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漫才コンビは、「2人きりのベンチャー」のようだ。(『芸人迷子』の変な感想)/書かないよりは、まし。18

ブームというか、スイッチが入ったというか、ここ数日、芸人本を集中的に読んだり再読したりしている。

昨日は、友人にもらった『芸人迷子』 を一気読みした。
もらった手前、何かしら感想をと思ったのだけど、色々な読み方ができる本で、なかなかうまくまとまらない。
また、僕はお笑いは好きだけれど、詳しいとはいえず、正確な評論ができるはずもない。
だから、的外れだと思いながらも、あえてビジネス書の編集者として感じた、本書の感想を記しておく。

いい喩えだとは思えないが、漫才コンビって「2人きりのベンチャー 」みたいだ。
もちろん、関係者はたくさんいる。著者のユウキロックが結成していた「ハリガネロック」であれば、所属する吉本の社員、マネージャー、先輩後輩芸人、テレビのスタッフなどなど。
でも、彼らの「商品」である漫才は、基本2人だけで生み出すものだ。

自分と相手しかいない、最小限の組織。
相方への期待もあれば不満もある。
ともすれば、「自分はこれだけやっているのに」という憎しみや叱責も生まれる(もちろん、相手にだって言いたいことはあるはずだ)。
べつに「仲良し」である必要はないだろうけど、同じ方向を見て走らなければ、ツブれてしまうベンチャー。
「商品」がすぐれているだけでは、長くは続かない。

ユウキロックが解散までの内幕を綴った本書には、その相方に求めたこと・かなえられなかったこと・してしまったことが事細かく記されている。
著者は自分たちの芸に迷ったが、同時に相方との関係に大いに迷い、解散を選んだ。
その記録は、一時は脚光を浴びたベンチャーが、歯車が狂い、少しずつ、けれど確実に立ち行かなくなる様子に似ている。

少し前に読んだ『笑いのカイブツ』(この本については、また改めて書きたい)はある意味、「個人事業主」の絶望の話だが、『芸人迷子』は「組織」の絶望の話だ。
複雑な人間関係が生む、複雑な読後感。簡単に割り切れないからこそ、一読の価値があると思う。

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