱暴な考え方で作り手の傲慢です。またどのような要求にも応えたいという欲求から、ありとあらゆる情報を提供する、というのも結局選択を相手に委ねているので違うと思います。

何を届けたいかより何を求められているのかを、常に考えデザインの優先順位をつけるようにしていれば、必然的に届けたいことも届くというのが私の信条です。

Impressionを稼ぐ日本、Conversionを狙うアメリカ

私はアメリカに住んでいて年に数回日本へ帰国するという生活をしているため、両方の社会を俯瞰的に比べてみることがしばしばあります。日本へ帰国した時にいつも最初に感じるのは、web、テレビ、雑誌とありとあらゆるメディアに溢れかえっている情報の量です。数日経てば何をピックアップして何を流す、という感覚がついてくるのですぐに慣れるのですが、そもそもフィルタリングする情報が多すぎるなと感じ、最初の数日はテレビ付けてるとすぐに疲れてしまいます。

アメリカでも同じようにフィルタリングは日々行なっているのでしょうが、媒体に載っている情報量がそこまで多くないのでサッと流しやすいのではないかなと思います。

先のTwitterでも書かれている方がいましたが、チラシやプレゼン資料など、とにかく隙間なく情報が入っているのが日本スタイル。その内容は目を凝らして読んでいかないとフィルタリングできませんが、タイトルやバナー画像をパッとみて関係ないと分かるのがアメリカスタイル。デジタルマーケティング的に表現すると、キーワードを詰め込みまくってimpressionを稼ごうとする日本と、ターゲットにとことん絞ってconversionを稼ごうとするアメリカ、という感じでしょうか。

本当のオモテナシとは?

日本では相手を思いやる心や道徳的教育が他の国と比べても非常に高く、そのことは私も日本人として誇らしく感じています。しかし時にその言葉を履き違えて正当化する意見を目にするようなことが、近年情報化社会が進むにつれて増えてきたようにも感じています。

一見相手を思いやるように必要だと思って取捨選択することを放棄することは、実際は相手に検索・除去・選択を迫ることに繋がっており、果たしてこれが本当に思いやりと言えるのでしょうか?

例えば一流のフレンチレストランや某高級ホテルチェーンでは、事前にお客様のことを深く知る努力を行い、それぞれに最適なオモテナシを行うことは有名です。そのためには様々な要求に対応できる引き出しは用意しておかなければなりませんが、それを全部お客さんに提示して選んでもらうということは決して行いません。

Webのデザインも楽天とAmazonの顧客体験は大きく異なります。情報量はどちらも多いという印象があるかもしれませんが、サイトへ訪れた際にどちらの方が目的の商品へ辿り着きやすいかどうか比べれば、そこにwebにおけるオモテナシのヒントがあるかもしれません。

日本のIT成熟度

ここまではwebに限らず情報を相手にどう提示するかという点に焦点を当てて日米の違いを考えてみましたが、ここからはウェブサイトに絞ってなぜここまで違いが顕著にあるのかということについて考えてみたいと思います。

まずデザインに差が生まれている大きな理由の一つとして挙げられるのは、日本社会のIT成熟度が他国と比べて遅れている、というところに尽きると思います。

諸刃の剣

前述の通り日本人は相手の気持ちを思いやる気持ちは、海外旅行で訪れた外国人にも度々賞賛されるほど素晴らしいものだと思います。多少大変なことでも頑張ってしまうし、やればできるという根性精神も日本の教育を受けていると自然と身についているのかもしれません。

ただそのため機械やパソコンを使った効率化の波に社会が乗り切れなかったという側面もないかと考えることがあります。40年以上前の話ですが、国鉄が民営化されJRに切り替わる時、自動改札が導入されることに大きな社会的反発があり、連日新聞やニュースを賑わしていました。まだ幼かった私は便利になるのになんで反対しているんだろう、と思ったことをよく覚えています。パソコンが日本で各家庭に浸透しなかった理由を考る時に、いつもこの出来事が脳裏をよぎります。

IT飛び級

しかしスマホの登場によってその境界が一気に崩壊しました。パソコンを一度も使ったことのない日本人がいきなりスマホを使うようになったので、言ってみればIT飛び級したような状況が今の日本社会のITリテラシーの低さにつながっていると考えています。

原文にも書かれていましたが、欧米ではPC->スマホと社会全体として徐々に成熟していったのに対し、日本ではfax->スマホと移行した人も多々いるので、いきなりトレンドを理解しろというのは無理な話です。

現状維持 or 追いつけ追い越せ

加えて社会的に大きな変化を好まない保守的な考えが根強いため、特に大企業ではなかなか大きなシフトチェンジが起きにくい、というのが現状だと思います。とは言えスマホもデザインも世界の人々も進化しているので、現状で凌げると思っている人はどんどん取り残されちゃうし、逆に意識を高く持っている個人や企業はまだまだ確実に追いつけると思います。

強みを活かして復活へ

日本のアニメや無印良品が世界的に評価されていることからも分かるように、純粋なデザインセンスという観点からは今でも日本は世界トップクラスの実力があると信じています。ニューヨークの近代美術館のギフトショップを訪れると、展示されている多数の商品は日本のデザイナーが手がけたものです。絵文字は日本で生まれて、今や世界のemojiとしてどのスマホにも搭載されています。

残念ながら現時点に於けるwebデザインやUI/UXの研究は欧米がリードしているということは否めません。しかし日本も欧米に劣らないようなスピードやチャレンジ精神を持って様々なことに取り組んでいけば、元来持っているデザイン力や思いやりの深さを組み合わせることによってどこに負けない新たなwebトレンドを創出できると信じていますそして私も微力ながらその一端を担えるよう精進したいと思っています!


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