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チャイノベーション 2023 中国 技術覇権の今 2023.01.16 1/3

日経ビジネスの特集記事 55

チャイノベーション 2023 中国 技術覇権の今 2023.01.16 1/3

<このページでは、『日経ビジネス』の特集記事の概要紹介と、管理人のコメントを掲載しています>




今、世界はロシア・ウクライナ紛争の動向よりも、台湾を含む米中対立の行方に注目が集まっていると考えられます。

日本は高みの見物を決め込むわけにはいきません。
ロシア・ウクライナ紛争の影響による液化天然ガス(LNG)等の供給確保に動いているはずです。また、米中台問題は日本にも即影響が及ぶ可能性が高く、緊急事態に備えておかなくてはなりません。

中国は人口減に直面し、経済の実態は当局の発表の60%程度という推測をする専門家もいます。本当の姿は分かりません。人口にしても13億人と言われてきましたが、実際には1億人くらい少ないという専門家の話もあります。

そのような中国ですが、

技術力はどの分野に及び、どこまで競争力を高めたのか


というのが今週号のテーマです。

チャイノベーション 2023 中国 技術覇権の今 2023.01.16 1/3

CONTENTS

PART 1 コロナ禍でも研究開発の手緩めず 知財分析で浮き彫り 中国EVの躍進の秘訣

PART 2 米中対立激化、最重要産業「半導体」の今 米規制で深刻な打撃も パワー半導体に活路

PART 3 プリンター、工作機械、医療機器…… 「製造強国」実現へ 禁じても辞さぬ執念

COLUMN 中国スタートアップ「冬の時代」の生き残り方 医療・メタバースに脚光

PART 4 ゼロコロナ崩壊で浮かび上がるチャイナリスク 「予見不可能な国」との付き合い方


初回は、PART 1 コロナ禍でも研究開発の手緩めず 知財分析で浮き彫り 中国EVの躍進の秘訣 を取り上げます。

EV(電気自動車)の需要は米国や日本ばかりか欧州でも広がりつつあります。中国も例外ではなく、自前のEVメーカーを育成し、国内だけでなく海外へ輸出しようと考えています。今後は供給能力による優劣で勝敗が決まるでしょう。

ただし、中国は単にEVを開発し、国内外で販売することだけに心血を注いでいるわけではありません。その背景にはIP(Intellectual Property=知財)に重点を置いていることが見て取れます。

まず、EVに関連した中国の現状に光を当ててみましょう。

PART 1 コロナ禍でも研究開発の手緩めず 知財分析で浮き彫り 中国EVの躍進の秘訣

今日(2023/06/14)、トヨタ自動車がこれからのEVに欠かせないバッテリーとして「全固体電池」を2027年にも実用化すると発表しました。

テスラにリチウムイオン電池を供給しているパナソニックにも影響がありそうなニュースでした。


EVの問題点

EVの泣きどころは「満充電」になるまでに、最低でも数時間はかかるという点。万が一外出先でバッテリー切れになったら走行再開までに時間がかかるのは、地味だが大きなストレスだ。

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中国の自動車メーカーはご存じですか?
私はまったくもって疎く、初めて聞くメーカー名が多くありました。

中国ではEVの開発には2系統あります。
1つは、世界中で行われている充電式バッテリーを搭載するバッテリー車載のEVです。

そしてもう1つは、電池そのものを「電池交換ステーション」で短時間で交換するというEVです。

今後、全固体電池を搭載したEVと、今まで通りのリチウムイオン電池を搭載したEV,そして電池交換ステーションで電池そのものを交換するEVでどれが主流になるでしょうか?

もちろん、この他に水素燃料を使う車の開発も行われています。実用化には時間がかかりそうですが、脱炭素という観点から見ると、燃やしても水しかでてこないため環境に適していることは頷けます。

電池交換ステーション

所要時間5分程度で満充電の電池に交換できるなら、ガソリン車をスタンドで満タンにするのとほぼ同じ感覚だ。電池交換ステーションが拡充すれば、家でも充電できる分、むしろEVの方に優位性が出るかもしれない。

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NIOという中国の自動車メーカー

2014年に設立されたNIO。16年に第1弾となるスポーツ車を発表し、18年にSUV型のEVの量産に乗り出している。
同社の強みは設計や研究開発に資源を投じている点。上海など中国だけでなく、米サンノゼや英オックスフォードなど世界に研究開発拠点を設けている。22年12月には創業から8年で出荷台数が30万台を突破した。1台当たりの単価は44万元(約880万円)と高額で、デザイン性の高さもあり「中国版テスラ」の異名を持つ。

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NIOが支持を集める理由

電池交換サービスは、そんなNIOが支持を集める理由の一つになっている。20年8月に車載電池最大手の中国・寧徳時代新能源科技(CATL)と、「BaaS(バッテリー・アズ・ア・サービス)」と呼ぶ交換サービスを発表した。電池分の価格が値引きされ、月額の利用料を支払う。標準走行となる75キロワット時(kWh)の電池の場合、7万元の値引きとなり、月額の利用料金は1060元となる。利便性と価格の両面の効果で、「直近では交換サービスを選ぶ購入者は過半を超えている」と、NIOの李斌CEO(最高経営責任者)は話す。

