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稲盛和夫 「成功」と「失敗」の法則 第2章 思いの力 動機善なりや、私心なかりしか 第6回

稲盛和夫 「成功」と「失敗」の法則 第2章 思いの力 動機善なりや、私心なかりしか 第6回

はじめに

経営の神様といえば、パナソニック(旧松下電器産業)の創業者、松下幸之助氏ですが、もうひとりの経営の神様といえば稲盛和夫氏と私は考えています。

本著『「成功」と「失敗」の法則』が出版されたのは、今から15年前の2008年9月24日のことです。

平成20年9月24日第1刷発行
致知出版社


実を言いますと、この本をいつ購入したのか覚えていません。そればかりか、積読つんどくでつい最近まで読んでいませんでした。

たまたま、捜し物をしていた時、この本に気づき、手に取り読んでみることにしました。

読み出すと、腹落ちすることばかりが書かれていました。
今までにも、稲盛和夫氏の著作を何冊か読んだことがあります。

例えば、下記のような本です。


これらの著作物に共通することは、稲盛氏の一貫した考え方である、「人間を磨く」ことを絶え間なく続ける、ということです。

これは生涯を通じて行うことです。ですから一朝一夕で結果が出るものではありません。


稲盛和夫 「成功」と「失敗」の法則

第1章 人生の目的

第2章 思いの力

第3章 自らを慎む

第4章 道をひらくもの

章立ての順序でエッセンスをお伝えしていきます。
特に印象に残った言葉を抜粋します。
稲盛氏の言葉の真意をじっくり考えてみましょう。


第2章 思いの力

動機善なりや、私心なかりしか


少年院からの感想文

 ある出版社に頼まれて、『君の思いは必ず実現する』という本を上梓じょうししました。この本は、「人生に迷ったとき、ぜひこの本を読んでください」と帯に記したように、生きる指針を見失いがちな、現代の青少年向けに書き下ろしたものです。 

稲盛和夫 「成功」と「失敗」の法則  p.46           


 私は以前から、不幸な境遇にある子どもたちにも、ぜひ素晴らしい人生を送ってほしいと考えていましたので、刊行後、全国の少年院や養護施設等に寄贈させていただきました。
 すると、全国の少年院から、院長先生の丁重な御礼状とともに、在院生である少年少女たちの読書感想文がいくつも送られてきました。丁寧につづられた、その一つひとつの感想文に目を通した私は、思わず胸が詰まり、目頭が熱くなる思いを禁じることができませんでした。

稲盛和夫 「成功」と「失敗」の法則  pp.46-7          


「逆境にも負けず、前向きにひたむきに努力し継続すれば、価値のある人間になれることを知りました」
「一度きりの人生、一所懸命生きていきたいって、心からそう思えるようになりました」
 と、更生の日々を送る少年少女たちがその心境を綴っているのです。 

稲盛和夫 「成功」と「失敗」の法則  p.47              


「思い」を改めることによって、人生をよりよく生きることができる_____つまり本のタイトルにあるように、「思いは必ず実現する」ということを、これからの日本を担う若い人たちに、ぜひ理解してほしかったのです。 

稲盛和夫 「成功」と「失敗」の法則  p.48              

 

「思い」が持つ強大な力

 一般には、「思い」はそれほど強い力を持っているとは考えられていません。しかし、「思い」は、私たちの想像を超えた、強大な力を持っているのです。
 ただし、その「思い」とは、美しく、素直で、明るく、邪心がない、つまり一言で言えば、純粋な「思い」でなければなりません。
 私たちはときに、そのような純粋な「思い」を持った人が、難しい仕事を簡単に成し遂げてしまう様を見聞きします。 

稲盛和夫 「成功」と「失敗」の法則  pp.48-9            


「他に善かれかし」と願う、美しい「思い」には、周囲はもちろん天も味方し、成功へと導かれる。一方、いくら知性を駆使し、策をろうしても、自分だけよければいいという低次元の「思い」がベースにあるなら、周囲の協力や天の助けも得られず、様々な障害に遭遇し、挫折してしまうのです。 

