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「驚嘆」と「共感」を、探しに行こう。/「現代ビジネス」月記1

まだちゃんとお伝えできていない方もいるとは思いますが、2017年10月から講談社の「現代ビジネス」というウェブメディアの編集部に所属しています。
といっても、常駐フリーという働き方で、多少は個人の仕事もやりつつです。

僕はそれまで、基本的に「紙」の本を作ってました。なので、「ウェブ」の世界で働き始めて、これまでとギャップを感じることもあります。
中でも、頑張ってカタチにした記事の、(あえてこの言葉を使うと)「消費」スピードの速さには、いまだ慣れなかったりします。

だからこそ、月に1回というペース(それで「月記」と名付けています)ではありますが、自分の担当した記事や、あるいは普段の仕事を通して考えたことなどをストックしていけたらと考え、この投稿がその1回目になります。

2017年10月、仕事を通して考えたこと

これは沢山ありすぎて(すべてが新鮮ですから)、1つのことに絞ります。

「現代ビジネス」の編集者として、僕は日々、書き手の方に記事の寄稿をお願いしています。ただ、何でもいいから書いていただくということではなく、やはり「現代ビジネス」らしい内容、切り口の原稿をお願いしています。

どんな原稿が「現代ビジネス」らしいか、は編集部内でマニュアルがあるわけではありません。週1の企画会議を通じて、また(僕を編集部に引っ張ってくれた)Sという編集長とのやり取りから、自分が「これが現代ビジネスらしさかな」と考えたことを、以下にまとめてみます。
*現時点で僕がそう考えているだけで、考え違いがあるかもしれませんし、他の編集部員はまた違う基準があるかもしれません。個人的な意見です

●読者に「驚嘆と共感」を与える
「驚嘆と共感」は、うちの編集長Sの口癖です。彼はもともと週刊誌畑の人で、読者があっと驚く記事を追い求めていたので、「驚嘆」がある内容を好みます。スクープと言わないまでも、読んだ人に「あっ」と思わせる内容であってほしいということでしょう。同時に、そんなことってあるよねと思わせる「共感」も、人に記事を読ませる原動力になります。
1本の原稿に「驚嘆と共感」が両立することもあるでしょうし、どちらかがあるだけでも素晴らしいですが、逆にこの2つの要素がない原稿だと、なかなかうちでは載せづらいかなと。

●のどごしのよい結論が書かれている
これも同じく編集長の口癖で。どういうことかと言うと、原稿の結論を「〜〜、だから●●である」とハッキリ言い切ってほしいということです。
もちろん、世の中の出来事の多くがそんなに簡単に言い切れないのは百も承知。それでも、少なくとも書き手の方が、現時点でどう見ているか、どう思っているかを明らかにしてほしいということです。
個人的には、もしそう言い切った記事に疑問を感じることがあるなら、違う媒体で(あるいは現代ビジネスでも)反論を他の方が書けばいいと思います。
1つの事柄について、いろいろな意見が生まれ、それが読み比べられるのは、読者の方にとっていいことだと思うので。
*なお今回大きく触れませんが、ウェブメディアはタイトルが重要で、強いタイトルをつけるためにも、「ハッキリと」書くことは重要かなと

(●「今読む理由」がある)
これはウェブメディア全体に言えることでもあるでしょうし、一方で「現代ビジネス」は必ずしも時事的な記事ばかりが載っているわけでもないので、()をつけました。
ただ、僕が外部の書き手の方にお願いするときは、「その記事を今読む理由」について、一緒に考えています。そこが弱いと、せっかくよい原稿をいただいても、まったく読まれないということが起きる可能性が高い。それは、書き手の方にも申し訳ないと思うので。

●なるべく多くの人に「自分ごと」だと思ってもらえる
これは、上記の「今読む理由」の1つだとも言えます。思えば、紙の本を作っている時代(特にサンクチュアリ出版)も、よく意識していたことです。
ウェブメディアの記事はやっぱり、一瞬一瞬で「読もう」「読まなくていいや」と分別されていると思うので、ちょっとでも自分に関係あることだと思わせる切り口を、書き手の方に相談しています。このチューニングが、僕の大事な仕事の1つかなと思っています。

(●「ビジネス×◯◯」の切り口で勝負する)
これは正確に言えば、「現代ビジネス」で求められている僕らしさ、というほうが正しいかなと。なので()をつけています。
うちの編集部には、講談社で週刊誌で鍛えられてきた人もいれば、他社で自分の得意なジャンルを確立したあと移ってきた人もいます。そういう仲間と同じ土俵で戦うのではなく、(主にビジネス書を編集してきた)僕だけの土俵をつくるべく、しばらくはこの「ビジネス×◯◯」という切り口を中心に原稿を依頼しています。
というわけで、記事の具体例を出しましょう(そもそも書き疲れました…)。

2017年10月、担当した記事

正確に言うと10月3日(火)から編集部に行くようになり、最初の企画会議で企画を出せなかったので、今月はほぼ仕込みの時期でした。
それでも、カタチになったのが、以下の記事です。

・転職のプロが読み解く、小池百合子の「キャリアの終着点」
これは政治という(今読む理由が明確な)時事について、あえて人材コンサルタントの井上和幸さんに書いていただきました。まさに、
「ビジネス(人材)×◯◯(政治)」
という切り口で、うちでしか読めない記事を目指したものです(それこそが「現代ビジネスらしさ」かもしれません)。
その目論見がどれほど成功したかはわかりませんが、ヤフーに転載された記事と合わせ、よく読まれ、(書き手の方によるところが大きいながらも)手応えを感じることができました。
*ちなみに、11月分ではありますが、こちらの記事も「ビジネス×政治」記事です

というわけで、1回目なだけに気合い入れすぎた感がありますが、来月からはもう少しコンパクトに、ウェブでの仕事をストックしていけたらなと。
正直、かなり忙しく、チャレンジングな毎日ですが、明日からも、まだ言葉として書きつけられていない、「驚嘆」と「共感」を、探しに行こうと思います。

*追記
そうそう、これ以降、「全担当記事のまとめ」を作っているので、滝企画記事、全部読んでみたいという変わった方は、リンクをチェックしてみてください。

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