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大前研一 名言集 『ロウアーミドルの衝撃』(20)

『ロウアーミドルの衝撃』(20)

「自分のことを中流」と考える日本人が、かつて多く存在しました。私自身もその一人でした。

しかし、いまや上流と下流だけといった二極分化の様相を呈しています。

派遣社員の首切り、正社員の激減、給与、賞与の大幅削減など従業員には逆風が吹き荒れています。

そうした現況を踏まえて、ロウアーミドル(中流以下)という概念を示しつつ、生き抜く指針を提示している本が『ロウアーミドルの衝撃』(発売日 ‏ : ‎ 2006/1/26です。

現実から逃避せず、現実を直視し、少しでも明るい未来像を描けるようになりたいものです。
 
 

当たり前のことだが、所得を保障されると誰も働かなくなってしまうのだ


漁業関係者に対しても同様で、所得保障によって漁をしなくても収入が得られる仕組みが検討されている。海外で漁師の所得保障をしている例としては、カナダのニューファンドランド島の漁がある。

ここで獲れるサケはアトランティック・サーモンとして有名だが、時化(しけ)が多いため生活保障のために週二日だけ漁に出れば一週間分の収入を補償する制度を導入した。

その結果、漁師たちは最低限の日数しか漁に出なくなり、漁獲高が激減。今では太平洋(パシフィック)に面したチリからサケを輸入して、アトランティック・サーモンの名をつけて売っている。

当たり前のことだが、所得を保障されると誰も働かなくなってしまうのだ

『ロウアーミドルの衝撃』 大前研一の名言 1 〈304〉                              



一般のサラリーマンはリストラされたときの補償はないし、経営者も会社が経営破綻したらおしまいで、保障などまったくない
銀行に個人保証をしてしまった経営者は、自宅さえも奪われて追い立てられている


かたや一般のサラリーマンはリストラされたときの補償はないし、経営者も会社が経営破綻したらおしまいで、保障などまったくない

いや、それどころではない。銀行に個人保証をしてしまった経営者は、自宅さえも奪われて追い立てられている

一方、無責任に貸しまくった銀行は、公的資金とゼロ金利で手厚く守られているのである。

『ロウアーミドルの衝撃』 大前研一の名言 2 〈305                             
                                  
         







債務が膨れ上がった原因は、歳入が減っているにもかかわらず、政府消費支出が増え続けていることにある


日本政府の債務残高は、政府短期債務、財投債、地方・中央政府債務を合計すると2004年度で1033兆円に達している。これに対して税収はたった44兆円で、歳出は82兆円(うち国債費が20兆円)もある。

一般家庭にたとえれば、1億円以上の借金を抱え込んでいる年収440万円の人が、利子の支払いも含めて年間820万円も使っているようなものだ。

これだけ債務が膨れ上がった原因は、歳入が減っているにもかかわらず、政府消費支出が増え続けていることにある

『ロウアーミドルの衝撃』 大前研一の名言 3 〈306〉                                                                     



➳ 編集後記

ロウアーミドル(中流以下)という概念を示しつつ、生き抜く指針を提示している本が『ロウアーミドルの衝撃』です。


🔶 大前氏は自分で考え出したことを自ら実践し、検証しています。仮説と検証を繰り返す行動の人です。

Think before you leap.(翔ぶ前に考えよ)という諺がありますが、Leap before you think.(考える前に翔べ)もあります。
あれこれ考えて、難しそうだからとか面倒くさそうだからやめようでは成長しません。
まず、やってみるという姿勢が大切です。