稲盛和夫 「成功」と「失敗」の法則  pp.49-50           


思いに不純なものはないか

 二十年ほど前に第二電電(現KDDI)を始めるときのことです。国民のため通信料金の低減を図ろうとして、通信事業への参入を意図したものの、私は半年間にわたり、自分の「思い」がどのようなものかを問い続けました。「動機善なりや、私心なかりしか」という言葉に込めて、第二電電起業の「思い」に「不純なものはないのか」と、自分に厳しく問うていったのです。

稲盛和夫 「成功」と「失敗」の法則  p.50           


 私は、感想文を綴った少年院の少年少女たちのこれからの人生が、幸多きものになることを信じています。なぜなら、彼らはいま、心から改心し、未来に明るい夢を描き、その実現のためにいかなる苦労もいとわない覚悟を決めているからです。そのような純粋な「思い」は、いかなる障害をも克服する比類なきパワーをもって、夢の実現へと導いてくれるはずです。

稲盛和夫 「成功」と「失敗」の法則  p.51           



✒ 編集後記

『「成功」と「失敗」の法則』は、稲盛和夫氏から私たちへの熱いメッセージです。稲盛氏自身が、人間として、経営者として、数多の成功体験、失敗体験を通じて身につけた不変の法則のエッセンスを述べた書籍です。

頭で考えただけでなく、実践を通じて身につけたものです。

稲盛氏の他の書籍には「利他」「敬天愛人」などの言葉が頻繁に出てきます。どれでも良いので、一度手にとってページをめくってみてください。
何かヒントが得られるかもしれません。

🔷「『動機善なりや、私心なかりしか』という言葉に込めて、第二電電起業の『思い』に『不純なものはないのか』と、自分に厳しく問うていったのです」

「動機善なりや、私心なかりしか」という言葉は、稲盛さんの本の中に頻繁に出てくる言葉です。

自分だけ良ければいいとか、自分だけ儲かればいいというエゴは誰の心にも芽生えることがあるでしょう。しかし、そこで止まってしまったら、いつまで経っても人間性を高めることはできません。

自分に厳しくすることは非常に難しいことですし、よほど覚悟しなければ継続することはできません。

それでも、自問自答し、その結果、「自分はこうすることに決めた!」と堂々と人前で言え、実践することができるようになったら素晴らしいと思います。

私は、まだまだその域には達していません。日々研鑽を重ねていくしかありません。


日経ビジネス(2022.09.12号)で稲盛和夫氏を特集していました。

この記事の内容を3回にわたってnoteに投稿しましたので、お時間がありましたら、ご覧ください。


✅稲盛経営の真髄

日経ビジネスは2022年9月26日号から2022年12月12日号まで、12回にわたって「稲盛和夫の経営12ヵ条」を集中連載しました。

前回に引き続き「稲盛和夫の経営12ヵ条」の概要2条ずつご紹介していきます。

尚、「本連載は『経営12ヵ条 経営者として貫くべきこと』(稲盛和夫 著、日経BP 日本経済新聞出版)の内容を抜粋したものです。『稲盛和夫の実学』『アメーバ経営』に続く「稲盛経営3部作」、ここに完結」と書かれています。

第9回 過ちを潔く認めて改める結城

経営12ヵ条 第9条
勇気をもって事に当たる
卑怯な振る舞いがあってはならない

「経営者やリーダーにとって自分がおかした過ちを潔く認めて改めることは、勇気のなかでも一番大切なことです。失敗した場合、たいていの人は、言い逃れをしたり言い訳したりしますが、部下から見ればそれは見苦しいものです。自分が失敗したことを素直に認めて、過ちを改めることは、非常に勇気の要ることですが、これが一番大切な勇気なのです」

「たとえば、過ちを詫びもしないで、平然としているような卑怯な振る舞いをしていると、部下はリーダーを尊敬するどころか、軽蔑するでしょう。たった一度でも、そうした卑怯な振る舞いをして部下の信頼を失えば、後々そのリーダーがどんな立派なことを言おうと、部下はその言葉を信用せず、ついてきてはくれません」

「過ちがあれば潔く認めて詫び、決して言い逃れをしてはなりません。部下の前で言い逃れをし、理屈にもならない理屈をこね回して、自分の正当性を示そうとするリーダーがいますが、これは卑怯な振る舞いです」

