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バックオフィスを見直すと、なぜ売上が上がるのか?

このテキストは、2020年7月に発売の書籍『売上が上がるバックオフィス最適化マップ』(クロスメディア・パブリッシング)の「はじめに」をnote用に編集したものです。第1章の内容もnoteで公開しています。

本書は、読んで字の如く、バックオフィスや、その他企業内の業務をITによって最適化する手法をお伝えするものです。近年、ITによるバックオフィス最適化を考える企業は増えていますが、ITサービスの導入などに苦戦するケースも同様に多いです。そのような悩みを持つ経営者やIT活用を推進されている方々に、IT活用・導入に必要な考え方や方法論をお伝えします

著者である私・本間卓哉は、一般社団法人 IT顧問化協会の代表理事を務めています。「IT顧問」とは、税理士が企業の会計や節税についてアドバイスをするように、企業のIT活用・導入についてアドバイスをしたり、現場で導入支援をしたり運用をサポートする存在です。「IT活用」の内容は多岐にわたりますが、いくつか例を挙げるなら、

人間が手作業で行ってきた事務作業の省力化・自動化 / 属人的な領域のシステム化 / 情報共有やコミュニケーションの活性化 / Webやクラウドツールを活用したマーケティング / テレワークを可能とする環境の構築

といったものです。
ちなみに「バックオフィス」とは、経理や人事といった、社内で顧客とダイレクトには接しないで働く職種や業務を意味し、本書が目指す「最適化」は会社全体の業務におけるものです。また、社内のコミュニケーション手段の構築やテレワークの実現などによって、営業や販売といった、顧客と直に接する「フロントオフィス」の業務にもIT活用の影響が及ぶこともあります。
IT技術の進化はめざましく、その恩恵を存分に受けている方も多いでしょう。

そんな方々には釈迦に説法かもしれませんが、まだまだITで代替できる作業に多大なる労力と時間をかけている企業はたくさんあります。むしろ、日本全体を見れば、その活用度や理解度はまだまだ低いと言わざるを得ません。昨年はこんな記事も話題になっていました。

コーポレートエンジニアの「ふらふら」さんが、社内SEとして、一部社員に過度な、さらには不要かつ非効率な負荷がかかっていた作業を自動化した結果、「社内の文化を破壊した」としてクビになってしまった……という衝撃的な内容です。

このような企業では、効果的・効率的なIT導入など夢のまた夢です。少し厳しいことを言わせていただければ、いずれ競争力を失い、苦しい状況へ追い込まれていくことでしょう。

絶対必要なのに人材不足のCIO(最高情報責任者)

言葉は悪いのですが、そのような企業はある種「自業自得」と言えます。ただ、私がそれ以上に問題だと感じるのは、経営者が現状に問題を感じて「ITシステムを活用して問題を解決したい」と考えているのに、IT活用・導入を実現できる人材が社内にいないケースが非常に多いことです。

IT顧問は、このミスマッチを解消する存在です。

私はかつてビジネスチャットツールを展開するChatwork株式会社(旧:EC Studio)で企画マーケティング部門を立ち上げから担い、徹底したIT活用により効率的なワークスタイルを築いていました。その後、社内ベンチャーを経て株式会社IT経営ワークスを設立し、IT活用を進めたい企業のサポートを「IT顧問サービス」として10年以上続けています。

そんな私が協会を設立するに至ったのは、シンプルに前述のミスマッチを解消するには、私だけでは手が足りない――と考えたからです。ITを本格的に活用したいと考える方は着実に増えています。現状の活用度、理解度は高くないとはいえ、最終的に社会がその方向に進むのは間違いありませんし、現状がまだまだであるからこそ、IT顧問の活躍の場は今後確実に増えていくでしょう。私がこの取り組みにどのくらい本気かというと、勢い余って『IT顧問®』で商標まで取ってしまったくらいです。

アメリカではCIO(Chief Information Officer=最高情報責任者)を設置する企業が多く、日本でも増えていくと考えられますが、問題は中小企業です。現状では、CIOを務められる人材はそう多くありません。そんな人材の獲得競争が起きると、どうしても大企業が有利になります。

