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ツールドフランス2024 第6ステージ(Mâcon - Dijon) 考察

今年のツールドフランスはもうすでに数々のドラマが繰り広げられていますがまだ1週目。「朝起きてもう第15ステージか、と思ったらまだ第5ステージだった」とつぶやいている選手がいるくらい濃厚な内容でお送りされています。

第6ステージはMâconからDijonまでSaône川に沿って北上していくステージ。このステージも第5ステージと同様に強い向かい風と横風が吹いていました。

今年のツール・ド・フランスの特徴として、平坦ステージでは積極的に逃げのアタックがないこと。第1・2ステージは丘が多くスプリンターが遅れる可能性があったため、各チームが積極的にアタックして、第1ステージで9名、第2ステージで10名の逃げが決まりました。一方でフラットの第3ステージでは終盤にTotal Energieのグレイエ選手が少しだけ抜け出すのみ、第5ステージではGroupma-FDJのルッソ選手とTOTAL Energieのヴェルシェール選手の2名が逃げましたが、力づくで逃げたというよりも誰も行かないから行ったというような感じで、天候の関係もあり残り28kmくらいで吸収されてしまいました。で、今回の第6ステージでは最初のKOMでUNO-Xのアブラハムセン選手がポイントを取りに行ったところに、第5ステージでLidl-Trekのペデルセン選手をフィニッシュ前に飛び越したCofidisのジングル選手が合流して2名の逃げになりましたが、スプリントポイントを待たずにプロトンに戻っていきました。全体的に逃げる気がまったくない。

今回逃げができない理由としては、第5ステージの記事で説明した理由に加えて、このステージではスタートからの雨と向かい風がプロトンをさらにナーバスにさせたからのようです。というのも横風のエシュロンができた場合に分断された後ろのグループに入ってしまうと、一人がどんなに強くても一人で状況をひっくり返すことができません。そうなると山岳ステージで遅れる以上のダメージを受けることになります。

なので、このステージではそのような状況にならないためにも常にプロトン前方に位置してライバルチームの動きを警戒する、という動きになっているんだと思います。加えてスプリンターチームも最終段階の位置取りで一人でも多くのアシストも残しておきたいので、無理に逃して消耗させるよりも最後まで温存させてもらってスプリントに臨むというスタイルの方が理にかなっている、というように思います。

そんなことから、この日は各チームがエースのために良い位置を確保しながら、道幅ぎっちりに位置取って、ずっとナーバスな状態でレースが進みました。これが現代のツールドフランスのフラットステージの形になるのでしょうか。ただ、これも個人タイムトライアルや山岳ステージの結果次第でチームのエースが総合争いの圏外になったり、スプリンターがリタイアした場合はそれらチームが逃げに切り替えてくると思うので、後半戦はまた違った形になりそうです。そうなったら逃げについての話も書けたらと思います。。

で、プロトンはかなりの密集度なので見ていると危なく感じますが、みんなが一定の速度で走っている分にはそこまで危ないとは感じません。でもこの塊のまま50km/hを超えてくると障害物などへのとっさの対応が難しくなってくるので、プロトンに埋もれているとだんだんと怖くなってきます。(後ろの方がちょっとばらけているのはそのせいです。めちゃストレスフル。)特に小さな選手は、周りの選手が大きいから前が全く見えなくなるので、前の人を信じてついていくしかありません。そうやって走ってると首と腕が強張ってくるので、正直肩凝ります。昨日はプロトンの中で頭をちょこっと出して前を確認している選手を見たので、ツールに出てる選手でも100%は信頼できないんだなと思いました。

だからプロトンの前方の前が見える場所で信頼のできるチームメイトと一緒に固まって走った方が何よりも安全、ということで前方の位置取りが激しいということも言えます。ただ第5ステージで中央分離帯などの障害物系の落車が多かったこともあり、第6ステージでは選手たちがハンドサインや声をよく出しているように見えました。この辺は持ちつ持たれつですね。

またレース中盤に、横風でVismaがチームでアタックをしてポガチャル選手を孤立させた場面がありました。あの風と道の狭さでいい感じに決まりましたが、そこからあまり回らなくなってしまい、結局後続に追いつかれてしまいました。Vismaは攻めたけど、Soudal-QuickstepやRed Bull-BORA、Ineosが回らなかったのか、回れなかったのか、回ったけど風が強すぎたか、そんなに力を使いたくなかったのかと色々考えられますが、そのアタックではそこまでの差は生まれませんでした。まあほとんどの主要選手は先頭グループに入っていたので、そこから攻める意味を見出せなかったということでしょう。個人的には打倒UAE連合軍を形成して、全チームでローテを回してレースを面白くして欲しかったです。

勝手な想像ですが、ポガチャル選手を孤立させて、さらにローテーションを回して第2グループとタイム差をつけたけど、最後はポガチャル選手に単独アタックをされて結局タイム差がついてしまう、なんて展開があっても面白そうですね。想像は自由なので。

そして、レースはそのまま最後のスプリントになり、オランダ選手権に優勝したばかりのJaycoのフルーネヴェーヘン選手がステージ優勝。このステージはLottoやUNO-Xが積極的にプロトンの前に入っていったので、Astanaのトレインは埋もれてしまい、優勝予想をしていたカヴェンディッシュ選手はスプリントをすることができませんでしたが(一度勝ったのでリストを負わなかった?)、前日のカヴェンディッシュ選手と同じようにLottoのドゥリー選手の後ろから左に単独でスプリントをかける力強い走りでした。ただこれまでにドラマがありすぎて、彼が勝ってから、「えーっと、どんなストーリーがあったかな・・・?」と、みんなどうやって取り上げるのかちょっと戸惑っている感がありましたが。。。

でもこれだけ多くのスプリンターがいる中でのステージ優勝ということで、価値のある一勝であることは間違いありません。本人もあまりの僅差で手を挙げられなかったのは残念だったと言っていましたが、写真判定の差で先行できたのはあの話題の鼻カバーの効果だったのでしょう。

スプリントもこれまで3回のスプリントステージで全て別々の選手が優勝して、さらに面白くなってきました。今年のスプリントは位置取りの段階から各チームが熾烈なバトルを繰り広げていて、毎回誰が勝つか予測がつきません。でもそれがまたレースをエキサイティングなものにしてくれています。コース設計者に敬意を表します。

でもちょっと落車が多いので、UCIコミッセールがナーバスになってきていますね。ただ降格になる基準があまりクリアではないので、チームから苦情も出ているようです。昨日のあれもそうですね。4km or 5kmルールで総合系との絡みは少なくなったものの、スプリンターが増えたことでスプリンター同士のぶつかり合いが激しくなっている印象です。ここにブアニ選手いないのが非常に残念。(彼がいたら余計に荒れそうですね。。。)

さて、本日の第7ステージは1回目の個人タイムトライアル。第4ステージの山岳では総合勢のタイム差がつきましたがタイムトライアルではどうなるか。今回の総合成績の行方を占う注目のステージです。まぶたとの戦いに勝利して、最後まで目を離さずに見届けたいと思います。

今回も読んでいただきありがとうございました!今後の記事の励みになりますので、記事を気に入ってくれた方は「スキ」や「記事をサポート」していただけると嬉しいです。他にもこのnoteに走りに関することやサイクリングに関することを書いているので、参考にして楽しんでいただけると幸いです。

それでは第7ステージの考察で!

今後の記事作成の励みになりますので、記事を気に入ってくれた方は「スキ」や「記事をサポート」していただけると嬉しいです。他にもこのnoteに走りに関することやサイクリングに関することを書いているので、参考にして楽しんでいただけると幸いです。