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湯を沸かすほどの熱い愛

監督:中野量太
公開年:2016年

 この映画の魅力は、何といっても演者の皆様のお芝居。いやー、素晴らしい。主演の宮沢りえさんをはじめ、オダギリジョーさん、杉咲花さん、駿河太郎さん、篠原ゆき子さん。本当に心掴まれるようなお芝居をされています。

あらすじ
 銭湯・幸の湯を営む幸野家。しかし、父が 1 年前にふらっと出奔し銭湯は休業状態。母・双葉は、持ち前の明るさと強さで、パートをしながら娘を育てていた。そんなある日突然、余命 2 ヶ月という宣告を受ける。その日から彼女は「絶対にやっておくべきこと」を決め、実行していく。

よかったところ

 特に杉咲花さん。当時、19歳という年齢で、「余命を宣告された母」と向き合うという役どころを見事に演じきっています。

「泣かないの。今日から約束。お母ちゃんの前では、絶対悲しい顔しないこと」

 劇中で妹にこう声をかけるシーンがありますが、最初からこの映画を見ていれば、わかりますが、「ああ、どんどん強くなっているんだな」と思わされます。

 そして、いよいよお母さんが亡くなるその時、懸命に涙をこらえて、笑顔を作るそのシーンは涙なしには見れません。

 また、宮沢りえさんが病室でうずくまって、涙を流すシーン。この2つのシーンを見るだけでもこの映画を見る価値はあります。

腑に落ちないところ

 宮沢りえさんが、いじめを受けている娘(杉咲花さん)に向かって「逃げちゃダメ。立ち向かわないと」というシーンがありますが、うーん、これはどうでしょう。これは1側面として正しいかもしれませんが、でも、悪いのはいじめている方なわけで。なんで被害者のほうが「~しなければならない」んでしょう。そして、そのいじめの解決方法も……うまくいったからよかったものの、ちょっとモヤモヤしますね。

 また、娘をある人に合わせるわけですが、その会わせ方も、急すぎます。結果、全部うまくいったからよかったものの、一歩間違えれば、家族が崩壊したまま、最期を迎える……なんてことにもなりそう。

 あと、病気を抱えていながら、車を運転するのは、うーん。ちょっと批判的に見てしまいます。

 余命いくばくもない中での、焦りと、母の愛を表現したかったんだと思うのですが、ちょっと色々やろうとして脚本が瓦解している感じと、演出のもったいなさを感じてしまいますね。お芝居がいいだけに。

総合的に

 この作品、数々の賞を受賞している作品ということもあって、見応えは十分。この作品で、私は杉咲花さんを知ったのですが、その後、彼女が出る作品は自然とみるようになりました。同世代の女優さんの中では、頭一つ抜けている感じがしますね。


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