日経ビジネスの特集記事 77 メタバース 幻滅の先に 2023.03.06 2/3 <このページでは、『日経ビジネス』の特集記事の概要紹介と、管理人のコメントを掲載しています>
CONTENTS PART 1 ザッカーバーグの蛮勇 メタが挑む90兆円市場 直面する内憂外患 COLUMN Q&A メタバースとは PART 2 日本企業、「ネット敗戦」巻き返しなるか 幻滅の裏で探る商機 狙うはリアルとの共創 PART 3 ゲーム・エンタメだけにあらず 普及のカギは「BtoB」仮想空間で生産性向上 PART 4 社会を変える公器となるか 没入・解放・人間拡張 切り拓く3つの新世界
第2回は
COLUMN Q&A メタバースとは PART 2 日本企業、「ネット敗戦」巻き返しなるか 幻滅の裏で探る商機 狙うはリアルとの共創 を取り上げます。
「当社の事業のすべてを包含する社名が必要になっている」2021年10月28日、米フェイスブックがメタへの社名変更を宣言し、「メタバース」は国境を越えたバズワードと化した。未曽有のパンデミックは人のリアルでのコミュニケーションを遮った。生活基盤を仮想世界に移す未来は希望を感じさせ、企業の参入も相次いだ。あれから1年と4カ月。新型コロナウイルスに慣れた人々は現実世界へ回帰した。果敢な大転換を宣言したメタの株価は下落し、世間の狂騒も冷めつつある。無限に広がる仮想世界が社会を発展させる未来図は、いっときの流行だった──。本当にそうだろうか。
メタバース 幻滅の先に 2023.03.06 p. 011 フェイスブックを世界中に広めた最高経営責任者(CEO)のマーク・ザッカーバーグ氏と『LEAN リーン・イン IN 女性、仕事、リーダーへの意欲』 の著者でもあるシェリル・サンドバーグ氏は最高執行責任者(COO)として二人三脚の経営を行なってきましたが、ザッカーバーグ氏がメタバースへの転換を推進し始めると、サンドバーグ氏は考え方の違いからフェイスブックを去ることになりました。
社名をフェイスブック からメタ・プラットフォームズ(以後、メタと表記します) へ変更しました。つい最近のことだと思っていましたが、2021年10月のことで、もう2年になるのですね。
サンドバーグ氏は「フェイスブックに加わる前は、グーグルでグローバル・オンライン・セールスおよびオペレーション担当副社長、財務省首席補佐官を歴任」(『LEAN リーン・イン IN 女性、仕事、リーダーへの意欲』 著者略歴から)しました。
彼女は、米国人女性たちにとってあこがれの女性経営者でした。
先にお断りしますが、今回の日経ビジネスの特集にはサンドバーグ氏は一切登場しません。
COLUMN Q&A メタバースとは 私だけかもしれませんが、メタバースという概念が掴みどころがないと言いますか、よくわかっていないために、メタバースでどんなことができるのか、企業や個人はメタバースで何をしたいのかを知りたいと思いました。
私の素朴な疑問に答えてくれるでしょうか?
🔴Q そもそもメタバースとは? メタバースの語源 1992年に発表されたSF小説『スノウ・クラッシュ』が生み出した言葉に由来する。古代ギリシャ語の「meta(超越)」に、英語の「universe(世界)」を掛け合わせた。 現状で統一された定義はないが、岸田文雄政権の「骨太の方針」は、「コンピューターやコンピュータネットワークの中に構築された、現実世界とは異なる3次元の仮想空間やそのサービス」としている。
メタバース 幻滅の先に 2023.03.06 p. 018 特徴は? 特徴は、①VR(仮想現実)ゴーグルなどが生む没入感②3次元の立体的感覚がもたらす身体性③多人数が同一の時空間で体験を共有する大規模な同時性④アバター(分身)をまとう擬態・変身性──などがある。
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メタバースの本質は変身経済か? PwCコンサルティングの小林公樹ディレクターは「変身経済」にメタバースの本質があるのではないかと説く。 音楽ライブなら観客ではなく主演に、企業なら有望な若手を仮想・管理職に、消費者調査ならターゲットのアバターに変身する。「経験」を超越した「変身」がメタバースの価値を高めるという考え方だ。
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🔴Q どんなサービスがあるの? エンタメやアバターが接客 最も活用が進んでいる分野は、米エピックゲームズの対戦ゲーム「フォートナイト」や任天堂の「あつまれ どうぶつの森」などエンターテインメント領域が中心だ。 (中略) エンタメ以外ではどうか。アパレル大手ビームスはバーチャル店舗で、社員がアバター店員となって接客。KDDIなどは都市連動型メタバース「バーチャル渋谷」を作り、ハロウィーンなどイベントでにぎわいを生んだ。
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「多産多死」が現況 メタバースの「土地」が高額で取引される一方で、デジタル庁が22年末にまとめた「Web3.0」に関する報告書は、「現在は、小さなメタバースがいくつも作られては消えていく『多産多死』の状況にある」と指摘している。
