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「『読書量』が多いと『収入』が高くなる」という話を疑って考える

「読書量が多い人は収入が高い」という話をよく耳にする。

僕個人としては、読書がそのまま収入に直結するなんて「そんなわけない」と思っているし、こういう話があると、読書をしている僕を「収入を高くしようとしている意識高いやつorイタイやつ」なんて目で見てくる人もいる(実際にそんな嫌味を言われた)ので、あまりこの話を好意的には思っていない。

もちろん、読書は色んな知識や考え方が身につくので、非常に有益なものであると思っている。しかし、それを「収入」に結びつけてしまうというのは少し安直だと思っている。
なので、あえてこの「読書量が多い人は収入が高い」という説を疑って検討してみたいと思う。


〜この話の根拠とは?〜

さて、では「読書量が多い人は収入が高い」という説はどこから出てきた話なのか。

「読書量と収入は正比例する」というデータは、実は国内外様々な形で調査されている。

以下、ネット上で検索した中でいくつか引用させていただくと…

年収455万円以下の世帯は、年間の書籍代が5,160円。一方で年収923万円以上の高収入世帯では、15,571円。
つまり高収入世帯では、年収が低い世帯の3倍も書籍を購入している。

2019年度 総務省統計局「家計調査」

富裕層の88%が1日30分以上ビジネス書などを読んでいましたが、年収300万円以下の人は、わずか2%でした。富裕層の86%が読書家で、富裕層の63%は、移動時間にオーディオブックやYouTubeを視聴しています。

アメリカ「Business Management degree」より(調査年度不明)

年収800万円以上の人は、月額書籍購入費平均が2,910円。
それに対して、
年収400万円~800万円の人は2,557円
400万円未満の人は1,914円。

2009年 日経新聞の調査より


などなど、検索するとあらゆる機関が読書と収入の関係について調査したデータが確認できる。
そして、いずれも「高収入の人ほど読書量が多い」という事を示しており、「読書量と収入には正の相関関係がある」というのは事実だと考えられる。


〜「相関関係がある」というワナ〜

さて、「読書量と収入には相関関係がある」というのは事実だという事は分かったが、だからと言って「読書量を増やせば収入が上がる」というのは早計であると思う。

いくつかネット上でこの読書と収入の関係を扱った記事があるが、どれもだいたい同じような因果関係で語られている(だいたいが「読書を増やす」→「知識が増える」→「仕事で知識を活用して成功しやすくなる」→「収入が増える」みたいな感じだ)。
しかしながら、根拠となるデータは「読書量と収入の間には正の相関関係がある」という事しか示していない事に注意して考えたい。

正の相関関係がある(または正比例する)というのは、あくまで片方の値が上昇すればもう片方の値も上昇するという関係、という事である。
いわば、因果関係や発生の順序は何も示されていないのである。

「読書量と収入の間には正の相関関係がある」というのは、
「高収入の人は読書をたくさんした。だから、収入が増えた。」というわけではないし
「読書のおかげで仕事が上手くいく」というわけでもないし、
「収入の低い人は読書をしなかった。だから、収入が増えなかった」というわけでもないし、
「読書をしていれば仕事はうまくいったはずだ」というわけでもない。
要するに、それら調査データは「収入は読書量に左右される」事を示したわけでも、「収入が高い"理由"が読書量である」事を示したわけでもない。「読書量→収入」という方向の因果関係を示しているわけではないのだ。


〜因果関係を逆転させても説明出来る〜

「読書量と収入には正の相関関係がある」というデータに対して「読書量を増やせば収入が上がる」と解説しているサイトは多い。

しかし、単に理由付けをするのであれば「読書量→収入」の方向だけではなく、「収入→読書量」という方向でも理由付けは出来る。つまり、「読書量と収入には正の相関関係がある」という事について「収入が高いから読書量が増える」という説明も可能だ。

例えば、
「収入の多い人は、余暇に使えるお金も多い。だから、本をたくさん買って読む事ができる」
「収入の少ない人は、余暇に使えるお金がない。だから、本を買って読む事が少ない」

こういう説明でも「読書量と収入の正の相関関係」が成り立つ理由にすることができる。

とどのつまり、いわゆる「ニワトリが先か卵か先か」と同じく、この正の相関関係がどちらを始まりとして発生しているかは、不明瞭なのだ。

〜結論〜

僕は決して「読書量を増やしても収入なんて増えない」と言いたいわけではない。
読書が実際に仕事に役に立ち、その人の収入が増える事もあるだろう。
ただ、ネット上には「本を読めば収入がアップする」という安直な結論に至る記事が多いなぁ、と感じているのだ。

言いたいことは、「読書が収入を上げるかどうかは本当のところよくわかんないよね」ということだ。


「読書」はやった方がいい。でも、それは決して収入をアップするためだけのものじゃない。
もし、「収入を上げるために読書をしている」という人がいるのなら、その読書は時間の無駄かもしれない。「読書」に対するスタンスを自分の中で今一度考えてみた方が良いと思う。


<本記事を書くにあたり参考にした書籍>

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