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奈良カレッジの挑戦

今回は、奈良県における国立大学を中心としたある試みについて述べます。

国立大学が分立した奈良県の不思議

 奈良県を除く全ての都道府県では、一部(北海道、東京都、愛知県、京都府、大阪府、福岡県)のみ統合の程度が緩和されましたが、基本的に官立(国立)高等教育機関は、一律に一つの総合大学に統合されました。ただ、奈良県だけは、奈良学芸大学(現在の奈良教育大学)と奈良女子大学が別に設立されています。

 当時男子中心だった高等教育機関の体制を転換する為に、女子大が必要との占領軍の意向があったとも言われていますが、広島の女子高等師範学校は、原爆による影響もありますが広島大学に統合されています。

 東京の女子高等師範学校がお茶の水女子大学に、奈良の女子高等師範学校が奈良女子大学になったのは、国立なのに女子大?の国立大学の謎の一つと言えます。

 奈良県には、当時は他には師範学校と青年師範学校の官立(国立)学校しかなかったので、この2校で奈良学芸大学となり学芸学部を置きます。まあ、ここまでは、当時の学芸学部の位置づけがミニ総合大学を目指したものだったので、それで奈良県の総合大学の代わりとの位置づけだったのでしょうが、その後昭和40年代にの学芸大学を教員養成に特化する政策が一律に行われた為に、総合大学のない奈良県でも、奈良学芸大学が奈良教育大学となり、総合大学のない女子大学と教育大学だけが分立するという、全国でも不思議な県となったのです。

 因みに、医学部については奈良県立医科大学が、文系学部については奈良県立大学がその役割を代行していて、公立も更に乱立するという、更に分かりにくい国公立大学の構成の県です。

国立大学法人奈良国立大学機構の成立

 5月に国会で国立大学法人法の一部改正案が可決成立して、奈良国立大学機構が来年度に設立され、統合ではなく、大学は別々のまま法人を一体化する事になりました。

 この統合だけを見ると、単なる生き残りを賭けた勝負にでた様にも見えますが、奈良カレッジ構想という奈良県の他の高等教育機関等を巻き込んだ統一した新しい形の総合大学を目指している事は注目される事です。

奈良カレッジとは

 奈良県には、他に国立高等教育機関として、奈良先端科学技術大学院大学という大学院のみの大学と、奈良工業高等専門学校があります。また、奈良国立博物館と奈良文化財研究所という研究機関もあります。

 奈良カレッジは、東京大学が独立大学院や研究所、博物館を持っているのと同じように、大学等の高等教育機関と研究所や博物館を奈良カレッジが持つという、今までの大学の概念を超えた、壮大な構想の始まりと考える事もできます。これに県立医科大学と県立大学も合流すれば、一大総合高等教育機関の集合体になります。

 分立したままで、総合大学的な研究教育を目指すという実験は、工業高等専門学校や研究機関も巻き込む点で、うまく成功すれば、今までの総合大学の概念を打ち破る、革命的な出来事になりそうです。

 70年遅れて構想された、新たな総合大学化の動きですが、この新たな挑戦の第一歩に踏み出した両大学に、先ずはエールを送ります。私達も今までの大学という視点にとらわれない、新しい高等教育機関を捉える視点を持って、この改革を注視していきたいと思います。



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