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🔴Q メタバース=VRなの? メタバースはVRに限らず、ARでもMRでもある VRとは、CGなどでユーザーが入り込める3次元の仮想空間を生み出す技術を指す。ゴーグルを装着した方が没入感は高まるが、現状では、3次元空間をパソコンのモニターやスマートフォンで視聴することもメタバース体験に含むことが多い。 メタバースは閉じた仮想空間に限らない。現実の空間にCGによる仮想物体を重ね合わせるAR(拡張現実)も一つだ。 (中略) センサーなどを用いてVRやARが発展し、仮想と現実が融合した世界はMR(複合現実)と呼ばれる。はしりになりそうなのが、タイガー・ウッズら著名プレーヤーが参戦するとして話題を集める新たなゴルフの大会「TGL」だ。巨大スクリーンに映されたバーチャルコースにショットを放ち、パットは現実のコースで打つ。観客は移動せずに席で楽しむようだ。2024年に開催予定という。 このようにメタバースの真価はVRに限定したものではなく、現実と相互に作用し合うときに生まれるという意見は多い。
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🔴Q メタバースの未来は? 「ソーシャル・メタバース」 SNS(交流サイト)との世代交代があり得る。より濃密なコミュニケーションが図れる「ソーシャル・メタバース」として人々が過ごす時間が増える。経済取引に伴う決済などを担う技術として、NFT(非代替性トークン)などの先端技術の活用が想定されている。
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VRゴーグルの改良かゴーグルに代わる製品が必要 残る大きな壁は、VRゴーグルの着け心地の悪さだ。重さで首や肩に負担がかかり、乗り物酔いに似た「VR酔い」も起きる。記者は取材中、いずれも体感した。眼鏡やコンタクトレンズ型のVRデバイスが登場すると一気に普及が進むという声もある。 テクノロジーの進展や新サービスの登場はプラスの側面だけではなく、マイナスの作用も引き起こす。
メタバース 幻滅の先に 2023.03.06 p. 019 記事を読んでみて感じたのは、まだ定義が確立されていないということです。私はメタバースについてよく理解していないと認識していましたが、統一された定義ができていないのが現状であることを知ると、理解できていなくても仕方がないと一人で納得していました。
PART 2 日本企業、「ネット敗戦」巻き返しなるか 幻滅の裏で探る商機 狙うはリアルとの共創 一時の熱狂が去り、期待が剝落しつつあるメタバース。その裏で、日本のインフラを担ってきた大手企業が地道に取り組んでいる。平成のネット時代は敗北を喫したが、現実と仮想の共創なら商機ありとの期待がある。
メタバース 幻滅の先に 2023.03.06 p. 020 🔴JR西日本のケース 誰もが使い方を知る鉄道駅は、無限に広がるメタバースでもランドマークになれるとみる
メタバース 幻滅の先に 2023.03.06
新型コロナウィルスの影響がメタバースへの挑戦を決めた背景 JR西日本がメタバースへの挑戦を決めた背景には、新型コロナウイルスの影響があった。感染拡大前の駅は、「説明不要で人が集まる場所」(野々村一志ビジネスデザイン部部長)だったが、外出自粛で一変。鉄道運行の収益だけでなく、駅ビルなど関連収益も細り、「ゼロに何をかけてもゼロになる」という事態に陥った。
メタバース 幻滅の先に 2023.03.06 p. 020 鉄道の集客力に依存しない事業の構築 鉄道の集客力に依存しない事業構築が急務となったJR西日本が、手探りながらに挑んだのがメタバース。だが、2つの想定以上の手応えを得た。一つは「現実とのコラボ」だ。 (中略) もう一つが「未来の先行体験」だ。世界初となる「フルスクリーンホームドア」を現実より半年超早くお披露目した。3ドアの普通車両と、2ドアの特急車両という異なる乗車位置に対し、ドアが稼働して対応できる。
メタバース 幻滅の先に 2023.03.06 p. 021 開発中の人型ロボットを再現 現実の駅でコラボカフェを開業 新型ホームドアを現実より先に設置
日本が世界に負けない道を探る インターネットが発展した平成の30年は、米国企業の寡占を許した。ここ数年は中国の急成長に圧倒され、「ネット敗戦」は色濃い。一方、メタバースはデジタル空間にとどまらず、リアルとの連携に妙味があるとの見方は少なくない。
メタバース 幻滅の先に 2023.03.06 p. 021 「ハイプサイクル」 米調査会社ガートナーの先端技術の期待度を示す「ハイプサイクル」では、日本は世界の先を行く。ある国内金融大手の社員は、「海外のグループ会社に『本社はメタバースに熱心だ』といわれる」と明かす。現実との共創なら、地道な仕事をいとわない日本にも商機があるとの期待の表れだろう。
メタバース 幻滅の先に 2023.03.06 p. 021 ハイプサイクルとは ハイプ・サイクル (英語: hype cycle、ハイプ曲線)は、特定の技術の成熟度、採用度、社会への適用度を示す図である。ガートナー社がこの用語を造り出した。
ハイプ・サイクル Wikipedia
ハイプサイクルについてWikipediaで調べてみました。
ハイプ・サイクル Wikipedia 5つの段階 ハイプ・サイクル Wikipedia
では、JR東日本はどんな施策を行なっているのでしょうか?
