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震災文学

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2023年夏から実施している「震災文学読書会」関連の記事です。
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記事一覧

「日記」としての南三陸批評――三浦英之『南三陸日記』(集英社文庫、2019年)

著者は、朝日新聞の若手記者。宮城が初任地だったという彼が、東日本大震災後に新たに設けられ…

滝口克典
11日前
7

「いないことにされたものたち」の声を聴く――古川日出男『馬たちよ、それでも光は無…

著者は、福島県郡山市出身、東京都内在住。かつて「東北」をテーマに超長編『聖家族』(新潮社…

滝口克典
1か月前
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「遺体」はどのように構築されているか――石井光太『遺体 震災、津波の果てに』(新…

19,000人ほどの死者・行方不明者――関連死を含むと23,000人ほどになる――を出した東日本大震…

滝口克典
1か月前
2

「さまよう船」としての被災地――池澤夏樹『双頭の船』(新潮文庫、2015年)

震災2週間後に被災地に入り、その後も繰り返し東北地方を訪れているという著者による、東日本…

滝口克典
1か月前
3

「子どもたち」の3.11――森健『「つなみ」の子どもたち 作文に書かれなかった物語』…

東日本大震災の直後、津波被害の大きかった岩手県大槌町と釜石市を訪れたジャーナリストの著者…

滝口克典
1か月前
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セックスワーカーたちの3.11――小野一光『震災風俗嬢』(集英社文庫、2019年)

3・11と性風俗といえば、ノンフィクションでは山川徹『それでも彼女は生きていく 3.11をきっ…

滝口克典
1か月前
1

「あいまいな死」を追悼する――彩瀬まる『やがて海へと届く』(講談社文庫、2019年)

東日本大震災における被災の苦しみを特徴づけることばとして、「宙ぶらりん」という語彙がよく用いられる。例えばそれは、津波にさらわれ遺体が見つからぬままであるような誰かを身近にもつ人びとの心情であったり、それがどういう影響を自身とその家族にもたらすのかがわからない低線量被ばくに見舞われた人びとの境遇であったりする。自分にもたらされた〈傷〉があいまいであるため、それをどう位置づけたらよいかわからず、よって通常であれば次第に始まっていくような回復や治癒のプロセスがいつまでたっても起動

価値なきものたちをどう生かす?――眞並恭介『牛と土 福島、3.11 その後。』(集英…

「3.11」というのは多種多様なモチーフが絡まり合った複合的なできごとなので、どの場所から見…

滝口克典
1か月前
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〈東北〉のいちばん長い日――河北新報社『河北新報のいちばん長い日 震災下の地元紙…

「○○のいちばん長い日」というタイトル、元ネタはもちろん半藤一利のノンフィクション『日…

滝口克典
1か月前
2

震災文学読書会③ 『やがて海へと届く』を読む

震災文学(ノンフィクション含む)を読んで語るオンライン読書会を、月1回ペースで開いていま…

滝口克典
9か月前
16

震災文学読書会② 『牛と土』を読む

震災文学(ノンフィクション含む)を読んで語るオンライン読書会を、月1回ペースで開いていま…

滝口克典
10か月前
4

震災文学読書会① 『河北新報のいちばん長い日』を読む

震災文学(ノンフィクション含む)を読んで語るオンライン読書会を、月1回ペースで開いていき…

滝口克典
1年前
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有限の文明を生きる思考――加藤典洋『人類が永遠に続くのではないとしたら』(新潮社…

3・11から三年半。あのとき、福島第一原発が次々と爆発していく映像を目にしながら、私たちは…

滝口克典
2年前
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AV女優に見る震災の影――山川徹『それでも彼女は生きていく:3・11をきっかけにAV女優となった7人の女の子』(双葉社、2013年)評

東日本大震災をきっかけに、AV(アダルトビデオ)の世界に足を踏み入れ、自らの裸や性行為をさらしてお金を稼ぐようになった女の子たちがいる――。 ルポライターの著者(上山出身)は、被災地をめぐる旅の最中、そんなうわさを耳にする。「東北学」をバックボーンに、上京した若者たちや被災地の人びとのリアルを活写してきた著者がとっさに思い浮かべたのは、1930年代初め、恐慌と凶作で困窮化した東北の農村で、少女たちが、家の借金のために女中奉公や紡績女工、さらには花柳界へと身売りされていったと