【いまさら】侍ジャパン初戦雑感



7月28日、東京五輪2020野球競技が開幕しました。初戦の日本対ドミニカ共和国は日本の劇的なサヨナラ勝ちで幕を閉じました。今回はそんな初戦をいまさらながら振り返り個人的な感想と意見を述べていこうと思います。

賛否両論を呼んだ山本から青柳への継投

SNS上や評論家の間でも議論が起きている7回の青柳へのスイッチ。尻上がりに調子を上げていた山本由伸を下げ、スイッチヒッターが並ぶ場面でクォータースロー(サイドとアンダーの中間)の青柳をマウンドへ。
結果は3安打2失点で先制点を奪われました。
この継投、賛否を呼んでいますが個人的にはどちらかといえば肯定的に見ています。

状況を整理しましょう。
6回終了時点で山本由伸の球数は88球、シーズンならまだまだ投げるのでしょうが、今回はいつもと違う12時開始の炎天下の中のデーゲーム。稲葉監督はその辺りを考慮して6回100球前後をメドに試合前から考えていたそうです。
相手打線は4番左打ちのフランシスコから始まり、5番右打ちのミーゼスを挟んで6番のメヒアから1番のボニファシオまで全員がスイッチヒッターという状況。

前者を踏まえると山本由伸を交代させるには7回はドンピシャのタイミングで予定通り。ここはしっかりと計画通りに組織的に決定したということで称賛に値すると思います。
後者ですが、スイッチヒッターの並ぶ場面での青柳への継投ですがこれもまた悪くはない決断だと思います。
ポイントは左打ちではなくスイッチヒッターという点。結局左ピッチャーを出したところで右で打席に入ればいいので左ピッチャーを使う旨味はあまりないのかなと。
一方で今年の青柳は左バッターに対しても被打率.209とむしろ.228の右バッターより抑えているという点も付け加えておきます。
もちろん、平良や山崎康晃を使うという選択肢もありましたし、今後はそういった選択肢を軸にしていくことになりそうですが、前の回まで投げた山本由伸と似たような速球と縦変化を軸にする右ピッチャーを連続させたくない、ゆえに青柳を使って目線変えをしたいという意図は十分に理解ができます。
あとは、後述しますが今大会の公式球は飛ばないように見えます。実際、大久保博元氏のYouTubeチャンネル「デーブ大久保チャンネル」では代表選手からボールが飛ばないという声があるということが言及されています。
その点でゴロを打たせ、長打の少ない青柳のピッチングはより武器になり得ると思います。
ただ、個人的に疑問に思ったのはキャッチャーを普段同じ阪神でバッテリーを組む梅野隆太郎に代えなかった点です。組み立てが大事になってくる投手なだけに最高のパートナーがいるにもかかわらず代えなかったのは疑問です。

坂本勇人バント、山田哲人本塁憤死

こちらも議論を呼んだ場面。
8回裏、1点ビハインドの場面で先頭の山田哲人が四球で出塁。マウンド上のジャンボディアスは巨型の体型でクイックも遅く盗塁も考えられましたが、稲葉監督は坂本に対して送りバントを選択しました。結果2球目できっちり送ってランナー2塁に。
そして吉田正尚がレフト前にあわや同点のヒットを打ちますが山田哲人は本塁でアウトになり、結局この回無得点に終えました。

坂本に対するバントは非常に難しい判断ですが自分も同じ選択をすると思います。
普段から自分も2塁に送るバントは嫌いなのですが、8回で1点差であるということ(初回や回が浅い場面では強行策で行って欲しい)、後ろがクリーンナップであること、なにより坂本のこの時点までの打撃内容を見たときにキャッチャーフライ、空振り三振、詰まり気味のライトフライとあまり期待できない状態だった点を考慮すれば当然ながらバントという選択肢もアリだと思います。
セイバーメトリクス的に言えば、状況別の得点期待値というより坂本の状態を加味した損益分岐点を重視したという感じでしょうか。(数値を出してとかそういう話ではなくあくまで感覚的な話です、こういう場面ではいちいち数値を出すのではなく、感覚的な瞬時な判断が必要だと思います。短期決戦は特に。)
ただ、理想は初球盗塁してバントで3塁に送れればさらに良かったでしょう。

