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#14 インドの配車サービスOlaの新メニュー「Ola Prime Plus」とは?

先日、インドの配車サービス大手「Ola Cabs」から「パイロット段階」であるとしながらも「Ola Prime Plus」という新メニューが発表された。

この記事は「Ola Prime Plus」に筆者が何度か乗ってみたユーザ体験と、今パイロット運行をしている理由(仮説)を書いていく。
速報版、というような位置付けで読んでいただけると幸いである。

【弊社紹介】
弊社(株式会社hoppin)はUXコンサルティング事業、および中国・インドのUXリサーチ事業を行う企業である。参考:会社サイト
後者について、具体的には、中国・インドの優れたUXを提供するサービスを、現地ユーザやサービス提供企業の役職者へのインタビュー調査を通して分析し、日本企業への示唆を出している。
また筆者の滝沢は上海に2回居住したことがあり、2023年現在はインドのバンガロールに居住している。参考:筆者執筆のYahoo!ニュース




配車サービスの新メニュー「Ola Prime Plus」とは?


インドの配車サービス(いわゆる白タク)の二大巨頭はOla CabsとUberだ。筆者はどちらもよく使う。

先日、そのインドの配車サービス大手「Ola Cabs」のCEOのツイートが話題となった。

ツイートの内容を要約すると以下だ。

  • 2023/5/28から「Ola Prime Plus」というメニューが、バンガロールで一部の乗客向けに開始(パイロット段階)。

  • 「良い運転手、良い車、キャンセルなし」のメニュー

  • 添付されているスクリーンショットを見るに、他のライドメニューよりも安い??と推測された(後述するが実際は安いわけではなかった)


まだパイロット段階で一部乗客しか使えないとのことだったが、筆者のアプリには、CEOの上記のツイートの3日後の5/31には「Ola Prime Plus」のメニューが出現した。

2023/5/31の筆者のOla Cabアプリのスクリーンショット

価格を見てみると、特に他メニューより安いわけではなかったが(上記スクリーンショット参照)、それ以外についてはCEOのツイートの通りのようだった。




乗ってみた


早速乗ってみた。本記事を書くまでに5回ほど乗車してみたが、アプリで車を呼んでピックアップしてもらう流れや、車のクオリティ等の乗車体験自体は、特に変わらない(筆者観点での評価)。

今までOlaでは見たことないようなタイプの車が来るかと思っていたが、
来たのはいつも乗っている「インドっぽい」全長が短い/小さい車だった。


Twitterで感想を見てみると、「車がきれい、時間通りの到着、乗車前に(位置確認などのための)電話をたくさんして来ない、何も言わなくてもエアコン使ってくれた」という絶賛ツイートも見られたが、まだ利用者数が少ないのかあまり多くの感想は見つけられなかった。


数人の運転手さんに聞いてみてわかったことは以下だ。

  1. 既存のライドメニューとの大きな違いは、ドライバー側からのキャンセルができないこと

  2. 丁寧なサービス、良い車(※)かつ、その中でも評価が高い運転手さんが選ばれている
    ※Miniという小さい車のカテゴリではなくPreime Sedanから選ばれている。とはいえ、日本の一般的なタクシーや乗用車よりは小さい車であることがほとんどだ。


一点目について、「ドライバーからのキャンセルなし」が、わざわざ特色として打ち出される背景として、一般にインドの配車サービスではライド確定後のドライバーからのキャンセルがある程度発生することが挙げられる。
※定量的にはわからないが、自分および周りの人の発言や、Twitterに書かれるUberやOlaアカウントへの批判コメントをみる感じでは広くそのようである

これは、お客さんのピックアップポイントが遠い等、ドライバーが条件が良くないと感じるライドだと、別のライドの方が良いと考えて確保しているライドを放棄するからだ。特に朝や夕方などのピーク時には通常よりキャンセルが発生しやすい(ように感じる)。

そのため、筆者はライドをキャンセルされることを見越して、UberとOla両方で同時に車を呼び遅い方をキャンセルすることもある。
ドライバーにとっても迷惑な話なので申し訳ないが、こちらも早く、確実に車に乗りたい。ドライバーからキャンセルされる可能性も考えると、お互い様というわけだ。

しかしお互いにとってキャンセル前提のサービスになってしまうことは、ユーザとドライバー双方の体験を害していると言える。



二点目の「高品質」は、背景として、車内があまり綺麗ではなかったり、運転が荒かったり態度が悪いドライバーも一定数いることが挙げられる。
そのようなことはOlaも認識しており、多少料金が高くなっても質を求めたい顧客のための付加価値ということだろう。




このタイミングでパイロット版が出されたのはなぜ?


国が豊かになり、個人の消費力が拡大していくと、「ただ移動できれば良い」にとどまらず、移動時の体験にこだわる人が増えてくる
「Ola Prime Plus」は、高品質な体験にお金を払いたい人向けのメニューと言えるだろう。



またこの施策は新興の配車サービスで高品質路線の「BluSmart」をベンチマークしているように思われる。

BluSmartは、2019年1月に創業されたスタートアップが提供するサービスだ。
インドの配車サービスの二大巨頭はOla CabsとUberであり、続いてRapido(ただしトゥクトゥクとバイクのみ)だが、それに続く第三勢力の中の一つといったところだろう。

BluSmartは以下が主な特徴のサービスだ。快適なので筆者も愛用している。

  • キャンセルゼロ

  • 割増料金なし

  • 高品質なドライバーと車


2022年9月からバンガロールでサービス提供が開始されており、最近(2023年6月)は特に街中でBluSmartの車を見ることが増えたように感じる。
BluSmartが進出しているバンガロールでパイロットテストしている点も鑑みると、Ola CabsはBluSmartをベンチマーク/ライバル視し、この高級路線サービスを試している可能性が高い。


BluSmartの車両(筆者撮影)

とはいえ、「Ola Prime Plus」は、BluSmartと比較すると、車自体やドライバーの振る舞いの品質には差があるように思う(BluSmartの方が「高品質」だと感じる)。
(筆者個人としてはBluSmartの方が好きだが)何はともあれユーザ視点では、競争が激化して配車サービスの質が高くなっていくのはありがたいことだ。


「Ola Prime Plus」は現時点では正式にローンチされているわけではなく、一部ユーザのみに向けて提供されているパイロット段階のため、サービス内容や料金体系等が最終的にどうなるかはまだ不明だ。

今後の正式リリースを待ちたい。




The余談:「眠いから行きたくない」正直なOlaドライバーに遭遇


「Ola Prime Plus」初回利用の際、ライド確定後にドライバーから「眠いから行かない」とチャットで言われた。

「Ola Prime Plus」は「キャンセルなし」を謳っているためドライバー側からキャンセルできないだろうし、そもそも眠いと言っている運転手の運転は怖いので、キャンセル料を払ってこちらからキャンセルした。

「高品質」を謳っているようなメニューでいきなりこのようなことが発生し驚いたが、一方でものすごく正直でちょっと面白いなと感じた。まあこれも良い体験である。苦笑



お読みいただきありがとうございました!

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