🔴JR東日本のケース 常設型メタバースを自社主導で構築 JR西日本と同じく、鉄道事業が柱のJR東日本は、「Beyond Stations構想」を掲げ、交通の拠点という役割を超えた駅の活用を目指す。その一つが、22年3月に山手線31番目の駅としてメタバースに開業した「シン・秋葉原駅」だ。 JR西日本との違いは、他社が主催する期間限定のイベントではなく、常設型のメタバースを自社主導で構築した点にある。JR東日本の鴇澤(ときざわ)良次マーケティング本部マネージャーは、「新しい広告の在り方を考えたとき、メタバースという選択肢が浮かんだ」と話す。
メタバース 幻滅の先に 2023.03.06 p. 021 ⭐JR西日本とJR東日本は、ともにまだ明確な方向性は見出していないと感じました。試行錯誤中なのかもしれません。
🔴東京海上日動のケース アバターによる接客で、詳細な個人情報を明かさずに気軽に保険の相談ができる
メタバース 幻滅の先に 2023.03.06
保険の窓口をアバターを使って再現? シン・秋葉原駅の周囲にはテナントが出店できるスペースを設け、東京海上日動が23年1月に保険相談所を出店して保険商品の販売を始めた。現状だと、駅のポスターをどんな人が何人見たかは分からないが、メタバースなら詳細なデータが得られる。広告の費用対効果を明瞭にできる潜在力がある。
メタバース 幻滅の先に 2023.03.06 pp. 021-022 ⭐辛口の感想を述べると、「お遊びの延長」という気がしました。本当にビジネスに役立てようとしているのか疑問に感じました。
金融業界の方向性 メタバースでは、ブロックチェーンやNFT(非代替性トークン)といった中央集権的な管理者が必要ない技術が席巻する可能性が指摘されている。中央集権的なシステムの代表格である銀行など大手金融機関は、「存在意義を失う恐れがある」(三菱UFJ銀行の担当者)。大きな潮流は変え難いなら、リスクを取って先行者になろうという意志だ。
メタバース 幻滅の先に 2023.03.06 pp 022-023
メタバース 幻滅の先に 2023.03.06
「バーチャル大阪」の教訓 大阪府・市が手掛ける「バーチャル大阪」は、「ハロウィーンなどはにぎわっていたが、普段は過疎になっている」(ある関西企業)。閑古鳥が鳴くメタバースは、時に「箱バース」と皮肉られる。仮想世界の運営側に立てば、メタバースが本格成長したときに「プラットフォーマー」として振る舞うノウハウがたまる。一方で、不振が続けば、「新しいこと」が苦手な大手企業が事業停止を決断するリスクはつきまとう。
メタバース 幻滅の先に 2023.03.06 p. 023
🔴質と敷居のトレードオフ メタバースの課題 メタバースの大きな強みの一つは没入感。VRゴーグルは立体的に表現された仮想空間を体感させる。視覚だけでなく、距離に応じて音の強弱が変化するなど、聴覚も濃密な3次元体験を演出する。 一方で、精緻な仮想体験を追求すれば、VRゴーグルや良好な通信環境、高性能なデバイスが必要になり、来訪する敷居が高くなる。メタも苦戦しているように、VRゴーグルの装着は、利用者に負荷がかかり、心理的ハードルになっている。
メタバース 幻滅の先に 2023.03.06 pp. 023-024
🔴ドコモ、KDDIの全方位戦略
メタバース 幻滅の先に 2023.03.06
通信キャリア大手3社の取り組み 先駆けはKDDI メタバースの担い手として、外せない存在が通信キャリア大手3社だ。3次元のメタバースは大量のトラフィック(通信量)を生み、大容量・低遅延を売りにする高速通信規格「5G」にフィットする。 先駆けたのはKDDIだ。20年5月、東京・渋谷で予定していたアニメとのタイアップイベントがコロナ禍の外出制限で実施できなくなった。そこで仮想空間「バーチャル渋谷」を開業。当初は5月中に終わる予定だったが、渋谷区の商業施設などから出店希望が寄せられ、継続中だ。
メタバース 幻滅の先に 2023.03.06 p. 024
