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第4話 「ドメイン」って新たなギャル語ですか?

ITの革命児・Tさんと出会い、無料相談を受けた起業未満家・西村。ところが、必要最低限の知識がなく会話が成立しないというアホな事態に。WEB事業に早くも暗雲が垂れ込めるのであったが……。

1/fのゆらぎを発するIT起業家のTさんに誘われて会議室へ。「この人なら私の望みを叶えてくれるに違いない」。私はWEBメディアの構想を描いたラフをTさんに見せました。「うわ~楽しそうですね」。Tさんも好感触。108の煩悩をたやすく受け入れてくれそうな穏やかな雰囲気。Tさんからの質疑応答が始まると、私は安心して自分の無知をさらけ出すことができました。
と・こ・ろ・が、話が前に進まない。。。WEBの基本用語を知らない私は、初耳のカタカナが出てくるたびにTさんのトークを中断させました。「へっ、ドメインって何ですか?」「へへっ、レンタルサーバーって何ですか??」「へへへっ、ワードプレスって何ですか???」。10分後、Tさんは自ら説明を止めて「西村さんが作りたいものを自分で作るには、相当時間がかかりますね」と苦笑い。私の無知の電磁波によって、Tさんのアルファ派が乱れたのか、「うーん」とうなっておられました。世界一空気が読めない私でも何となく自分の無謀さに気づきました。妊娠9カ月で「来月、フランス旅行へ~」って言うくらい現実離れした相談をしてしまったんでしょうね。シュンと肩を落とした私にTさんはこう言いました。「できます!」

えええっ! Tさんの大どんでん返しに私はイスから転げ落ちそうになりました。キッパリとした物言い。信じていいのか? いや、信じないと前には進めない。私はTさんのIT伴走サービスの料金プランを聞いて相談を終えました。

Tさんに「できる」と言われたものの半信半疑。数日後、私は起業塾のWEBコンサルタントのKさんに同じことを相談しました。Kさんは私の無茶な相談に「うーん」とうなることはありませんでしたが、私が描いたラフを見つめながら「シーン」と黙って真剣に考えておられました。そして「西村さんが作りたいものを作ろうとすると最低でも半年はかかります。制作はすべて制作会社に任せた方がいい」と、ととと。。。。費用は50~100万だそうで。これから子供にお金がかかるのに、主婦が用意できる額ではありません。終わったなと思いました。起業塾に受かった時の高揚感が懐かしい。あの時の自分に出会えるなら、両ハンド攻撃で目を覚ましてやったのにな~。とにかく、恥をかく前に荷物をまとめて起業塾からスタコラ退散です。明日からはもう出社しません。さようなら。

次の日から私が向かう先は起業塾のオフィススペースではなく、図書館になりました。雑誌でも読んで気を紛らわせようと思っていたのに、手に取る本はWEB関係や経営系。そう、私はまだ完全にあきらめていなかったのです。お金をかけずに何とかするのが主婦の真骨頂。WEBの本を開いて、HTMLだのCSSだの意味の分からない専門用語の泉のなかで溺れながら必死で掴める藁を探す。おばちゃん根性をなめるなよ。難しい内容ならば、少し優しい本へ、それでも理解不能なら初歩的な本へとバトンタッチする間にWEBコーナーの本が底をついてしまった……。最後に行き着いた本のタイトル群は「超初心者〇〇」「世界一わかりやすい〇〇」なのに、オイッ! 安易に超とか世界一とかっていう最大表現を使うんじゃないよ。と、世界一空気が読めない女を代名詞にしながらほざくのでした。本当にこんなんで起業できるのだろうか?

ウェブ公開予定日まで75日

つづく


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