【回想録 由美子のいなくなった夏 亡き最愛の妻への想い 第70回】
🔷 「がん患者との接し方」を掲載します。🔷
『由美子のいなくなった夏 亡き最愛の妻への想い』
(ハードカバー 四六版 モノクロ264ページ)
2016年1月25日 発行
著者 藤巻 隆
発行所 ブイツーソリューション
✍『由美子のいなくなった夏 亡き最愛の妻への想い』(第70回)✍
がん患者との接し方
何もできなかった私を力づけてくれた本
『「がん」になったら真っ先に読む本』(森津純子 著)
病室で、由美子を見守ることしかできなかった私は、どんなことができるのか思案にくれていました。
ある日、以前購入したまま読んでいなかった本を読んでみることにしました。
その本のタイトルは、『「がん」になったら真っ先に読む本』(森津純子 KKベストセラーズ 二〇〇八年二月十九日 初版第一刷)でした。
森津さんはホスピスに勤務したことのある医師です。体験に基づいて、周囲の人間はがん患者にどのように接したらよいのか説明しています。その一部をご紹介します。
何もせず、そばにいること
「実は、プロがやっている傷の処置やカウンセリングといった仕事以上に『もっと大変な仕事』を家族はまかされています。それは、『ただ何もせず、そばにいること』です。
『何もせず、そばにいること』は患者さんにとって最高に心地よい看護であり、また家族にとってはいちばんむずかしい看護でもあるのです。実は、看護する人間にとっては、何もしないでそばにいるより、あれこれ世話を焼いたり、じっと見つめているほうが、『しっかり看護した』ような気がして気持ちが楽なんですね」
(前掲書 一七一ページ)
この文章を読んだ時、そばにいるだけで何もできなかった私は、救われたような気持ちになりました。
実は、由美子のそばで、気づかれないようにそっとこの本を読んでいました。由美子には、「本を読んでいるね」と声をかけただけでした。
「家族は何もできなくて当たり前なんだ」と開き直り、諦観にも似た気持ちを抱きました。こちらからあれこれと声をかけることはせず、「してほしいことがあれば何でも言ってくれ」と由美子に伝えました。
由美子もそのほうが良かったらしく、ゆっくりと頷いていました。私の願いは、容態の急変はできるだけ先延ばしして欲しい、ということだけでした。
(PP.181-182)
➳ 編集後記
第70回は「がん患者との接し方」を書きました。
病室を訪問するたびに、私ができることは何もないのだろうか、いやきっとあると自問自答する機会が増えていきました。
しかし、森津さんの本を読み、「『何もせず、そばにいること』は患者さんにとって最高に心地よい看護であり、また家族にとってはいちばんむずかしい看護でもあるのです」という記述に救われました。
サポートしていただけると嬉しいです。 サポートしていただいたお金は、投稿のための資料購入代金に充てさせていただきます。