ペルソナ分析をする前に必要なこと
マーケティング職でなくとも「ペルソナ分析」「N1分析」といった言葉を耳にしたことのある人も多いのではないだろうか?
Tarakoもマーケや新規事業企画のプロジェクトに関与すると、必ずと言っていいほど「どんな顧客像をイメージするか?」という論点にぶち当たってきた。
そこで、チームは「ペルソナ分析だ!」と言っていきなりホワイトボードに付箋を貼りだしたりするのだ。しかし、これが上手くいった試しがない。
このブログでは、Tarakoが日本や海外で経験した失敗から「ペルソナ分析」というワードを耳にしたら、まず立ち返ってほしいポイントを示したい。
市場調査の功罪
Tarakoが社会人になりたての頃(もう10年以上か。。)には、まだまだマーケティング≒市場調査という時代であった。マーケティングに関する心理学的な方法論なぢ、様々な手法が生み出され、古典的なマーケティング手法が成熟しきった時代でもあったのかもしれない。
当時、森岡毅氏によるUSJ再生が取り沙汰され、定量的マーケティングの重要性が再認識されたものの、落ち込んだ売上を再浮上させる(専門的にはターンアラウンドという)目的で劇的な効果を発揮するに留まっていたように思う。Tarako自身、今でも森岡氏を心からリスペクトし、多大な影響を受けているし、マーケティングというものをしっかりと学ぶきっかけにもなった方でもある。
しかし、多くの企業で市場調査から画期的な新製品が生まれることは稀であり、そのアンチテーゼとして「ペルソナ分析」「N1分析」「デザイン思考」といった方法論が着目されるようにもなってきた。
(手法自体は1980年代にAlan Cooper氏がソフトウェア開発に取り入れたことがきっかけと言われている)
つまり、統計的に十分なサンプルを調査し、解析することで「解」が得られると考える(定量的)市場調査に対して、
n=1(たった一人のユーザー)を深く調査し、深いインサイトを得ることが重要なのであり、一般化した調査では本当のニーズを満たす製品はできない
という考えのもと、もてはやされたのがペルソナ分析やエスノグラフィーなどの手法であったと理解している。
マーケティングの根本的問題
Tarakoは「マーケティング自体が売上を上げるものであり、画期的な製品/サービスを作ることに向いていない」と思っている。
こんなことを言ってしまっては元も子もないのだが、
このブログを書きながら偶然に見つけた記事によると、
ドラッカー大先生も下記のようなことを言っているそうだ。
つまり、企業の目的を達成する手段であるマーケティングは、顧客を観察しても「課題(お悩み)解決」はできるかもしれないが「市場創造」はできないのである。もっと言うと優れたマーケッターであれば「市場拡大」や「市場顕在化」には成功するかもしれない、
しかし、「拡大や顕在化」と「創造」は似て非なるものなのである。
Tarakoはここにマーケティングの持つ矛盾があると考えている。
トラブルメーカーのススメ
では、本題の「ペルソナ分析をする前に必要なこと」に立ち返りながら、
上述の布石を回収していきたいと思う。
まず、散々ディスったが、
ペルソナ分析を行うこと自体は意味がある点は強調しておきたい。
ただし、順序が大切なのだ。
Tarakoの経験からすると、
あるべき姿の定義
現状の定義(自社のケイパ定義含む)
ギャップの設定 (As-is/To-be分析)
市場調査
ペルソナ分析
製品/サービス開発
→必要に応じて2~5に立ち返り検証サイクルを回す
という順番が理想的であると考えている。特に、
「あるべき姿」を強く、解像度高くイメージできるかどうかがすべて
といっても過言ではない。
つまり、「あるべき姿」が強くイメージできれば、
そこに現状とのギャップ(問題)が生まれる。
その問題は、誰も言い出さなければ、放っておかれるし、別に解決しないでも人類がすぐに滅びるわけでもないだろう。
しかし、そういうトラブルメーカー的立ち回りこそ、
マーケ系、企画系のロールモデルであるとTarakoは強く主張したいのだ。
僭越ながらドラッカー大先生の言葉を修正するならば、、、
「企業の目的は(問題創出を通じた)顧客の創造である」
としておこう。
とはいえ、既に決まった製品の売上を伸ばすことが至上命題、という方が殆どで、上記は理想論と思われるかもしれない。
そんな方に、Tarakoも部下やクライアントに勧めている㊙テクを教えよう↓
まずは「あるべき姿の強いイメージ」を持つことから始める点は変わらない。
その上で、少々面倒(サラリーマン的)ではあるが、一度言われたとおりに市場調査をしてみればよい。
ただし、質問票に必ず「あるべき姿の強いイメージ」のFeasibilityが検証できる質問項目を混ぜておくのがコツ!!!
(質問の作り方などはケースバイケースなので、今後相談サービスなども始めようかなと思っている)
そして、データに基づいて、会社や上司の示した、あるいは行ってきた施策が如何にダメだったかを証明して見せよう。
ただダメ出しをするのではない。ちゃんと代替案を持っていくのだ。
それこそ、あなたのイメージした「あるべき姿」であり、その実行プランである。
データを示しても頑なにイナーシャにしがみつくような会社/上司なら、
いっそそのイメージに共感する人を見つけて起業でもした方が良い。
注)「あるべき姿のイメージ」が正解である前提↑
事例検証とトレーニング
もうお気づきの方も多いかもしれないが、
Apple (iPhone), Google, Teslaはもちろん、もともと存在しないような問題を作り出したことによってイノベーションと市場的大成功を達成している。
日本だって捨てたもんじゃない。
任天堂の成功も、元々は無くても良い「テレビゲーム」により、
「家でスーパーマリオしたい!!」(でもできない。。)
という問題を創出し、ゲームプレーヤー(顧客)を作り出し、
それをお金で解決させ、
時価総額5~7兆円規模の企業に成長したのだ。
日本のアニメだってそうだろう。(←なんでもアニメに繋げたがるw)
虫プロ、スタジオジブリ、ガイナックス、京アニなどなど、
究極的に言えばなくても良い「アニメ」を作り出し、
「アニメを観たい!」「コスプレしたい!」「円盤欲しい!」(でもできない。。)
という問題を創出し、アニメファン(顧客)を創造し、
経済効果に変換することで、世界に誇るJapanimation市場を作ったのだ。
日本動画協会によれば2021年には世界で2兆円を超える経済規模だ。
もう一度言おう。
「企業の目的は(問題創出を通じた)顧客の創造である」
日本でイノベーションが起こらない一因
先日、日本に帰った時に百均に行ったり、回転ずしに行ったり、
色々と日本の便利なものに触れてきた。
一方で、日本は課題解決に長けていることが仇となり、
問題を創出する(声を上げる)ことを悪とする社会風土も相まって、
イノベーションにブレーキをかけているのではないかと考えさせられた。
トラブルメーカーになったっていいじゃないか。
日本史は詳しくないが、、、
きっと、織田信長だって、坂本龍馬だってトラブルメーカーだったのではないだろうか?
もう少しビジネス的な例でいえば、
Toyotaの打ち出した「いつかはクラウン」という問題意識の創出も、
成長する1980年代の日本における「理想像の定義・共有」と「問題の創出(出世欲の刺激)」を通じた顧客創造だった。
あなたの描く「あるべき姿」はどの様な世界なのでしょう?
問題創出ファーストをぶらさず、日本の未来を創っていきましょう。
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