見出し画像

アムステルダム(2022)

デヴィッド・O・ラッセル監督「アムステルダム」が思っていたより拡大公開されて大きなスクリーンでかかっていたんだけど、あっという間に公開規模が小さくなりそうな気がして初週末に急いで観てきました。小さな画面で見るなら、Disney+に来るの待てばいいからね。

1933年。町医者のバートは戦争中に上官だったミーキンス将軍の遺体の解剖を依頼され、その死因が毒殺であったことを知る。その対応について親友で弁護士のハロルドと話していた矢先に、彼らは罠にはめられ、殺人の容疑者となってしまう。

ここで時を遡って1918年。第一次世界大戦の最中。フランスの戦地で味方同士なのに諍いが絶えない白人と黒人の兵士を束ねるため、差別主義者でなくバランス感覚を持つ白人のバートが黒人のハロルドの部隊を率いることになり、共に戦う中で2人は親友となる。

やがて2人は戦場で負傷し、野戦病院に運ばれるのですが、ここでちょっと変わったアーティスト肌の看護師ヴァレリーと出会うのです。

第一次世界大戦の後、3人はアムステルダムのヴァレリーのアトリエで素晴らしい時間を過ごし、固い絆で結ばれます。しかし、バートがニューヨークに残してきた奥さんの元に戻る決心をしたことから、この自由な楽しい3人暮らしは終わりを告げて…

物語は1933年に戻って、殺人の濡れ衣を着せられたバートとハロルドが身の潔白を証明するために、殺し屋から身を隠しながら東奔西走。そして、その過程で12年ぶりのヴァレリーとの再会となります。

この映画は、この眩いばかりの3人の友情の物語と、1933年に退役軍人であるスメドリー・バトラー少将が、アメリカ富裕層による国家のクーデター計画があると議会で語った実話(当時の証言映像がエンドロールで流れます)と、大きく2つの話を内包しているのですが、これが今ひとつうまく融合していません。

物語としてはこの2つをちゃんと接合しているのですが、後半部分に3人は実質的に必要ないですし、そっちメインだとすると友情物語の必然性も薄くなってしまうのです。

ただ、後半の国家転覆の陰謀の話をそのまま描いても"陰謀論"的なウソかホントかわからないシリアスな作品になってしまうので、監督はそこに3人のユニークなキャラの友情物語を加えることで、全編をややコメディタッチな作風にしつつ、言いたい事はちゃんと伝えるとうスタイルを選んだのだと思います。

豪華な俳優陣はそれぞれのキャラを見事に演じ、映画のどこを切り取っても良くできたシーンになっており、個々のシーンとして見れば全部傑作。それだけに、全体としてのまとめ方をもう少しなんとか出来なかったのかなと惜しい気持ちになりました。面白いんだけど、跳ねない感じ。

クリスチャン・ベールが演じる片目が義眼の医者の造形のユニークさと、事あるごとに義眼が落ちてワタワタする面白さ。マーゴット・ロビーが負傷兵から取り出した銃弾や爆弾の破片で作るアート作品の奇妙な味わい。ロバート・デ・ニーロの圧巻のスピーチなど、本当に俳優陣の見どころは満載。 Disney+ で配信が始まったら、ぜひ見ていただきたい、ちょっと通好みな一作でした。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?