それから山田哲人の本塁憤死ですが、これに関しては回さない方が良かったと思いますがここも難しい判断だったと思います。

ただ、この回で疑問に思ったのはクイックタイムや送球の質などドミニカ共和国の選手たちの情報が首脳陣の頭に入っていたのかということです。
もちろん大会前からデータは集めていると思いますし、一度は頭に入れているとは思いますがこの場面で生かせず、冷静な判断ができなかったのであれば反省する必要がありそうです。
試合前の練習がどれくらいのもので、どこまで情報が集まっているのかこちら側からは分からないので一概には言えませんが、そこはちょっと引っかかりました。情報量が少ないということは考えにくいので次戦から修正してもらえればそれでいいのですが…

甲斐拓也捕手の扱い

ここまではどちらかといえば肯定的な意見を述べてきましたが、甲斐を最後まで使い続けたことは疑問です。試合中、いくつか甲斐を代えるべきタイミングがあったように思います。

先程も述べましたが、青柳選手が登板する7回は梅野捕手が適任だと思いますし、その後に登板するだろう山崎康晃、栗林投手の2投手が落ちる系の球種を武器にしていることを考えるとブロッキングの良い梅野選手を起用するのがベストでしょう。
7回裏ツーアウト2塁3塁で甲斐選手に回った場面も代打を送っても良いタイミングでしたし、9回結果的にスクイズが決まり、同点になりましたがベンチには栗原がまだ残っていました。申告スクイズ気味になっていたのが引っかかります。
タイブレークに入ってキャッチャーがいなくなるのが怖いというのは分かりますが梅野がいますし、栗原も捕手起用を視野に入れた選出だと思われますので積極活用していく必要があると思います。
ブルペンキャッチャーの問題などもあるとは思いますが、もしその辺りの問題で交代ができなかったのであればはっきり言って選出ミスだと思います。登録人数が少ないので捕手3人は無理なのかもしれませんが人数の問題で柔軟な起用が出来なくなるのであれば3人体制の方が良かったまでありますし、それでもやはり最悪、栗原がいるということを考えれば思い切って交代すべきだったと思います。

心配な選手

あくまで初戦を戦っただけなので、緊張もあったでしょうし、1試合だけで不調、好調を判断するのは時期尚早な気がするのですが1人心配な選手がいます。

それは4番の鈴木誠也選手です。

打球に強さがないというか、全体的にゴロが多いのが心配です。シーズン中も打球が例年より上がっていないことが指摘されており、個人的には時間が解決してくれると思っていましたが、そのような状態は代表でも変わっていないようです。ライトフライがありましたが、それ以外はゴロアウトですし、強化試合でも二塁打を放ちましたが誠也らしくない打球だったように思います。
村上選手、浅村選手、6番に座る柳田選手など打順を上げても良さそうな選手がいることを考えれば場合によっては4番から外すことも視野に入れておいたほうが良い気がします。

西武ファンへ

Twitterを見ていると源田を使えという西武ファンの意見をよく目にします。果たしてそれが正しいのかと言う話ですが、
たしかに純粋な守備力は源田の方が坂本より上ではあると思います。それはUZRなどの各種指標を見ても、実際にプレーを見ていても正しいと思います。
しかし、坂本選手も守備が悪い選手というわけでもありませんし、何より長年侍ジャパンの正遊撃手を務め、サインプレーや連携プレーなど内野の中核を担ってきた選手です。加えて、打撃は言うまでもなく坂本選手の方が上です。そう考えると坂本選手をレギュラーとして扱うのは妥当と言えると思います。
それに源田をスタメンで使ってしまうと代走で使える選手がいなくなる点も考慮する必要がありそうです。
なぜ守備固めが源田なんだという意見に関しても周東、外崎という選択肢がない中で代走のできる内野手となると現状は源田しかいないのではないでしょうか。

ビッグでもスモールでもなく「スピード&パワー」で

巷では日本らしい野球である「スモールベースボール」でという論調があります。評論家の里崎さんがそのような記事を出したことで一気に議論が加熱した印象がありますが、私はビッグ、スモールの二項対立ではなくその両方を適材適所で使い分けるのがベストだと思います。バントが必要な場面はバント(例えばタイブレークの場面)、強行策で行くべきところは強行策でといった具合に。
先程、ボールが飛びにくいというような話をしましたがそれでもハマスタでの試合ということを考えればホームランも必要になってくるでしょう。
その点あまり心配はしていません。稲葉監督は「スピード&パワー」を標榜しており、それを体現できるメンバーが集まっていると思います。
ビッグかスモールかの両極端に陥るのではなく「スピード&パワー」で柔軟な野球をしてもらいたいです。

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