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【回想録 由美子のいなくなった夏 亡き最愛の妻への想い 第45回】

🔷 「入院」の中の「入院当日」を掲載します。🔷

 『由美子のいなくなった夏 亡き最愛の妻への想い』
(ハードカバー 四六版 モノクロ264ページ)
2016年1月25日 発行
著者   藤巻 隆
発行所  ブイツーソリューション

 ✍『由美子のいなくなった夏 亡き最愛の妻への想い』(第45回)✍

「入院」の中の「入院当日」を掲載します。

入院

入院当日

 山田内科医院からタクシーで戸塚共立第2病院へ向かいました。タクシーの後部座席で「何も心配するな」と由美子を励ましながら(心の中は不安だらけでしたが)、私は由美子の右手を左手で強く握りしめていました。

 病院に到着すると、受付へ行き、X線写真と手紙を係の方に渡すと、由美子はすぐにER(救急外来)へ連れて行かれました。時刻はちょうど正午頃でした。私は、受付の前の椅子に腰掛けて待っていました。

 小一時間ほどして、医師がERから出てきて、「十分ほどしたら、係の者が入院手続きの説明をしますので、聞いてください」と私に声をかけました。

 係の女性から入院手続きの説明を受けました。「着替え等の準備をお願いします。入院保証金五万円をご用意ください」とお決まりの内容をよどみなく話しました。

 さらに一時間ほどして、私はERに呼ばれました。そこにはストレッチャーに横たわる由美子と、医師、看護師がいました。由美子はこれからどうなるのかという不安感とようやく治療に専念できるという安堵感の入り交じった、複雑な表情を浮かべていました。

 病院内で撮影したX線画像を見せながら、担当医師は由美子の身体の状態を説明しました。

 「左肺の三分の二くらいが白く写っていて、その部分の肺が見えません。腹水がここまで溜まっています。右肺にはほとんど溜まっていません」。
ここまでの説明は、山田内科医院で説明を受けた内容とほとんど変わりません。

腹水

「腹水を抜かないといけません」と続けました。「詳細は後ほど主治医が説明します」と言い足すと、看護師に病室へ移動するように指示しました。

 エレベーターで四階まで上がりました。スタッフステーション(以前はナースステーションと言いました)から遠い、四〇六号室でした。この病室は、当初は二人部屋でしたが、個室に変更されていました。「個室」なので、差額ベッド代を請求されるのではないかと心配になりましたが、病院側の都合なので心配はいらないということでした。つまり、差額ベッド代は不要ということです。

 希望と絶望のはざまで、由美子と私、そして可奈の苦悩の日々が始まったのです。


(PP.104-105)


➳ 編集後記

第45回は「入院」の中の「入院当日」を書きました。

ER内でもERから出て病室に向かう途中でも、由美子は一言も話さず、私は由美子が今何を考えているのか想像することが怖くなりました。

由美子は不安な気持ちが渦巻いていたことでしょう。もしかしたら覚悟していたのかもしれません。

私は由美子にどんな言葉をかけてあげたら良いのだろうかと考えながら、言葉が見つかりませんでした。



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