NTTドコモは成功体験の再現を目指す NTTドコモは22年3月、メタバース「XR World」を開設した。10月には、メタバースなどに取り組む子会社、NTTコノキューが始動。iモードが一世を風靡した頃に最前線にいた丸山誠治氏が社長に就任した。丸山氏は、「ドコモはデバイスの質が十分でない頃、メーカーと協力して半導体を開発し、iモードで成功を収めた」と振り返る。成功体験を再現しようと、ソフトとハードの二兎を追う全方位戦略を掲げる。
メタバース 幻滅の先に 2023.03.06 pp. 024-025
ソフトバンクは福岡ソフトバンクホークスの本拠地球場をメタバース化 大手3社の最後、ソフトバンクは仮想空間の運営より、ユースケース(活用法)への関心を強めている。加藤欽一メタバース・NFT部部長は、「現状でメタバースに関心を持つのは、熱心なファン層とデジタルネーティブな若者」と分析。そこで、プロ野球の福岡ソフトバンクホークスの本拠地球場をメタバース化した。
メタバース 幻滅の先に 2023.03.06 p. 025
日本に有利な点とは何か? 日本に有利な点があるとすれば、趣味や嗜好ごとに生まれる小さなコミュニティーを重要視する文化と、メタバースの相性の良さだろう。アニメなどで仮想世界に多くの人が触れてきた親和性もありそうだ。 何より、「次のインターネット」ともいわれるメタバースで“連敗”はできないという野心だ。メタの失速をきっかけに米国全体が停滞する間に、手探りであっても「微速前進」できれば、主導権を握れるかもしれない。
メタバース 幻滅の先に 2023.03.06 p. 025
次回は
PART 3 ゲーム・エンタメだけにあらず 普及のカギは「BtoB」仮想空間で生産性向上 PART 4 社会を変える公器となるか 没入・解放・人間拡張 切り拓く3つの新世界 をご紹介します。
🔷編集後記 今回の特集は、メタバースでした。メタ(旧フェイスブック)のマーク・ザッカーバーグ氏がフェイスブックからメタバースへ軸足を移し、全力で取り組んでいる様子が伺える記事です。
ただし、現状を見るといくつもの課題があり、それらを一つひとつクリアーしていかなければ、ビジネスとして成り立たないのが現実です。
フェイスブックはグーグル同様に「広告」でマネタイズしてきました。 今後は、メタバース上で参加者同士が実際の商取引を行ない、手数料を得るというビジネスを開始することになりそうです。
そのビジネスの中でも「広告」は可能となるでしょう。
今回は、日本企業のメタバースへの取り組みの一部をご紹介しました。 各社の取り組み方は異なりますが、どれが正しく、どれが間違っているという判断は現段階では誰にも言えないと思います。
「日本には日本のやり方がある」というのも一つの考え方です。 ただし、過去NTTドコモが一世を風靡した「i-mode」がガラパゴス化し、世界に広まらなかったという苦い教訓を糧にして、日本発の「メタバース」を世界に知らしめて欲しいと心から願っています。
🔴情報源はできるだけ多く持つ 海外情報を入手しようとすると、英語力が必須であったり、膨大な情報がクラウドサービスを利用すれば手に入りますが、それでも非公開情報はいくらでもあります。そうすると文献に当たることが必要になります。
日本の国立国会図書館のウェブサイト や米国の議会図書館のウェブサイト に当たってみるのも良いかもしれません。
もちろん、ロイター やブルームバーグ などの報道機関の日本版(PCやアプリ)がありますから、これらを利活用すればある程度の情報を収集することは可能です。これらのLINEアプリもありますので、情報を収集することはできます。
あるいは『日経ビジネス』 や『東洋経済』 、『ダイヤモンド』 、『プレジデント』 などの雑誌やウェブ版から情報収集することもできます。これらの雑誌やウェブ版の購読をお勧めします。
あとは自分で、関心のあることに絞って検索したり、ChatGPT やBard に質問してみて、知見を広めるのが良いでしょう。
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