メタ・コミュニケーションのすすめ
■ぷらっとほーむでは日常的に、コミュニケーションをめぐるコミュニケーション(メタ・コミュニケーション)、会話をめぐる会話(メタ会話)が展開される。会話やコミュニケーションが苦手ゆえ、その練習をしたいというメンバーの求めに応じて、スタッフの側が意識してその場面を設けるようになったためであるが、これが、当初予想していた以上に、豊かな学びの機会をわたしたち双方にもたらしてくれているように思う。今回は、その一端を記述してみたい。
■それはいつも突然に、日常の延長線上で始まる。例えば、ある講座に単独で参加してきたメンバーがいるとする。彼(女)に対し、スタッフがこう促す。「そこであなたが学んできたことを、参加していない誰かに伝えてみよう」と。彼(女)がそれを他の誰かに伝えると、今度は、その伝えられた側に向かってスタッフはこう言う。「今の話からあなたは何を受け取り、それについてどう感じたか、伝えてみよう」と。これでワン・セット。あとは一連のやりとりの振り返りである。
■一見してわかる通り、これは、コミュニケーションのロールプレイであり、ワークショップである。実際に誰かに何かを伝える立場/誰かから何かを受け取る立場にたってもらい、コミュニケーションという相互行為の過程を実演してもらう中で、有効なコミュニケーションや円滑な意思疎通の条件とは何かなど、普段あまり意識せずに何となくやり過ごしているようなことに気づいてもらい、言語化を通じて制御可能なものにしてもらおうというねらいがある。
■この中で、話し手には三つの、聞き手には二つの技法が求められている。前者については、①これから話す内容の位置づけ/意味づけ、②メッセージの核心を一言で要約、③それについての自分の感想の付け足しであり、後者については、①話の筋の要約、②それについての自分の感想の付け足しである。それぞれについて注釈したいことはそれこそ無数にあるが、今回は断念して一つだけ記述することにする。言葉を受信して相手に返信する際の「付け足し」についてである。
■会話とは、参加者双方の共同制作物であり、創造的な相互行為の過程である。受信したものをそのままコピペして相手に送り返すのでは、何ら生産性がない。返信する側は、受信した何かに「+α」の付加価値をつけて、相手に返信しなければならない。それができないと会話は途絶する。簡単なメカニズムだが、メタ会話がなければ気づけないままだったろう。こうした学びが、ぷらっとほーむには溢れている。興味がある方は、是非一度体感してほしい。
※『ぷらっとほーむ通信』043号(2006年11月号) 所収