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驚くべきことは、NIOが保有する特許件数です。

膨大な特許件数

現在の設備は第2世代で、1400件以上の特許を保有しているという。中国における電池交換ステーションの数は昨年12月末時点で1286カ所になった。23年3月からは第3世代となる設備を投入予定で、李斌CEOは「交換スピードはこれまでから2割短縮できる」と、さらなる普及に自信を見せる。

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次の図表をご覧ください。

中国勢は電池制御や電池交換式の要素技術に注力
●EVなど省エネ車関連のグローバル特許出願件数トップ21社を比較分析
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何しろ中国には巨大な市場があります。
しかし、海外にはその実態がよく把握できていませんでした。
EVにしても同様です。

知財や技術

巨大な市場を背景に、中国のEV産業は独自の進化を遂げている。最近は日米欧など海外市場への進出も盛んだ。だが、日米欧の自動車産業と比較して、知財や技術といった地力の部分がどこまで成長したのかは、よく分かっていなかった。

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そこで、日経ビジネスは「特許分析を手掛ける知財ランドスケープ(東京・中央)の協力を得て、EVなど省エネ車関連のグローバル特許出願件数を分析した」そうです。

その結果、明らかになったことがありました。

注目すべきは4~6位に比亜迪(BYD)などの中国勢が食い込んだこと

9年4月から2年間の出願数を調べたところ、特許数ではトヨタ自動車、韓国・現代自動車、ホンダがトップ3を占めた。
注目すべきは4~6位に比亜迪(BYD)、奥動新能源汽車科技、北京汽車傘下でEV大手の北京新能源汽車といった中国勢が食い込んだことだ。独ボッシュや独アウディ、米フォード、独フォルクスワーゲンなどを上回る数字だ。8位にも、浙江吉利控股集団が名を連ねている。

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BYDというメーカー名は耳にしたことがありました。ですが、詳しくは知りませんでした。

BYDという名の自動車メーカー

BYDは1995年に創業した中国EV最大手で、2003年から自動車に参入した。23年には日本で乗用EVの販売を始めるなど海外展開を加速させている。電池メーカーとして創業した同社は「電池制御」を中心に、積極的に特許を出願している。自社開発の電池を車体と一体で開発できるのが強みで、薄い電池を床下に緻密に敷き詰めてエネルギー密度を高めている。トヨタが22年10月に発表した中国投入モデルのEV「bZ3」では、BYDの電池技術を採用した。トヨタの関係者は「BYDのブレード(刀身型)バッテリーは、よく考えられている」と称賛する。

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チャイノベーション 2023 中国 技術覇権の今 2023.01.16


上の図表の右側をご覧ください。
中国勢の特許出願件数の伸び率は目を見張るものがあります。

日本や韓国の自動車メーカーと中国の自動車メーカーの比較が記載されています。

トヨタと現代自動車、ホンダの上位3社は、電池からの電力でモーターを駆動する「EV基本機能」や「ハイブリッド車」「電池制御」の出願数が多かった。
一方、BYDや北京新能源汽車、浙江吉利、蜂巣能源科技(14位)は「電池制御」や「電池交換式」「電池モジュール」の出願数が多い。こうした電池関連の技術分野の一部では、日米欧韓に対抗もしくはしのぐだけの知財面での厚みを持ち始めているようだ。

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なぜ中国は知財や技術を国産化しなければならなくなったのでしょうか?

その理由は____

最大の要因は米中対立で分断が深まる中、中国国内では知財や技術を国産化しなければ生き残れないという危機感が強くなったことだろう。

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注目すべき変化があります。それはファーウェイです。

通信大手のファーウェイ、車載分野にシフト

広東省深圳市のファーウェイ本社近くにある同社の旗艦店。その横側には、関係者のみが知るショールームの入り口が存在する。22年6月にオープンした「IAS(インテリジェントオートモーティブソリューション)体験センター」だ。
同12月、そのセンターに入ることを許された取材班を出迎えたのは、透明の車体内部にファーウェイが自社開発した車載部品が搭載された展示だった。EV関連では電気駆動モーターやバッテリー制御ユニット、ギアボックスなどを一体化した基幹部品、自動運転関連では独自OS「鴻蒙(ハーモニー)」や自社開発の半導体を搭載した制御ユニット、高性能センサーの「LiDAR(ライダー)」なども並べられていた。

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広東省深圳市の本社近くにある旗艦店の
横側からセンターに入れる
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電池の発熱を暖房に利用する技術などを披露
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ファーウェイ・インサイド

ファーウェイは自らが自動車メーカーになるわけではない。「ファーウェイ・インサイド」を標榜し、黒子の存在として開発した技術をプラットフォームとして提供する考えだ。北京汽車をはじめ、重慶長安汽車、賽力斯集団など中国自動車メーカーと提携済み。海外大手との提携も目指しているもようだ。

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どこかで聞いたことがあるフレーズに似ていますね。
そうです。

「インテル、入ってる!」(Intel Inside!)


