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【大人の流儀 伊集院 静 心に響く言葉】 Vol.51

大人の流儀

 伊集院 静さんの『大人の流儀』から心に響く言葉をご紹介します。私は現在『大人の流儀』1~10巻を持っています。このうちの第1巻から心に響く言葉を毎回3件ずつご紹介していこうと考えています。全巻を同様に扱います。

 時には、厳しい言葉で私たちを叱咤激励することがあります。反発する気持ちをぐっと堪え、なぜ伊集院さんはこのように言ったのだろうか、と考えてみてください。しばらく考えたあとで、腑に落ちることが多いと感じるはずです。

 帯には「あなたのこころの奥にある勇気と覚悟に出会える。『本物の大人』になりたいあなたへ、」(『続・大人の流儀』)と書かれています。

 ご存知のように、伊集院さんは小説家ですが、『大人の流儀』のような辛口エッセーも書いています。



「エリートは被災地に行かないのか」から

伊集院 静の言葉 1 (151)

 寄附した人と、その金額をマスコミが公表する。
 たいした金額を寄附する人がいる。よくやっていると思うが、それでその人がエライわけではない。金に余裕があるから出しているだけのことだ。そこを人は見誤る。
 たとえば被災報道を見知って、或る母娘が欲しかったものを少し我慢して、五千円の金を被災の募金に持って行ったとする。その母娘の五千円と金のある者が出した数億円は同価値であり、もしかして母娘の方が、私にはたしかな救援金に思える。その上、母娘の寄附は世間が知るところではない。ところが金のタカが多いとマスコミは、人と金額を公表する。私にはそれが卑しく思える。    

大人の流儀 2 伊集院 静                               



「エリートは被災地に行かないのか」から

伊集院 静の言葉 2 (152)

 寄附の話に戻すと、百億円出す人は千億円は持っている(もっと多いだろうが)、だからことさら善人やエライというのは間違いだ。私が嫌いなのは、名前を公表する点だ。元ニュースキャスターが二億円。これなんぞ、その典型だ。私たち庶民がと口にして仕事をしていただろう。許せない。とは言え百億も二億もたいした金だ。
-----妬みでしょう? それ?
 ああ妬みもある。しかし妬みの根にあるのは母娘に対して、その慈愛を金のタカで歪曲させている事実だ。黙って出せ。 

大人の流儀 2 伊集院 静                               


「花見を自粛するのは間違っている」から

伊集院 静の言葉 3 (153)

 私事を話さしてもらうと、この地震の時、私はたまたま仙台にいて驚愕するような体験をしたが、家屋が少し傷んだくらいで、元の暮らしに戻って、こうして原稿を書いているのだから、被災者ではない。
 被災者というのは、家族を、友人を、家を、仕事を、生活を、故郷まで失くした人を言うのである。そりゃ近所で助け合わねばならないことはやっているし、家人は避難所に水や乾電池を持って行ったりしているが、それは当たり前のことで、誰だってやることだ。
 いつも言っているとおり、余裕のある者がすべきことをすればいいだけのことだ。
 家人に、あなたも水を持って行くのを手伝って、と言われたが、私は車からは出なかった。
 なぜか?
 もし水を持って行って、おバアさんか何かに手を握られ、泣きながら、ありがとうございます、なんて感謝されたら……。
 私は間違いなく、地獄に落ちてしまう。

大人の流儀 2 伊集院 静                               


⭐ 出典元

『大人の流儀 2』(書籍の表紙は「続・大人の流儀」)
2011年12月12日第1刷発行
講談社



✒ 編集後記

『大人の流儀』は手元に1~10巻あります。今後も出版されることでしょう。出版されればまた入手します。

伊集院静氏は2020年1月にくも膜下出血で入院され大変心配されましたが、リハビリがうまくいき、その後退院し、執筆を再開しています。

伊集院氏は作家にして随筆家でもあるので、我々一般人とは異なり、物事を少し遠くから眺め、「物事の本質はここにあり」と見抜き、それに相応しい言葉を紡いでいます。

🔷 「金のタカが多いとマスコミは、人と金額を公表する。私にはそれが卑しく思える」

寄附金に限らず、「カネ、カネ、カネ」という報道があります。メディアは自社のことは棚に上げてあげつらうのが常道です。

毎年も8月27日・28日の両日で、日本テレビが有名タレントを多数使ってチャリティー”イベント”を開催します。
『24時間テレビ 「愛は地球を救う」』です。

気になったのは、タレントへのギャラの支払いがかなりの金額と推測できることです。

しかし、こうした金額は公表されません。テレビ局が出演料を支払っているのか、それとも全国から集った寄附金から支払っているのか定かではありません。

推定金額がネットに載ることはありますが、正確な金額とは言えないでしょう。

一応、下記のウェブサイトをご覧ください。


もちろん、この記事を真に受けてるわけではありません。
ですが、テレビ局がチャリティという名目で大儲けしている構図が見えてきます。

チャリティーなのだからタレントは無償で参加するのがスジではないかと思いますが、所属事務所はそれでは協力できないということなのでしょう。

それどころか、主催者であるテレビ局自体がどれだけの寄附をしたのか聞いたことがありません

米国では、”チャリティ”コンサートなどのチャリティイベントであれば、ノーギャラが当たり前です。

毎回、「集まった募金は、障害者の支援、環境保護、被災地支援に使われている」と言っていますが、これは果たして事実なのか?

嘘なのか誠なのか?

テレビ局にとって美味しいイベントなので毎年開催されているとしか思えません。
もちろん、これは私の個人的な見解なので、私が正しいと言うつもりはありません。

しかし、その内容を第三者機関がきちんと精査し、金の流れを明らかにする必要があると思いますが、主催者や関係者からすれば、余計なお世話でしょうか?

寄附金が正しい手続きで、目的のとおり行われているのか大いに疑問です





🔶 伊集院静氏の言葉は、軽妙にして本質を見抜いたものです。随筆家としても小説家としても一流であることを示していると私は考えています。




<著者略歴 『大人の流儀』から>

1950年山口県防府市生まれ。72年立教大学文学部卒業。

91年『乳房』で第12回吉川英治文学新人賞、92年『受け月』で第107回直木賞、94年『機関車先生』で第7回柴田錬三郎賞、2002年『ごろごろ』で第36回吉川英治文学賞をそれぞれ受賞。

作詞家として『ギンギラギンにさりげなく』『愚か者』などを手がけている。




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