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金木犀を知らなかった頃

キンモクセイを知らなかった頃、それはキンセイやモクセイのように、宇宙に浮かぶひとつの星だと思っていた。

はじめて見たキンモクセイは、地に堕ちた太陽のようだった。

キンモクセイが花の名前だと、知らないままでもよかった。

キンモクセイを知らなかった頃、キンモクセイとは知らずに、その花の匂いは風とともにやってきた。

キンモクセイを知った今、花の匂いではなくて、キンモクセイばかりを追いかけている。

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