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ウイスキーと水

ウイスキーと水、加水とか飲み方の話。

ウイスキーはストレートで飲まなきゃダメだとか押し付けがましくいう人もあるが、そういいたい気持ちはわからないでもなく確かにもったいないと思うこともままあり、とはいえ他人の酒の飲み方に口を出すものではないだろうと、好きなように飲んで良いじゃないかとそう思うこともしばしば。

そもそも蒸留したてのウイスキー、ニューポットとかニュースピリッツとか呼ばれるそれはアルコール度数が70%以上もあり、熟成のために樽に詰める段階で一度(アルコール度数を63%程度に)、そして熟成を経てボトリングする段階でもう一度(アルコール度数を40%程度に)、加水してアルコール度数を調整する。

つまり、いざ飲もうという段階では既に相当量の水が加えられた状態で、この段で水で割るのは邪道だの冒涜だのわかってないだのと喚いても詮無いことだと思うしだい。

とまれ、せっかくのウイスキーを無闇に水で薄めて飲んでしまうのも、冒頭の繰り返しになるがなんだかもったいない気もしてくるもので、であれば同じ水を加えるのでも、量や氷の有無を加減しながら、少しづつ様子をみてその変化を楽しんでみるのも面白いのではないかと思う。

なおスコッチやアイリッシュないしはジャパニーズを想定して書いているので、アメリカンやカナディアンの場合は必ずしもこの限りではないということを踏まえて読んでいただきたい。

ストレート

ボトルからグラスにそのまま注いで飲む。水も氷も入れない。一般的にウイスキーは冷蔵保存しないので、たいていは常温だろう。
ショットグラスでカパカパ飲んで鼻に抜ける香りや喉の焼ける感じを楽しんでもいいし、ステム付きのテイスティンググラスやグレンケアンで掌で温めながら香りや味わいをじっくり楽しんでみてもいい。ボトルから直に飲むのもありだ。
が、せっかくなので、素の香りと味わいは憶えておこう。無論忘れても構いはしない。

ごく少量の水を加える

ストレートのウイスキーに、一滴、多くても数滴の水を垂らす。ステアしたりはしない。ただ垂らすだけ。
水の重みがもたらす対流によって、ウイスキーと水がダマスカススチールの紋様めいてゆっくりと複雑な軌跡を描きつつ混ざり合う様を、ぼんやり眺めるのも面白い。これを観察できるように、模様のない透明なグラスを使うのがよい。
ごく少量の水を加えることで、僅かな化学変化が起こり、ウイスキーの香りが花開くという。
かのマイケル・ジャクソン氏はこの変化を「ブーケが開く」と表現した。ブーケはワインのテイスティング用語 Bouquet で、熟成香のこと。

トワイスアップ

さらに少量ずつ水を加えて、ウイスキーと水を等量にするとトワイスアップという飲み方になる。
ウイスキーのアルコール度数を下げて飲みやすくし、味わいを感じやすくする。水を加えることで香りの出もよくなるという。
ウイスキー・テイスティングはトワイスアップで行われる。
水はウイスキーと同じく常温が望ましい。

オン・ザ・ロック

氷を入れたロックグラスにウイスキーを注ぐ
氷は大きくて丸いものが望ましい。大きくて丸い氷は溶けにくいからだ。小さくてデコボコした氷は溶けやすく、のんびり飲んでいるとあっという間にウイスキーが薄まってしまう。
ウイスキーの飲み方として一般的にイメージされるのは、この飲み方だろう。かっこいいバーでかっこいいロックグラスにオン・ザ・ロックしてもらい、グラスを揺らしてカランと鳴らすのはなんとなくかっこいい
かのマイケル・ジャクソン氏は、氷を入れると味覚芽を冷やすので(味わいを感じにくくなるため)良くないと言っていた。
冷やすことでアルコールの刺激が抑えられるので、ツンとしたアルコール感が苦手なら、氷を入れるのもよいと思う。

ハーフロック

氷を入れたタンブラーにウイスキーと水を等量注ぎ、軽くステア。氷入りのトワイスアップ、あるいは、水割りの濃いの。
オン・ザ・ロックしてたのならそのまま水を注ぎ足しても構わないが、オン・ザ・ロック用に大きくて丸い氷を入れてたなら、ステアしづらいので注意だ。
ウイスキーっぽさを損なわずに飲みやすくする最善の飲み方ではなかろうか。ピーティや塩み、アルコールの刺激など、ウイスキーに馴染みない人が感じるであろうウイスキーの苦手要素が、冷やすことで程よく抑えられ、甘みを感じやすくなる。
ハーフロックにすると大抵のウイスキーが美味しく飲める

水割り

氷を入れたタンブラーに、ウイスキーと倍程度の水を注ぎ、しっかりステア。ハーフロックからさらに水を注ぎ足してもよい。
ウイスキーと水の割合は1:3がベスト、というのをよく見かける。
ウイスキーを食事に合わせやすくする飲み方だといわれており、日本で生み出されたのだそうだ。

フロート

氷と水を注いだグラスにウイスキーをゆっくりと注ぎ足す
冷やされた水と常温のウイスキーが、比重の差でくっきりと上下二層に分かれる
ストレートのウイスキーとチェイサーをひとつのグラスに注いだ感じで、ストレートの飲み口を氷水が後追いしてくる感じが面白く、けっこう飲めてしまう。
ビジュアルのインパクトもある。
ギネスとバスで作るフロートスタイルのブラック&タンなどより、遥かに簡単に作れるのでオススメだ。

ミスト

グラスいっぱいのクラッシュアイスにウイスキーを注ぐ。お好みでレモンピールを搾る。
氷が細かく多い分、オン・ザ・ロックより速やかにしっかりと冷える。ウイスキーに清涼感を求めるなら、この飲み方だろうか。

ハイボール

氷を入れたタンブラーに、ウイスキーと炭酸水を注ぎ軽くステア。レモンを搾ったり、レモンピールを添えたり。ウイスキーと炭酸水の割合はお好みだ。
これもウイスキーを食中酒にするための工夫だとか、アメリカでスコッチを流行らせるためにデュワーズがはじめたとか、いろいろいわれている。
そもそもハイボールはスコッチの飲み方の一種で、スコッチ以外で作ったものはハイボールではないとか、ハイボール=お酒のソーダ割りなので「何のハイボールか」を明確にオーダーしないとダメだとか、諸説あるが、よくわからないし調べもしない。

お湯割り

ウイスキーに熱い湯を注ぐ
香りとアルコール分が飛ぶが、香りも味わいも優しくまろやかになり、体も温まる。
ハチミツを加えたり、レモンを入れたり、ハーブを添えたり、温めた牛乳で割ったりと、アレンジの幅は広い。
湯でないものを入れるとカクテルになって名前がつくので、お湯割りを飲みたい人は湯だけで我慢すべきである。我慢しなくても特に問題はない。

こんなところだろうか。
他になにか見つけたら追記するかもしれない。

さてウイスキー飲むか。

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