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「NPOと行政の協働」の、とある実態

■先日、行政より「県内で活動する民間の若年支援団体のネットワーク構築を側面支援しつつ、協働事業を提案したい。ついてはその第1回目会議を開きたいので、出席してほしい」という旨の懇請をいただいたので、スタッフ2人で出席した。「他の民間支援団体との協働」という、現在模索中のテーマに加えて、「行政との協働」というテーマもここには含まれているため、ある種の期待とともに出席した。だが、会議に出席して私たちは愕然とする。何が起こったか。

■まずは会議の構成について書こう。出席者は、県内各地で活動する民間の若年支援活動団体の代表者たちと、行政側の関連機関の人びと、大学の研究者、という構成で、人数的には20名以上に及ぶ。3時間の予定のその会議は、最初の2時間ほどを各団体の若年支援活動の自己紹介にあて、その後の30分ほどを行政側からの協働企画提案に、残り30分を協議にあてて、その過程のみをもって「協議を尽くした」とし、協働事業を開始する、そういう筋書きだったらしい。

■ツッコミどころはそれこそ無数に存在するが、きりがないのでポイントを絞る。ネットワーク構築の支援として、このような場を設けてくれたことそれ自体には感謝している。民間活動という共通項はあっても、活動地域も価値前提も支援手法も不統一な私たちだから、それが一堂に会するという場面など滅多にない。そういう意味では貴重だ。だが、だとすれば尚更、そこでの「協働」はもっと慎重に進められるべきものではないのか。私たちはまだお互いを知らなさ過ぎる。

■その意味では、今回の会議の目的は、今後長期に及ぶと当然ながら想定される――その程度の想定すらできないのなら「若年支援」などとは間違っても口にしないでほしいのだが――「協働企画」関与予定者の「顔合わせ」ということだけで十分だったのではないかと思う。それが、会議構成から透けて見える行政側の筋書きによれば、①支援者の顔合わせ、②支援者の相互理解、③協働事業に関する提案、④協働事業に関する協議、の全てを3時間に詰め込んだことになる。

■「我々にはタイムリミットがある」的な反論が即座に返ってきそうだ。だが待て。そもそもその企画(とその予算)は誰のためのものか。少なくとも、面子を保つために事業を形式的に消化して事たれりとするような人たちのためのものではないはず。民間支援者側の思いはおそらくはそこに尽きる。議案は次に持ち越しとなった。「これは一筋縄ではいかないな」と腹を括ってほしい。その覚悟の共有からしか、おそらくは何も始まらないのではないかと思う。 

※『ぷらっとほーむ通信』038号(2006年06月号) 所収 

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