クリープス(1986)

フレッド・デッカー監督の1986年作品「クリープス」を見た。

ホラー映画やSF映画が大好きだという監督のデビュー作。メイキングのインタビューによると、「好きなものを全部鍋に放り込んで煮詰めたような作品」というわけで、作品名の「Night of the Creeps」はロメロの「Night of the Living Dead」から来てるみたいだし、登場人物であるクリス・ロメロ、J.C.フーパ―(J.C.=ジョン・カーペンター)、シンシア・クローネンバーグが通うのはコーマン大学と、この手の映画監督の名前がてんこ盛りに散りばめられています。

物語は、ざっくりこんな感じ。エイリアンが宇宙船から放出したカプセルが1959年の地球に落下。その現場を見に行った男子大学生はカプセルから飛び出してきた真っ黒なナメクジみたいのが口に飛び込んできて死亡。彼を車で待っていた女学生は精神病院を脱走した殺人鬼によって惨殺される。

30年弱の時を経て1986年。イケてない男子コンビのロメロとJ.C.は、ロメロが一目惚れした美女シンシアと親しくなりたいがあまりに、イケてる男子軍団の命令に従って大学病院から死体を盗み出そうとするも、その死体が急に動き出してビビッて逃走。残された死体は、運悪くその場に出くわした医学生を襲う。実はこの死体、1959年に宇宙から来たナメクジを飲み込んで死んだ大学生だったのだ。

さぁ、事件だ大変だと警察がやってきたら、医学生の死体はあれど、もともと保存されていた大学生の死体がない。「死体が勝手に歩いていったとでもいうのか!? バカもん!」な~んて警部が怒鳴っているのだが、そんなことしてる間に死体は歩いて大学の女子寮まで辿り着き、シンシアの前で(ガラス越しに)頭がパカッと割れてブチャっと黒いモノが飛び出してシンシア驚愕!!!
その後も、さっき死んでた医学生が検死解剖の途中なのにムックリと起き上がってベッドを下りて歩き出し、清掃員を襲ったり、やがては1959年に警官に射殺されて埋められた犯人も動くミイラとなって土の中から現れて…

ここから先は「ネタバレ」で後述するとして、本作は、イケてない男子が、カッコいいけど性格悪い男子の美しい彼女をゲットする青春モノを土台に、男同士の友情、ゾンビ、宇宙生物などを混ぜ込んでゴッタ煮にして、何とかかんとかバランスを保ちつつ完成した青春ホラー・コメディといったところ。映画としては、まぁまぁの出来かな。監督の好きなものに対する"愛"が溢れかえっているところには好感が持てるけど。

【以下、ネタバレ】
結局、宇宙からやってきた黒いナメクジみたいなのは人間の身体に入り込んで脳まで行って卵を産み付けるのね。その時点で宿主となった人間は死ぬんだけど、脳に巣食った宇宙ナメクジはその身体を自由に動かせるの。で、てくてく歩いてって次なる宿主を見つけ、卵が孵ったら宿主の頭を中から吹っ飛ばして、バババッと外へ飛び出し、それぞれに新たな宿主に入り込むことで繁殖していくという。

だから、乗っ取られた人間はゾンビみたいになるけど、ゾンビみたく直接人を食べるではなく、新たな宿主を捕まえてその身体に子供を送り込もうって流れとなり、頭の破裂以外はそんなにグロくもなりません。

なお、J.C.の命懸けの頑張りによって宇宙ナメクジは火に弱いことがわかり、最後はロメロとシンシアが火炎放射器で宿主となってしまったイケてる男子軍団を無双状態でガンガンやっつける。SF・ホラー好きのイケてないお客様の代わりにサービス、サービス!みたいな展開になります。いやはや。

話を端折ってしまいましたが、1959年の事件で惨殺された女子のことが大好きだったのに「高卒で警官になるなんて将来不安だわ〜」とフラれちゃった警官が犯人に復讐を果たし、今回の事件で動くミイラとなって再び現れた彼と戦い、最後は命を懸けて宇宙ナメクジ軍団を壊滅させるというドラマも入っております。

お茶目な要素としては、リマスターされた美麗な映像によって、宇宙ナメクジを引っ張る糸も見えたりなんかしちゃったりして…

なお、お婆さんが見ているテレビでは、エド・ウッド監督の「プラン9・フロム・アウタースペース」が放送中でーす♪


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