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駅ビルのヒット作となったTAKAMATSU ORNE(高松オルネ)とJR四国の商業施設戦略

香川県はもとより四国の一大ターミナルとなっている予讃線の高松駅

このほど、高松駅では長年の懸案だった駅ビルの増床工事が竣工。
2024年3月22日に新商業施設「高松オルネ」が開業しました。
JR四国によると、開業から3ヶ月間の来館者数は約220万人とのことで、当初目標としていた年間700万人という数字を上回るペースで推移しているといいます。

【参考】RSK山陽放送 2024年6月28日報道

今日はこの「高松オルネ」JR四国の駅商業施設事情について考察してみることにします。


1.「高松オルネ」とは何ぞや

もともと、2001年に完成した高松駅ビル(地上3階建て)には商業施設「COM高松」が入居、土産物店やコンビニ、カフェ、ベーカリー、ファーストフード店、書店などが入居し、多くの人に利用されていました。
今回、駅コンコースを挟んだ向かい側、もともとスーパーマーケット「エースワン」のあった敷地を利用して増床が実現。増床部分と「COM高松」を合わせる形で新生「高松オルネ」が誕生することになりました。
既存の「COM高松」「高松オルネ」の南館、今回オープンした増床部分(地上4階建て)北館という扱いです。
現駅舎の建設時には、現在の「高松オルネ」と駅コンコースの敷地に7階建ての駅ビルを建設する、何某かの核テナント(おそらく百貨店)を誘致するという計画もあったといいますが、平成不況の影響で計画は大幅に縮小。
現駅舎の開業時点では「COM高松」→「高松オルネ」南館に相当する部分が開業するにとどまりました。
(もっとも、仮に百貨店が進出していたとしても、先発の三越高松店、「ゆめタウン高松」などの大型ショッピングモール、さらには丸亀町商店街をはじめとする地域の商店街との棲み分けができず、過当競争の末「コトデンそごう」→「高松天満屋」のように短期撤退していた可能性も否定できません。)
紆余曲折はありましたが、新駅舎の開業から23年を経て、当初の計画には及ばないものの、駅ビル・商業施設の倍以上の増床が実現することになり、各方面からの期待が集まっているといいます。

【参考】あいテレビ(愛媛県)2024年6月10日報道

2.「高松オルネ」北館のテナントについて

「高松オルネ」北館入口

ここでは、「高松オルネ」北館の主なテナントを紹介させていただきます。
1階 「ハレノヒヤ」・「shikokumeguru」・「ジュピター」・※「無印良品500」・△「&Creaters」・「香川・高松ツーリストインフォメーション」・✩スーパーマーケット「エースワン」など
2階 「バーガーキング」、「珈琲所 コメダ珈琲店」(7月開店)、「LOFT」(9月6日開店)など
3階 「TSUTAYA BOOKSTORE」・※「ニトリデコホーム」・○「KINMAQ整体院」など  
4階「ORNE ART GALLERY」・「ORNE PARK」など

※は四国初出店、△は中四国初出店、○は香川県初出店の店舗
✩は駐車場棟に出店

1階「高松SERECT」の愛称が付され、土産物から弁当、惣菜、輸入食品など、食料品を中心に幅広く取り揃えたフロアとなっています。
目玉テナントは「shikoku meguru」
四国特産の海産物や農産物、加工食品、お菓子などを多数取り揃えたマルシェと、こだわりの素材を用いたラーメン店・タパス店・カレー&パスタ店・カフェからなるフードコートから構成されています。
マルシェでは土産物を買うも良し、車内販売のなくなった特急列車での呑み鉄のお供を買うも良しというところでしょうか。
お土産やおつまみ、お菓子については、駅改札口寄りの「ハレノヒヤ」でも数多く取り揃えており、こちらで買うのもお勧めです。

個人的に一番気になったお店が、こちらのラム酒バー「RAM STAND UMAYADO」
香川県東かがわ市の馬宿蒸溜所が運営するスタンディングバーで、特産の和三盆の製造過程で産出した糖蜜を発酵、蒸溜させて作った和三盆ラムをはじめとするお酒、厳選素材を用いて作ったクラフトコーラを楽しむことができます。また、持ち帰り用のお酒の販売もしています。
和三盆の甘さを生かしたラム酒もさることながら、お酒とセットで提供される和三盆のお菓子も美味で、また機会があればバスや列車の待ち時間に立ち寄ってみようと思います。

「RAM STAND UMAYADO」

話題の新しい店舗のみならず、地元の老舗も新業態で出店するなど、ビジネスチャンスを伺っています。
高松市の老舗料亭「二蝶」弁当店「いちから二蝶」を初出店、観音寺市の「山地蒲鉾」も南館から移転した新店舗で営業しています。
なお、1階には食料品関係以外のテナントも入居しており、このうち「無印良品500」は四国初出店アクセサリー店の「&Creaters」は中四国初出店となります。

