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転校生の転職

転校というのは慣れというのもあるけど、僕には苦い思い出ばかりだ。親の都合で自分の生活環境や人間関係がガラリと変えさせられるのだからツラい。先生も友達も知らない人だらけだし、入学と違ってそこには一定の人間関係が築きあがったところに入るのだから簡単ではない。しかも、僕は香港日本人学校からカイロのエジプト人だらけの現地校に放り込まれたり、関東育ちなのに大阪の関西弁・阪神ファン100%の環境に放り込まれたりしてきた。大学も自分の高校からは誰も行かないところにしか受からなかった。

転校生の知恵

放り込まれた組織がどういうカルチャーなのか、何が価値があるとされ、何は無価値とする組織なのか、組織自体がどういう力学で進むのか、どれくらいのグループ(派閥的なもの)がそこに存在しているのか、だれがリーダー格でどれくらいの指導力を持ち合わせているのか。そういったことを転校初日から読み解いて把握することが求められる。そうでないと、どのように行動することが自分を集団の中でHappyな状態にするのかが皆目見当がつかないからだ。やはり仲の良い友達は欲しいし、学校生活を楽しくしたいわけで。

毎日通う学校だからまず言語は習得しなければならない。英語の習得も強制されたが、関西弁の習得も余儀なくされた。同時に阪神という球団が強烈に支持されたものであること、日本の小学校では〇〇のアイドルが女子にとって大事なこと、先生は多少の生徒同士の喧嘩があっても介入してこない(つまり助けにならない)こと、そういうことを理解して、自分を集団に適応させ、言動のパターンを決めていく。

こんなことを通じて、小学校、中学、大学と新しい環境に放り込まれ続けた僕は、生き抜く術を身に着けたのだと思う。大人になってからの転職ではさほど苦労をしなかった。なぜって転校と違って転職は自分の意志で決められるものだから。ただ、そこにはもう一つポイントがある。

転職に生きる転校生スキル

転職先の職場で自分がその組織に貢献できるようになることに、僕はさほどの苦労をした記憶がない。転職先の組織での自分なりのネットワークの構築、自分の能力とその組織にとって必要そうな貢献領域のマッチング、自分の貢献結果への正当な評価をもらう努力。まさに転校で磨いたスキルがそのまま活きた。ほぼすべての職場で毎年評価を上げ、ポジションを上げることに成功してきたし、退職後も人的ネットワークは継続できているし、僕の職業人生は豊かなものにすることができている。

転職先の選別基準

それでも転職は転校と違って、より自分をHappyにするチャンスにあふれている。誰かに強制されるわけではない、徹頭徹尾自分の選択なのだ。だから、自分がよりHappyになれる転職先を見つけることが可能になる。入る組織も、入るタイミングも自分次第。
だから今の職場がうんざりでどこでもいいから転職したい、というような考え方は自ら「転校」を望むに近い発想。危険極まりない。転校先がどういうものであってほしいのか、どういうところだと自分の能力が発揮しやすいのか、自分が評価されやすいのか、その結果として自分がHappyになれるのか、そこをよく見極めないといけない。

具体例の一つでしかないけど、僕の転職先の選別基準はシンプルに5つある。

①その会社のプロダクトが革命的でインパクトを与えるものかどうか。そのプロダクトの社会的意義を自分なりに見いだせるかどうか。これがないとしんどい時に頑張る原動力がなくなる。

②組織の成長に勢いがあるか。勢いのある組織には優秀な人材が集まり、自分にとって刺激になり、自己成長の機会となる。将来の人脈になる。

③その組織のCorporateが弱体であるかどうか。弱体だからこそ自分の能力の発揮し甲斐がある。自分はその苦労をすることで報酬を頂戴するのだ。そして報酬も上げてもらいやすくなる。

④スーツで通勤しなくてもいいか。スーツで仕事している会社は、朝礼とか日報とかサービス残業とか、僕が無意味・非効率だと思っていることを求めたりする。ちょっと偏見かもだけど、これは自分の価値観の問題。

⑤高すぎる給与提示をしてこないか。高い給料を提示してくる会社は、それだけ採用力がないから金銭でつるしかない会社。つまり、多くの人がそこで働くことに魅力を感じない会社ということになる。給料は後で上げてもらえばいい。

転職は万人に向くものではない

転校生のとしての生きるスキルを持たなければ転職はお勧めしない。同時にそれがあっても自分なりに転職をよりHappyにする選別眼を持ち合わせない人は、自分の持つ能力やスキルの活かし方を把握できていない可能性がある。自分の組織への効果的な貢献のさせ方が見えてない人は、転職しても自分を生かしきれないだろう。転職をうまく生かすには、転校生の生き抜くスキルと自分は何者なのかを深く理解しているか次第なんじゃないか、と考える。

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