大前研一氏は、常に物事の本質を述べています。洞察力が素晴らしいと思います。私は、ハウツーものは、その内容がすぐに陳腐化するので読みません。


➔ 大前氏の今回の言葉も、私たちが忘れがちな重要なことに気づかせてくれます。

🔷 最近では全く話題に上らなくなりましたが、日本はODA(Official Development Assistance、政府開発援助)を長年行ってきました。

莫大な金額です。

円借款という名目で、お金を発展途上国に与えたわけですが、その国の上層部がほとんどを私物化して、国民のために使わなかったことが明るみに出ました。

また、このようなこともありました。
技術援助を行いにアジア諸国へ派遣されたはずでしたが、魚類を地元民に手渡しました。地元民は働いていませんでした。

地元民はたいそう喜びました。
すぐに料理して、食べてしまったのです。

食べ物がなくなると、地元民はもとのように、何もしませんでした。

また、魚類をもらえると思っていたのです。
そこで、日本人は魚を釣って渡したのです。

どこがおかしいでしょうか?
技術指導に派遣されたのであれば、「魚の釣り方」を教え、自力で生計を立てられるように、しなければならなかったのです。

保証された生活をしていると、自ら活動したり、働かなくなるなるという例です。

農業指導においても同様のことが行われたことがありました。

農産物の育て方を教える代わりに、採れた農産物を渡していたのです。

さすがに、今ではこのようなことは行われていないはずですが。

国は金を渡したら、その先はどうなっているのか、確かめることをしてこなかったのです。

ODAには、そのような歴史がありました。

ODAの支出額を調べてみました。
予想をはるかに超える莫大な金額でした。
桁が違うのではないかと、自分の目を疑いました。

まず、1999~2008年のODA支出総額は、
103,906百万ドル(約10兆4000億円)です。

歴年            百万ドル  
1999-2008年       103,906
2009         16,451
2010         18,865
2011         19,992
2012         18,662
2013         22,732

 計         200,608 (約20兆円) 


外務省 国際協力 政府開発援助 ODAホームページ
主要援助国のODA実績の推移(支出総額ベース)
を基に作成



⭐ 参考になるデータは下記のサイトでご確認ください。


魚の釣り方


🔶 政府の債務残高は約1,460兆円(2022年現在)に達しています。
大前氏がこの本を書いた時点では「2004年度で1033兆円」でした。

約18年で400兆円以上増加していて、毎年20兆円以上増加していることになります。

驚きと同時に無策さに呆れてしまいますね。誰も責任を取りません。

問題を先延ばししているのです。責任逃れです。

債務残高の推移は次のサイトをご覧ください。右肩上がりに増加していることがひと目でわかります。

日本の政府総債務残高の推移

⭐ 出典元: 世界経済のネタ帳 最終更新日:2022年4月21日 

ここでの重要なポイントは、あくまで政府債務であって、国の借金ではないということです。

国の借金というのは間違い 政府の負債





大前氏は1995年の都知事選に敗戦後、『大前研一 敗戦記』を上梓しました。




🖊 大前氏の著作を読むと、いつも知的刺激を受けます。
数十年前に出版された本であっても、大前氏の先見の明や慧眼に驚かされます。

『企業参謀』(1985/10/8 講談社という本に出会ったとき、日本にもこんなに凄い人がいるのか、と驚嘆、感嘆したものです。

それ以降、大前氏の著作を数多く読みました。

『企業参謀』が好評であったため、『続・企業参謀』(‎ 1986/2/7 講談社が出版され、その後合本版『企業参謀―戦略的思考とはなにか』(1999/11/9 プレジデント社)も出版されました。






🔶 大前氏は経営コンサルタントとしても超一流でしたが、アドバイスするだけの人ではありませんでした。自ら実践する人です。有言実行の人です。起業し、東京証券取引所に上場しています。現在は代表取締役会長です。



大前氏の本には、ものの見方、考え方を理解する上で重要な部分が多くあります。大前氏の真意を深く考えなくてはなりませんね。

この元記事は8年前にAmebaブログで書きました(2014-06-29 23:34:06)。「新・大前研一名言集(改)」はかなりの量になりました。私にとっては、いわばレガシィです。

その記事を再編集しました。


✑ 大前研一氏の略歴

大前 研一(おおまえ けんいち、1943年2月21日 - )は、日本経営コンサルタント起業家マサチューセッツ工科大学博士マッキンゼー日本支社長を経て、カリフォルニア大学ロサンゼルス校公共政策大学院教授やスタンフォード大学経営大学院客員教授を歴任。
現在、ビジネス・ブレークスルー大学学長[1]韓国梨花女子大学国際大学院名誉教授[1]高麗大学名誉客員教授[1]、(株)大前・アンド・アソシエーツ創業者兼取締役[1]、株式会社ビジネス・ブレークスルー代表取締役社長[1]等を務める。    (Wikipedia から)


大前研一氏の略歴補足

大前氏は日立製作所に勤務時、高速増殖炉もんじゅの設計を担当していましたが、原発の危険性を強く感じていたそうです。

その後、世界一の経営コンサルティングファームのマッキンゼーに転職。
マッキンゼー本社の常務、マッキンゼー・ジャパン代表を歴任。

都知事選に出馬しましたが、まったく選挙活動をしなかった青島幸男氏に敗れたことを機に、政治の世界で活躍することをキッパリ諦め、社会人のための教育機関を立ち上げました。BBT(ビジネス・ブレークスルー)を東京証券取引所に上場させました。
大前氏の書籍は、日本語と英語で出版されていて、米国の大学でテキストとして使われている書籍もあるそうです。










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