2階には「高松STYLE」の愛称が付され、生活を支える雑貨・日用品・衣料品店とカフェが入居しています。
先ごろ、9月6日に市内2店舗目となる「LOFT」がオープンすることが発表され、各方面で報道されたのは記憶に新しいことかと思います。

なお、1階と2階の一部区画には2024年7月現在、常設店舗ではなく期間限定の店舗が入居しています。
期間限定の店舗が使用している区画に、今後どのような新しい店舗が入居するか要注目というところです。

3階「高松MESSAGE」の愛称が付けられ、書店や旅行会社、インテリア雑貨店、整体院、保険窓口、まつげエステなどが出店しています。
このうち、「TSUTAYA BOOKSTORE」は四国で初となるラウンジ付きの店舗として出店しており、同じく四国初出店の「ニトリデコホーム」ともども話題になっています。

4階は屋上広場に近いフロアで、地域の学生や住民が手がけた芸術作品を展示し、地域の情報を発信する拠点と位置づけられているギャラリーイベント用の広場が設けられ、地域連携の場来場者の憩いの場と位置づけられているようです。

3.「高松オルネ」を実際に利用してみて

あくまで一旅行者としての視点ですが、魅力的な店舗が多い「高松オルネ」を利用する場合は、時間に余裕を持ち、乗車予定の列車やバスの発車時刻の2時間前には到着しておくのがお勧めなのではと思いました。
2時間あれば、軽くお茶やお酒、ファーストフードをいただいてからのんびり買い物を楽しむのには充分かと思います。
ちょうど、北海道の新千歳空港発のフライトを利用する際に、充実した商業施設でのんびり過ごす目的で搭乗便の出発2~3時間前に空港入りしておくのと同じように考えていただいたら、分かり良いかと思います。

また、ショッピングモールにはよくある話かと思いますが、大半の店舗の営業時間が10時~20時となっています。
土産物や飲み物、おつまみを扱う店舗を中心に、東京行き寝台特急「サンライズ瀬戸」の発車時刻(21時26分)まで営業する店をもう少し増やしてみてはどうかというようにも思いました。

あともう1つ、「高松オルネ」には香川名物のうどん店が見当たらないことが気になりました。
駅前を探せば、JR四国直営の「めりけんや」をはじめうどん店がいくつか営業していますが、時間に余裕のない人、地理に不案内な人も多いことを考えると、列車を降りたその足ですぐにたどり着けるロケーションにうどんを食べられる場所があればとふと思った次第です。
個人的には、「高松オルネ」北館建設前に営業していた「連絡船うどん」のようなお店が復活すれば、それなりのニーズはあるのではというところです。

4.JR四国の駅商業施設のこれから

JR四国では香川県のみならず、四国の他の3県でもターミナル駅の商業施設を展開しています。

隣の愛媛県では、来る9月29日には予讃線の松山駅付近の高架化工事が完成、高架の新しい松山駅が開業することになっていますが、高架下の商業施設「JR松山駅だんだん通り」には「ハレノヒヤ」の2号店や郷土料理店などの進出が決定しています。(2024年7月14日追記)
松山市街地の西外れに位置することもあり、県庁所在地の代表駅にしてはやや寂しい印象だった現駅舎と比べて大幅な商業施設のスケールアップが実現し、各方面から早くも期待する声が上がっています。

この他、高知駅徳島駅の商業施設の現状についても触れておきます。

・高知駅 

高知駅

現駅舎は2008年竣工の高架駅。駅高架下の商業施設はコンビニ、土産物店、カフェ、ベーカリー、飲食店と最小限の規模になっています。
あくまで推察ですが、徒歩圏内に位置する帯屋町アーケード街 イオンモール高知、駅近ロードサイド店舗と上手く役割分担している印象を受けました。

・徳島駅 

徳島駅

現駅舎は1993年竣工の地上18階地下1階建ての駅ビル。
高層階にはJRホテルクレメント徳島が入居し、6階から地下1階に商業施設「徳島駅クレメントプラザ」が入居しています。
地下の飲食店街や土産物屋、1階のベーカリーやお菓子屋、スターバックスなどは賑わっているようですが、ビルの規模が需要に比して大きすぎるせいもあるのか、空きテナントが目に付くのが課題に思えました。
もう一つの駅近商業施設、アミコビル(徳島三越が核テナント)との役割分担や連携強化も必要になってきそうです。

今後、「高松オルネ」と松山駅の高架下商業施設の整備に目処が付いた段階で、高知駅や徳島駅の商業施設にも何らかの動きがあるのではと思いますので、しばらく状況を注視したいところです。

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