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back number『瞬き』 「幸せとは」4回言われると信じちゃう説

 今日から一週間後の2019年3月27日、back numberのニューアルバム『MAGIC』が遂にリリースされる。前作『シャンデリア』から3年3ヶ月の時が流れている。3年3ヶ月という時は非常に長い。なんと9ヶ月をプラスすると次のオリンピックが始まる。前のアルバムのキラーソングは『クリスマスソング』だったというその事実だけで、いかに僕たちback numberのオタクがこのアルバムを待ち続けていたかということは理解していただけるだろう。

というわけで今日から一週間、できるだけこのアルバムに収録されるシングル曲であるとか、そのへんのお話を書いていきたい。次のアルバム『MAGIC』は、あの『シャンデリア』以上にヒットソングが詰め込まれた、いびつな一枚になるだろう。ヒットソング、と言えども、『大不正解』にしてもそうだが、各雑誌のインタビューを見ていると清水依与吏の葛藤をポップ・ミュージックに昇華した作品であることが語られている。こういう作品こそ、オタクは多くの人に手にとってもらいたい。「back number、すごいね」と言われるだけで、オタクは大満足。そんなこんなで一発目、『瞬き』について語ろう。みんなも好きでしょう?

「幸せとは 星が降る夜と眩しい朝が 繰り返すようなものじゃなく 大切な人に降りかかった 雨に傘を差せる事だ」

 このフレーズ、4回繰り返される。しかも、サビでは「瞬きもせずに目を凝らしても〜」というようにおまけまでつく。くどい。すごくくどい。何回言うんじゃ、やべえ、『アンコール』死ぬほど売れた次の曲これかよ、重たいバラードバンド感余計増してるやんけ...コバタケ主張するねぇ...って言うのが、オタクのこの曲に対する第一印象だった。僕は正直1周目はこの曲の印象そんなによくなかった。売れ行きも心配だった。「アンコール」でみんな結局離れていったら...とかね、思ったり。オタクなんで。でもまあこの清水依与吏さんは「人が絶対にストレスにならないメロディ」を書く天才だから、10周くらいするとまずメロが心地よくなってくる。いつもはだいたいこのあたりで曲も「あー大好き」ってなるのだけれど、『瞬き』はそう簡単に許してくれない。

いつの間に断言するキャラになったの

 これまでもちょくちょく書いてきましたけど、清水依与吏の詞の登場人物は、自分の気持ちを婉曲で表現することが多い。そして、肝心なことを言えなかったり、自信を持てないことが多々(『わたがし』は前者には当てはまらないのですが、圧倒的に後者)

私は冬が好き 僕は 君が(西藤公園)
んどうかなでもとりあえずは 僕は君が好きだよ(花束)

 それが、『クリスマスソング』で変わったって話だった。でもあれも、実はめっちゃ保険かけてる。

こんなこと伝えたらかっこ悪いし 長くなるだけだからまとめるよ 君が好きだ(クリスマスソング)

 こんな感じの曲が、各アルバムに1〜2曲は散りばめられているんです本当に。プレイリスト作りました。何も言えねえ!という状況に陥った際などにご利用ください。

 それが、それがですよ、『瞬き』のサビ、見て見てください、なんのいいわけもなく、断言してるじゃありませんかええ...いよりがいつのまにか大人になっちゃったよ...かつて『幸せ』と言うタイトルをつけながら、蓋を開ければひたすらに片思いの女性が「あなたの」幸せをそっと祈ってるよ...っていう恐ろしい楽曲を作った彼が、これほどまでに穏やかで、そのくせにアグレッシブなフレーズを生み出すと、back numberがこう言うバンドになると、誰が『スーパースター』の時点で想像したと言うのか...いや想像できたのだ実は。でもシングルでやると思わなかった、って言う話で。

実はあったそういう曲

 やっぱり、世間一般のback numberのイメージは『高嶺の花子さん』か『クリスマスソング』、『ヒロイン』だと思う。揺るぎない。人気曲。これらは恋愛楽曲で、まあどちらかと言うと草食系ソング。で、次点で『ハッピーエンド』『繋いだ手から』などの失恋ソングがきて、その他『花束』のような幸せソングなのだと思う。これらって恋愛曲で、やっぱりback numberと恋愛って切り離せないもの。
 でも、『瞬き』のトピックは恋愛じゃない。人生観、になると思う。でもこれ、珍しいことではない。人生観を肯定的に捉えた曲をしっかりとシングル曲で、バラードで、小林武史のアレンジで打ちだせる点(ミスチルと清水依与吏の因果関係)で真新しいのであって、back numberは基本的には人生観であるとか、恋愛と切り離した部分を歌うことがよくある。

 SISTERなんかは本当にそうだ。「地下鉄の窓に映り込む 疲れ切った逆さの君が 君のためにこの歌を歌ってる」外的なものと戦う人を写しながらも、結果としては内的な部分で成長していく人を描いている。個人的にはback numberシングル曲の中で一番好きな楽曲。

 もう一つ、『ミスターパーフェクト』と言う曲がある。この曲の主人公は、自分の短所であるとか、そう言うものを全部取っ払おうとして完璧な人間になろうとする。「短所をなくせば完璧な人間になれる」「その果てには空っぽな自分だった」挫折との葛藤が強く打ち出されたこの曲は、back numberの恋愛曲だけ知ってるよ、と言う人にはどうにかして聴いてもらいたい。見方がガラッと変わるはずだ。その他、そう言う曲もまとめました。18曲、これに『瞬き』『ARTIST』『大不正解』、『ロンリネス』あたりもプラスすると22曲。今back number約100曲くらいなんで、約20%、人生観を歌っていると言う事実。ミスチルは数えたことないけど、やっぱり清水依与吏は桜井和寿にすごく憧れているのだなとオタク特有の勝手な詮索をしてしまう。このプレイリストの楽曲は本当に好きです。前者のプレイリストも好きですが。

『幸せとは』4回言われたら信じちゃう説

 と言うわけで色々能書き垂れてきたわけだがタイトルに回帰。実際積み重ねてきた人生観に関する楽曲群。しかしそれらと圧倒的に違うのは、そこに満ち溢れる自信と説得力だろう。「4回繰り返していること」には言及せねばならない。そこまで自信を持っている楽曲は、J-POP中探してもなかなかない。
 そして、back numberの曲はとにかく有線でかかりまくると言う特性がある。街中、そこら中で、彼らの幸せの定義はプレゼンされ続けてきた。みんな、「なるほどなあ」くらいには思える環境が整備されている。しかもこのフレーズ、否定するにもしにくい。ロジックはしっかりとしているし。まして映画とのタイアップ。波及効果は絶大だ。

違和感の正体

 結局、僕が10周聴いても取り除けなかった違和感の正体は、完成度なのだと思う。『瞬き』のもつ強すぎる説得力。次曲『大不正解』で「僕らは完全無欠じゃない」と言われたら「せやな」と受け入れてしまうほどのものをこの曲は持っていた。とても消費財としてのJ-POPの領域を超えてしまったこの曲を、オタクとしてはやっぱり『MAGIC』のリード曲として位置付けて欲しいと思うのだけれど果たしてどうなのだろうね。ともかくドームツアー1曲目で聴いたこの曲は、彼らの高らかで、かつ等身大の、宣言に思えた。もう、国民的バンドなんて立ち位置はゆうに通り越している––––

 『オールドファッション』については以前書きました。次は『大不正解』について書きます。3年3ヶ月ぶりだから、そわそわしてるんです。


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