そして、仮にそれだけの人材を中小企業が役員待遇で招き入れられたとしても、それはそれでミスマッチが起こる可能性があります。どういうことかと言うと、実際に中小企業のIT支援に入ると、解決策が非常にシンプルなものに落ち着くケースが多々あるのです。実は、月額利用料が一人あたり数百円で済むITサービスを、いくつか導入すれば済む企業も少なくありません。

そのレベルの問題解決なら、CIO候補者を探すより、外部のIT顧問を登用するほうが現実的、かつ費用的にも適切な投資になると私たちは考えています。IT導入支援をある程度の期間受け、目処がついたら自社のみで運用し、定期的にサポートを受ける――。IT顧問が、冒頭でもお話ししたように、顧問税理士のような存在であることがイメージしていただけるのではないでしょうか。

このようなニーズに対応できるIT活用の専門家ネットワークを形成するべく、また、IT活用を考える企業側から見てもわかりやすい相談の窓口となるべく、IT顧問化協会を設立しました。当然ながら、IT顧問は士業などと同様に、誰でもできる仕事ではないので、社外(External)のCIOとして役割を果たせる人材であると弊協会が認める『eCIO®』認定制度も導入し、講座などを通じて優秀なIT顧問の育成にも努めています。弊協会の認定者はeCIO®、IT顧問®という肩書で活動しています。

なぜこのテーマを書くのか?

先述したように、本書はIT活用の必要性を感じながらも、IT導入を実現できない企業に向けた内容になっていますが、執筆の動機としては「IT活用の必要性を実感していない」層に届けたい――という思いが強いです。

先進的な人材・メディアが「IT活用」「クラウド活用」の声を上げるようになってすでに10年以上経ち、実際に素晴らしいサービスが続々と生まれています。しかし、それらのサービスをつくったり、販売したりしている企業は、どこも「まだまだ自社のサービスが浸透していない」と感じています。

とはいえ、そのような素晴らしいサービスがたくさんあり、大きな効果を挙げている企業が増えつつある、という情報は着実に広まりつつあり、危機感を抱く経営者も増えてきています。実際に、私たち協会が担当する案件は、「このままではいけないとは思うが、何をすればいいのかわからない」と直接相談に来られるケースが多くあります。

さらに近頃は、一度社内で何かしらのツールやサービスの導入を試み、失敗した企業の方からご相談をいただくケースが明らかに増えています。「知人が使っていたサービスを導入してみたけど、うまくいかなかった」といった話をよく伺うのです。

これは、見方を変えれば「うまくいかなかったから、IT導入を諦める」のではなく、「うまくいかなかったが、専門家の力を借りてでもIT活用を推進したい」と考える経営者が増えているわけで、遠くから「ITの進化」を小さなうねりのように感じていた方々も、その波がどれだけ大きなものであるのかを理解しつつあることを示しているように思います。

また近年は、サービスを提供する側も、自分たちのやり方にも問題があったと認識し、さまざまな取り組みを進めています。特に顕著なのが、他社サービスとのデータ連携です。たとえば、A社が提供する給与計算ソフトのデータは、A社の会計ソフトと連携しており、給与計算を行えば自動的に会計ソフト上でも経理処理がなされるのが一般的です。このような連携が、「A社の給与計算ソフト」と「B社の会計ソフト」といった、別企業のソフト・サービス間でも可能となる動きが日進月歩の勢いで広がっています。顧客の囲い込みを狙うよりも、ITを活用する企業の裾野が広がるほうが、結果的に自社の利益につながるという判断がなされたのでしょう。

そして、この流れにとどめを刺す形になったのが「働き方改革」による一連の動きです。残業ありきで回っていた企業にとって、効率化は喫緊の課題となり、多くの中小企業が対応に追われています。その解決策として、バックオフィス業務の最適化がこれまで以上に注目を集めているのです。

もしかしたら、この問題の一番シンプルな解決方法は、IT活用ではなく、人を雇って手数を増やすことかもしれません。残業代を払っていた分をあてると考えれば、費用を気にすることもないでしょう。しかし、そもそも多くの中小企業が、すでに人材不足に直面しています。そこで「人を増やす以外の方法で解決したい」となったときに、ITによる効率化を検討する企業が増えています。東京商工会議所も、