「勇気をもって事に当たる前に、まず、卑怯な振る舞いがあってはならないということが非常に大事なのです」

「決めたことがすべてよい結果を生み出すとは限りません。何かをなせば、すべてにおいて作用と反作用があります。いいことだと思って決めても、それを決めたことで起こる反作用が必ずあるわけです」

「足して2で割ったような中途半端な判断では、決してよい結果をもたらさないのです。
そのためにも『自分は正しいことをやっているのだ』という信念がなければなりません。後ろめたさがあったのでは、勇気が出てこないからです。『自分自身が正義を貫いている』という信念があってこそ、真の勇気が湧いてくると私は思っています」

要点
「人間として何が正しいのか」という原理原則を貫けているか
穏便に済ませること、波風を立てないことを判断の基準にしていないか
経営者の勇気のなさが伝染し、従業員たちが妥協をよしとしていないか
知識を信念にまで高めた「見識」を、さらに勇気を加えた「胆識」を備えているか
魂の奥底から発する「勇気」をもって、正しい判断を下しているか

(日経ビジネス 2022.11.21『稲盛和夫の経営12ヵ条』pp.070-2)


第10回 傑出した技術力を最初から持つ会社などない

経営12ヵ条 第10条
常に創造的な仕事をする
今日よりも明日、明日よりも明後日と、
常に改良改善を絶え間なく続ける。
創意工夫を重ねる

「米国を代表するジャーナリストで、ピューリッツァー賞を受賞したデイビッド・ハルバースタムさんはその著書『ネクスト・センチュリー』(阪急コミュニケーションズ)で1章を割いて私について執筆してくれています。その冒頭で彼は『次にやりたいことは、私たちには決してできないと人から言われたものだ』という私の言葉を引用しています」

「傑出した技術力を最初から持っている中小企業など、ひとつもないはずです。常に創造的な仕事を心がけ、今日よりも明日、明日よりも明後日と改良改善をしているかどうかで、独創的な経営ができるかどうかが決まってくるのです」

「新しい開発をするには、『楽観的に構想し、悲観的に計画し、楽観的に実行する』ことが必要です。これは一見矛盾しているようですが、そうではありません」

「まず、『こういうものをやりたい』と思うときは、楽観的に考えるのです。『それは難しい。それは困難だ』というように悲観的に考えてはいけません」

「しかし、実際に具体的な開発計画を立てるときには、非常に厳しい現実を直視し、開発のどこが難しいのかを認識して、悲観的になるべきです」

「そのうえで、『よし、これでやろう』と開発を始めたときには、難しいことは考えず、『絶対やれるはずだ』と非常に楽観的に進めていくことが、開発をするときの心構えです」

「実行段階で悲観的になっては、訪れるであろう、さまざまな困難を乗り越えることができません。必ずできるという信念の下、楽観的に進めていくことが重要です」

要点
「創造的な仕事」を心がけ、常に改良改善をしているか
日々の改善や努力を積み重ねた、独創的な事業の展開を目指しているか
従業員が常に創造的な仕事をするよう、経営者自らが範を示しているか
いまの力で何ができるかではなく、能力を未来進行形でとらえているか
未来のある一点を見定め、日々間断なく努力を続けているか

(日経ビジネス 2022.11.28『稲盛和夫の経営12ヵ条』pp.066-8)



<著者略歴 『「成功」と「失敗」の法則』から>

昭和7年、鹿児島県生まれ。
鹿児島大学工学部卒業。
34年、京都セラミック株式会社(現京セラ)を設立。
社長、会長を経て、平成9年より名誉会長を務める。
昭和59年には第二電電(現KDDI)を設立、会長に就任。
平成13年より最高顧問。
このほか、昭和59年に稲盛財団設立、「京都賞」を創設。
毎年、人類社会の進歩発展に功績のあった方々を顕彰している。
また、若手経営者のために経営塾「盛和塾」の塾長として、後進の育成に心血を注ぐ。
主な著書に『人生と経営』『何のために生きるのか』(ともに致知出版社)、『実学・経営問答 人を生かす』(日本経済新聞出版社)、『人生の王道』(日経BP社)、『生き方』(サンマーク出版)、『成功への情熱』(PHP研究所)などがある。 

著者略歴補足 (日経ビジネス 2022年9月26日号)

2022年8月、90歳で逝去。
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