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奨学金がなかったら「いまのわたし」はいない。

日本学生支援機構からハガキが届きました。表面には「重要なお知らせ」との記載が。残高不足で引き落とせなかったのかしたと慌てて中身を確認すると、奨学金返還完了のお知らせでした。

「そっか、終わったんだ、ようやく返せたんだ」

残高不足ではなかったこと、長年の義務を果たせたことに安心して、しばらくリビングに突っ立ったまま、返還完了証を眺めていました。

月々14,196円×14年=2,385,000円。

日本学生支援機構から借りていた金額です。14年間毎月返還していたので、このままずっと続く気がしていました。14年。本当に長かったです。

この奨学金がなければ、私は高卒で就職するつもりでした。

私は会社員の父と専業主婦の母が30代後半に授かった子で、進路を考える時期には父はもうすぐ定年でした。父の病気にかかる医療費と5人家族の生活費で家計はカツカツ。壊れた冷蔵庫を前に、冷蔵庫を買うから学資保険を解約しても良いかと聞かれたこともあります。家計を担う母の苦労を身近で見ていて、大学なんてお金のかかる道を選択出来ないと思っていたのです。

そんな中、進路指導の先生が私の状況なら無利子で奨学金を借りられると教えてくださいました。高卒の就職は容易ではない、伊東の学力では私立しか行けないけど進学できるならした方がいい、と先生の後押しもあって、奨学金をもらって進学することに決めたのです。

有利子だと2~3万円というケースもある中、無利子で月々14,196円という金額は低い方だと思います。しかし、事務職のそう多くはない手取りで返すとなると安くはありません。両親が亡くなり自分で住宅ローンを負担するようになってからは、厳しい月もありました。正直「ちゃんと説明してほしかった」と思う気持ちもありました。

それでも、奨学金をもらって良かったと私は思います。

大学生活で結果を出せたかと問われると難しいのですが、興味関心の赴くまま学べる時間は貴重でした。単位上限いっぱいまで授業を入れたり、受けたくても選択できなかった講義に潜入して聞いたり、サークルに入ってみたり、バイトをしたり。

小さかった世界が広がり、地方の高校生だった頃には思いもしなった企業への就職にも繋がりました。奨学金がなかったら、私の人生はまったく違うものになっていたでしょう。

奨学金の返還に苦しむ若者が増える中、最近では返還不要の奨学金制度も設立されています。経済面で進学を諦める学生が少なくなるように、奨学金がより充実した制度になればと思います。そして学生の皆さんには大人がきちんと、制度の内容や将来の返還に伴うリスクを説明してあげてほしいと思います。お金の話はわからなくても、知らないままより良いと思うから。

予定していた月々14,196円の支出がなくなったので、今年はやめようと思っていた自分へのご褒美を購入することに決めました。14年間お疲れ様の気持ちを込めて。

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