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危険な二人

老人ホームでの楽しいエピソードを綴っています。


マサルさんは一日中喋っている。
それは、見た夢の続きだったり、今までの経験だたり、
作り話だったり、何かにつけての怒りだったり、褒め言葉だったり。
それこそ思い付く、ありとあらゆる事柄なので、
いったい何を話しているのかさっぱり分からない。
兎に角、一日中休み無しに喋っている。

今日は目の前のミエさんに向かって何か一生懸命話をしている。
「まあはっきり言って、そんな事はどうでもいいんですよ。
そうですとも、いち早く連絡する必要があるんじゃないですか?
私はですね~、それはいいと思いますよ」
なんて、喋っている。

ミエさんは、はあ? あんた何言ってるの?
って顔で、きょとんと、そのじいちゃんを眺めている。

その様子が面白くて仕方ない。

ミエさんは、リクライニング車椅子に優雅に座っている。
暫くおとなしくマサルさんの話を聞いていたミエさんだったが、
突然、靴を放り投げ、靴下を脱ぎ捨て、
喋ってるマサルさんに、足裏を「はい、見て!」というように
ド~ンと勢いよく音を立てて片足をテーブルの上に乗せたのだ。

別にマサルさんが気に入らない訳じゃ無い。
これはいつものミエさんの癖で、たまたまマサルさんが前に座っていただけだ。

なっ、何をするんだ? 今、それをしなくても・・・

これはまずいぞ。
喋ってるマサルさんは、怒りだしたら怒りが止まらない。
それに怒って喋っている時は恐ろしく声が大きくなるので、
他の方への影響を考えるとちょっと困るのである。

ハラハラしているのは職員だけでした。

マサルさんは怒るどころか
「はあ、はあ、いつまたこんな事が起こるかですな~
はあ、そう言う訳でして、なるほどなるほど」
などと言って何故か一人で何かに納得していた。

今日は機嫌が良いらしい。


いつもこんな感じでありますように。


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