ファーウェイにとっての最重要事項は研究開発です。

R&D(研究開発)はイノベーションを生み出す源泉

研究開発はイノベーションを生み出す源泉だ。売上高に占める研究開発費用は少なくとも1割以上であり上限はない。21年は22.4%で、今後も増やしていく」(グローバルでの特許戦略を担当する沈弘飛・法務部副総裁)。米国の制裁で苦しむ中でも、ファーウェイに研究開発への投資を緩める様子はない。

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それにしても驚いたことは、よくここまで日経ビジネスの現地スタッフと取材班に対してファーウェイが関連施設の内部を公開したことです。

よほど自信があるのでしょう。ちょっとやそっと観たところで真似することはできないと考えているのかもしれませんね。

さらに言えば、日経ビジネスの現地スタッフは、ファーウェイを始め中国の現地法人に信頼されているということなのかもしれません。

そうだとすれば、長年にわたって人脈を築き上げてきた実績がものを言っているのです。

中国は中国共産党一党の独裁国家です。習近平主席に権力が集中し、習主席の命令一下直ちに行動を起こさなくてはならない堅牢な体制が出来上がっています。中国共産党は中国という国家より上位に位置します。

企業の多くは国営であり、習主席によってコントロールされていると言っても過言ではないでしょう。

その意味で、日経ビジネスが指摘する、次の点は驚くことではないはずです。

技術躍進の裏に産官学連携

中国のEV産業躍進の背景に、産官学の密接な連携があることも見逃せない。中国では、ほとんどの大学は国立だ。企業の研究開発を、政府とアカデミアがバックアップする体制が構築されているのだ。

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EVにとって高性能バッテリーは極めて重要なパーツです。短時間で充電でき、1回の充電で長距離を走行できる性能を持つバッテリーの開発競争は、各国でしのぎを削っています。

電気自動車国家工学研究所上海センター

象徴的な組織が、上海市の浦東地区にある電気自動車国家工学研究所上海センターだ。北京理工大学が08年に設立したEVの国家研究所が母体となる形で、18年9月に開業した。
(中略)
上海センターは、EVに使われる電池や電気回路といったコア部品から完成車まで、信頼性や性能の検査や検査方法の開発を手掛けている。完成車メーカーや電池メーカーなどの検査を支援するだけではなく、得られたデータを分析し対策などをコンサルティングしている。

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記事をもう少し詳しく読んでみましょう。

電気自動車国家工学研究所上海センターの役割

上海センターでは、3カ所の拠点でEV関連の検査が可能。その中で最大の施設に足を踏み入れると、数多くの検査装置が並ぶ光景が広がる。電池の場合、高温や低温での貯蔵試験、充放電の耐久性、ガスによる腐食など200以上の試験ができるという。中国の広大な国土に対応するため、標高5000mを想定した低気圧環境下での信頼性試験設備を備えるほか、別の拠点では電池の爆発試験もできる。

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電気自動車国家工学研究所上海センターは多くの設備でEV開発を支援
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日本にも同様な「研究開発センター」はあるのでしょうか?

日本では、こうした設備は完成車メーカーや電池メーカーが独自で構築する必要がある。パナソニックやトヨタで車載事業に携わり、現在は同センターの特別顧問を務める辻村春樹氏は「ここまでの設備がそろっている日本企業はほぼない。メーカーは検査設備の投資が不要となり、研究開発だけに投資を振り向けられる」と話す。

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pp. 014-015


上海センターの顧客

現在、上海センターの顧客にはBYDやNIO、CATLなどの中国の完成車や電池関連企業に加えて、米テスラやアウディ、独BMWといった欧米の完成車メーカーが名を連ねる。まだ日本企業の名前はなく、「EVの投資拡大が進む中、日本企業も積極的に参加してもらいたい」と馬氏は話す。

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*馬氏=上海センターを運営する企業の総経理を務める馬雲氏


以上のことから分かるのは次のようなことです。

優秀な人材が集まる循環がEV産業で形成されている

国家のバックアップを受けながら、民間企業が巨大市場に向けて旺盛な投資を続け、優秀な人材が集まる循環がEV産業で形成されている

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次回は

PART 2 米中対立激化、最重要産業「半導体」の今 米規制で深刻な打撃も パワー半導体に活路

PART 3 プリンター、工作機械、医療機器…… 「製造強国」実現へ 禁じても辞さぬ執念


を取り上げます。


🔷編集後記

中国では一体何が起きているのか、その真実が報道されることはあまりないと考えています。

日本企業から派遣された人間が、中国企業の重要人物と関係が深くなりすぎると「産業スパイ」の嫌疑をかけられ、当局によって拘束されることは稀ではありません。それはメディアにおいても同様です。

軍事施設や国の将来を担う産業施設の内部を知ろうとすれば、規制がかかるでしょう。それは中国に限った話ではありません。国家機密に属することだからです。

特許などの知財(IP=知的財産権)の重要さは、これから一層高まることでしょう。
知財は自社の製品を他社から真似されないように守るだけでなく、「金になる権利」でもあります。特許料を請求できます。


知財に関する質問をBing AIにしてみました。
何か少しでもあなたのお役に立てればよいのですが。


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