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#20 インドオンライン診療の最前線: PractoとMediBuddyの事例研究(後編)

私のインド人の友人の中には、オンライン診療を使っている人が何人もいる。調べてみると日本よりインドの方がオンライン医療が浸透しているようだ。インドのオンライン診療事情はどのようになっているのだろうか。

前編と後編に分けてインドの有名なオンライン診療アプリ2つ(PractoとMediBuddy)のユーザにインタビューをして見えてきたことを解説する。

前編では、インドの医療とオンライン診療の状況、また有名なオンライン診療アプリを筆者が利用して得た気づきと、実際のユーザの声をお伝えした。

前編はこちら


後編(本記事)では、日本のオンライン診療アプリと比較した際に見えてきたUIUXの違いについて書いていく。

【弊社紹介】
弊社(株式会社hoppin)はUXコンサルティング事業、および中国・インドのUXリサーチ事業を行う企業である。参考:会社サイト
後者について、具体的には、中国・インドの優れたUXを提供するサービスを、現地ユーザやサービス提供企業の役職者へのインタビュー調査を通して分析し、日本企業への示唆を出している。
また筆者の滝沢は上海に2回居住したことがあり、2023年現在はインドのバンガロールに居住している。参考:筆者執筆のYahoo!ニュース

インドと日本のオンライン診療アプリ両方を使ってみて、気づいたことがある。

インドのオンライン診療アプリは、自分の健康問題や診療科を入力したら、病院や医師選択の必要なく、その問題を解決できる医師が自動的にアサインされるというものが多い。
※前編で紹介したPractoとMedibuddy以外の主要オンライン診療アプリでも確認済

インドのMediBuddyでは、ユーザの入力した疾患に対応できる医師が
自動でアサインされる(変更もできる)



一方で、日本のオンライン診療アプリは、診療科などで絞り込むことはできるが、最終的には「病院から選ぶ」という手順のものが主流なのだ。

「オンライン診療アプリ」で検索すると上位に上がってくる、「CLINICS」「SOKUYAKU」「curon」は皆、「病院を選ぶ」という仕様だ。

SOKUYAKUアプリ画面のスクリーンショット
ユーザはオンライン診療を希望する病院を、自分で選ぶ必要がある


よく調べてみると日本の多くのアプリが「かかりつけ医の診察をオンラインでも受けられる」というコンセプトで運営しているようなのだ。

例えば、「curon」は「クロンは、かかりつけ医と患者さんをつなぐ、オンライン診療サービスです」と公式サイトで述べている。


また「CLINICS」も同様に、「インターネットを通じて、自宅や職場からいつもの医師との診察、薬剤師との服薬指導を受けることができるサービスです。」と述べている。

「CLINICS」の公式サイトのスクリーンショット


現時点においては、日本のオンライン診療アプリは「いつもの病院のいつもの先生」に診てもらうというニーズが重視され、「オフラインをオンラインに置き換えた」体験設計になっているものが多いと思われる。




一方でPractoやMediBuddyを始めとするインドのアプリは、オンライン診療に際して「病院を選ぶ」という概念がないものが多い
病院は関係なく、「ユーザの問題を解決できる医師」をアサインするという形なのだ。
医療機関の場所関係なく適切な医者をアサインできる、というオンラインの強みを活かした体験設計だと言える。

確かに、オンライン診療であれば「どの病院の診療を受けるか」ということはユーザにとって大きな意味を持たない場合も多そうだ。



日本のものが良くない、と一刀両断に批判したいわけではない。

現時点の日本のオンライン診療においては、「かかりつけ医がいる方の再受診」のニーズが高いため、その方々をターゲットとしたサービス設計になっているのだろう。

また、厚生労働省によるオンライン診療に関する指針が「かかりつけ病院と患者をつなぐ」ことに主眼を置かれているため、それに沿った形としている/せざるを得ないという側面もあるのかもしれない(参考)。
医者の友人に聞いてみたところ、いわゆる「患者紹介ビジネス」とされることを懸念しているのではないかとの意見もあった(参考)。


ただユーザ目線で考えると、オンライン診療を使う際は、オンラインだからこそ「どこの病院のどの先生でも良いから、自分の問題を解決してほしい」というニーズも十分に多くありうるのではないだろうか。

例えば風邪をひき、「早く診断をしてもらって風邪薬が欲しいな」と思ってアプリを開いた時に「どこの病院にかかりたいですか」と聞かれるのは、筆者としては正直なところ違和感がある。



現時点では日本のオンライン診療は「かかりつけ医にオンラインでもかかるサービス」が主流だ。
ただ今後は「オフラインのオンラインへの置き換え」のみではない、インドのオンライン診療アプリのようなオンラインの強みをより活かした診療スタイルが広がることを期待する。




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