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短編小説:図書館で待ち合わせ
※百合小説です。
私の通う高校には図書館がある。図書室ではない、独立した建物なのが、私達のちょっとした自慢だ。
いつも放課後、私は彼女と一緒に帰るために図書館で待っている。
待っている間は小説を読んでいるのだ。ジャンルは色々、あんなものも、こんなものもある。
ついつい夢中になって読んでいると、気がついたら目の前の席に彼女が座っている、ということがほとんどだった。
今日も、私が本から目を上げて対面を見ると、やはり彼女は座っていた。
優しく私に微笑んで、合図を送ってくる。
「あ、気が付いた? じゃあ帰ろっか?」
「うん」
「ふふ、今日の本はどうだった?」
もちろん、本は面白かった。今日のはちょっとギャグ多めのラブコメで、楽しい話だった。
彼女はいつもこんなふうに、今日読んだ話の内容を聞いてくることが多かった。
一緒に帰りながら、本の話をする。
夕方、帰り道には、私と彼女の影が長く伸びていた。その影は少しだけ重なって、たまに手をつないだみたいに見える。
私と彼女の「本体」のほうは、手はつないでいなくて、ちょっと前後にずれている。それでも本の話をしながら、楽しく帰るのだ。
本当は、本体のほうも、手をつないで帰れたら、うれしいだろうな、と思う。今日も一緒に帰れるだけでも、うれしさをかみしめて、帰路に就く。
◇
彼女はいつも私の学級委員、生徒会の仕事が終わるのを、図書館で待っていてくれる。
今日も、いつものように、やはり図書館で待ち合わせだった。
でも実は日々の仕事は比較的簡単で、意外と早く終わる、いや早く終わらせているので、すぐ図書館に着いているのだけれど、それを彼女は知らない。
図書館に着くと、彼女はいつも本を読んでいる。私はそっと反対側の席に座って、それを観察する。
今日はなんだか楽しそうだ。笑顔がときどき、ふふっと笑う顔が、なんともかわいい。
日によっては、真剣な顔で文字を追っていたり、目に涙を浮かべたり、さまざまな表情を私に見せてくれる。だから、私は仕事が早く終わっても、黙って本を読んでいる彼女を見て、時間を過ごしている。
彼女の顔を眺めている時間は、だいたい30分ぐらいだろうか。今日もいい顔だった。
彼女の表情を見たいから、早く仕事が終わっているというのは、彼女には秘密なのだ。
帰り道、二人の影が長く伸びている。そこを彼女の本の話を聞きながら歩く。
いつも彼女が夢中で読んでいる、本の背表紙と表紙に書かれたタイトルを見て、どんな内容なのかと、その顔とを見比べて考える時間が、とても楽しい。
こうやって顔を見られる時間はたった、そう、たったの3年間しかないのだから。
本当は、一生、ずっと、こうして彼女の顔を見つめて、生活したいな、とそっと本の話を聞きながら思うのだった。
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