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「ブロックが間に合う」ことを知らない件について

知り合いのこんなツイートから展開しました。

遅れても、慌てずに「手をきちんと出す」ことで結構有効なブロックができるということですよね。 多くの選手はそれを知らなくて「遅れたと思って、慌ててしまい、できることをしなかったり、余計なことをやったりして、有効なブロックにならない」わけです。 つまり「間に合うことを知らない」選手がほとんどなんだと思います。そして、指導者も…

あらゆるカテゴリーで、実際「リードでは間に合わない」ことは相当あるけど、「どれくらい間に合うものか」知らないで、「コミットするしかない」と思い込んでいる部分が大きいと感じています。 「今のだったら十分リードで間に合うでしょ?」と思うようなケースで、先に動いてしまったり、諦めたり。

去年のアジア選手権も「間に合わなくてもいいからリードで行ってみる」みたいな話があったと思うのですが、私の見た限りでは「リードで行ってみたけど間に合わなかった」という場面がありませんでした。 「間に合わなくてもいいから行ってみる」をやらない限り「どのくらい間に合うか」は分かりませんね。(チームが考えていたのが「遅れてもいいからサイドのトスを追いかけて行ってみる」ではなくて、「クイックに遅れてもいいから」だったりして、狙いは違ったのかもしれませんが)

アジア選手権 第2戦 バーレーン戦会見コメント(福山選手)
福山:この大会にあたって最初に合流して、練習が始まった時にブランコーチから「リードブロックをしっかりしよう」という話がありました。その前までの合宿では、クイックが多い時はコミットを使ったり、クイックが少なくて両サイドがパイプを使っているからリードブロックに切り替えようとか、その時々の状況に応じて自己判断するスタンスでした。今回はリードブロックに特化し、その結果、多少クイックを抜かれるのは仕方ないというお話をされて、みんな意識してリードブロックに取り組んでいたと思います。

それに対して、当時こんなツイートをしています(前後のツイートをご覧ください)。「間に合わなくてもいいからやってみる」ということ自体がとても難しいことなのかもしれませんね。

そして、テレビの実況・解説も「攻撃が決まったら、全て、ブロックが遅れたと思ってしまう」という現状もありますが、

つまり、「実況・解説の人たちはろくにプレーを見ていない」ということではなくて、実際にプレーしている選手達(この時は男子高校生)でも、そう思い込んでしまうんですね。実際には、体の位置とタイミングは十分間に合っていたのに、「腕が行き過ぎていた」ために有効なブロックができなかったにもかかわらずです。

タイミング的には間に合っていてもそれが分からないのでは、「行ってみたら間に合う」なんてことはつかみようがないですね。

全日本男子の取り組みについて批判的なことを書きましたが、アジア選手権の後半のオーストラリア戦で素晴らしいブロックがありました。

個人的には「戦術」について、明らかに間違っていると歴史が証明してるようなことはあり、その方向に行くことが間違いだとは分かるけど、細部について、何が有効か、どんな意図でその戦術を選択しているのか、私には分かりません。 もちろん、ブロックはリードだけでいいとかは決して考えていません。

しかし、「間に合うことを知らない」状態で戦術を考えるのは、自らチャンスを放棄することになり、とてももったいないし、世界で勝負にならないのは当然だと思います。

前の方で書いた「遅れたと思って、慌てて余計なことをやったりして、有効なブロックにならない」というのは、こちらの記事:ぬのTのバレーボール技術論 動作から見た「ブロックシステム構築」への道 3「スイングブロック」の 3ページ目に「『流れる』について」で書いています。 3つのうちの初めの2つを「余計なこと」と考えています。

ブロックで「流れる」と言われるものには実は3つあります。
1.腕を斜めにしてスパイクコースに持って行こうとする
2.体幹を斜めにするなどして崩す
3.重心の空中移動

1は推奨する考えもあるようですが、確実にワンタッチを取れる場合以外すべきではないと思います。 2はダメ絶対だけど非常に多いですね。

3の「重心の空中移動」は、「間に合う」ことに大きく貢献する、スイングブロックの最大と言ってもいいメリットだと考えていますが、これを嫌う指導者も多いような気がします。

慌ててサイドステップになり、かえって移動速度が遅くなり、スイングも利用できない というのも多いし、ステップがバタついて遅れることも多いですね。私が指導していて一番言うのは「遅れるほとんどの原因は慌てるから」ということじゃないかと思います。

だから「慌ててもいいから、とにかくスイングして跳んでみよう、間に合うかどうか判断するのはずっと先のことだ」と言っています。 なんでもいいから「できることをやる」方が、そのうち慌てなくなるという作戦です。

リードブロックに取り組もうというとき、まずは、指導者も含めて「どのくらい間に合うのか、自分たちは知らない」という前提に立つことが重要だと思います。スイングブロックの上達に伴って「ビックリするほど間に合う」ことが分かっていきますし、「反応にかかる時間」は事前の作戦で選択肢を絞ることやゲーム中の慣れによっても変わっていきます。

繰り返しますが、「どれくらい間に合うか」は、それを突き詰めた人にしかわからない 。「間に合わないと思った状況でも全力で空中移動して奇麗な空中姿勢を作ってみる」ということを30回くらいやってみて、1度も「いい感じ」に出会えなかったら、そこで初めて「これは間に合わない状況だ」と認識してもいい。

ブロックの場合「やってみる」というのはそのレベルを求めたいです。
そこまでやったことないのに「間に合わない」とか決めつけないでほしいと思っています。

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