このような施策を行い、企業のIT活用を促進しようとしています。今年10月の稼働を目標としている政府共通プラットフォームでもアマゾンの提供するAWS(Amazon Web Services)の利用が前提となっています。もはや、このような流れは止められません。

しかし、まだこのような時代の流れを理解していない方や、理解しつつも自前でIT活用を進められず、そのサポート役になれるIT顧問のような存在を知らない方は少なくありません。私は3年前に『全社員生産性10倍計画』という書籍を上梓しているのですが、経営者には読書家が多いため、未だに同書の読者からのお問い合わせがよくあります。

そのため、ITには強くないけれど、ビジネス書をよく読まれる経営者の方々にも、IT活用の重要性や協会の存在を知ってほしい――という思いから本書の執筆に至りました。

本編では、具体的なITサービス等の名称も挙げてバックオフィス最適化のポイントを紹介していきますので、外部に頼らず、自社でIT活用を実現したい方にもおすすめです。

効率化のゴールは「売上アップ」に置くべき

私たちIT活用の専門家および、本書の強みは「売上アップをゴールに設定している」点です。

私個人で400社、協会全体では3,000社以上のクライアントを見てきてわかったのは、「経営者は業務効率化の先の売上アップを望んでいる」ということです。たとえば、ITによって「今まで3人の社員が2週間かけていた作業が、ITによって3日で済むようになった」としましょう。これはもちろん素晴らしいことながら、大切なのはそれが売上や利益につながることです。

当たり前の話と思われるかもしれませんが、多くの経営者は「バックオフィス最適化」と聞くと単なる効率アップを思い浮かべます。もちろんそれは悪いことではないものの、そのためにITサービスの月額利用料がかかるなら、現状のままでもよいのではないか――と考える方が非常に多いのです。また、ITには詳しいけれど、残念ながら経営の視点・知識がなく、効率アップを実現した先のビジョンがない業務改善の専門家も同様に多いです。

しかし、私たちはIT活用によるバックオフィスの最適化が売上アップに繋がることを理解し、そのために必要な手順を策定しています。クライアントの理想的な業務フローを考え、それがどんな形で実行できるのかを考え、最適なツールを提案し、導入支援を行います。

書籍の内容

本書は、

第1章
重複、バラバラ、非効率……ITは「会計」の視点で組み直せ
第2章
「従業員」の軸で見直す
第3章
「顧客」の軸で見直す
第4章
IT活用の「よくある疑問」一つひとつ答えます
第5章
さらに業務を「最適化」していくには

という全5章からなります。

第1章では、問題提起および概論として、「なぜITの必要性を理解している企業であっても、IT導入に失敗してしまうのか」を原因までさかのぼり解説します。そして、解決策として、本書の根幹をなす「会計から逆算する」という考え方を提示します。

第2章と第3章は各論です。第2章は「従業員」、第3章は「顧客」というそれぞれの軸から業務を見直し、ITを活用する方法論を解説します。各項目の説明は、刊行後時間が経っても陳腐化せずに活用していただける書籍にするべく、ITサービスの紹介は最低限に留め、基本的な考え方を中心にしています。

第4章は、前章までの話を踏まえつつ、各章の枠組みでは説明できないものの、多くの人が抱く「よくある疑問」に対してQ&A形式で答えていきます。

最後の第5章では、発展編として、「会計から逆算する」視点で既存の業務を見直した後も、さらにIT活用を推進し、ITがあれば実現できそうな新規事業等に取り組んでいきたい――と考える前向きな読者の方々に向けて、本格的にITを活用していく上で必要な考え方などをお伝えしていきます。

ITの真価に気づいていない経営者やIT推進をされているみなさんが、自社でIT活用に取り組んでくれれば、結果として企業の売上はアップし、ムダな仕事が減って現場で働く方々をプラスに活きることができるのではないか……と考えています。「バックオフィス最適化と売上アップにどんな関係が?」と思う方にこそ、ぜひ読んでいただきたいです。また、興味を持っていただけた方は、ぜひ第1章のテキストや、書籍をお読みいただければ幸いです。


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