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【マツコデラックスさんのこと。】

10/27放映の『マツコの知らない世界ー味噌汁の世界ー』に出演させていただいた。

初対面の方をどうこう論評するのは僭越な話だ。
でも、多くの方に「マツコさんてどんな方でしたか?」と問われる。
だから、今回の番組収録でわずか2時間だけ、サシで共演させていただいた印象をお話しします。

結論言えば、「自力であのポジションを勝ち取った人は強くて優しい。」
とても感銘を受けました。

話は企画段階に戻ります。
作業開始は収録の約一月前。

今回の番組は、251回目にして、初めてという、ゲスト自ら作ったプレゼンするという企画。
製作スタッフからは、ストーリーラインを僕が自ら考えて欲しい、と。

結局、24枚のスライド案を提出した。半分くらいはボツかカットになりながらも、プレゼンの骨格が固まった。

そして、難航したのが「どの味噌汁をマツコさんに試食してもらうか」ということ。

番組スタッフからは、僕の味噌汁の冒険心を活かしたい、でも「マツコさんは結構保守的」ということで、その隘路を探る作業がギリギリまで続いた。

スタッフも、マツコさんに最高のコメントをしてほしい、忖度や予定調和をしないマツコさんを、味噌汁で感動させたい、という思いが満ちている。

数度のズーム会議のほか、毎晩のように遅くまで、TBSさんと電話で打ち合わせを繰り返した。

その途中で、有難いことに、地元の味噌汁仲間たちも喜んで協力してくださった。

そして本番当日。マツコさんには台本がないという。事前に僕の情報も入っていないという。え?

直感とその時の印象を大切にされるとのこと。当然、楽屋での挨拶もできない。

大物芸能人と、収録2時間、サシで、しかも初対面で、カメラの前で喋る。
しかも相手はディスりの達人。
どうなるのか?

いよいよ本番。
ピリピリした空気の中、マツコさんご本人がスタジオ入り。
一気に20名近くのスタッフの間に緊張感が走る。

そして、カメラが回る。
僕は潜んでいたセット裏から、舞台へ出て行った。眩しい照明、三台のカメラ。そして、目の前にマツコさんが。

クラクラするような緊張感の中、いよいよ収録が始まった。

そこには、大きくて、眼光鋭いマツコさんが目の前に座っていた。


そして本番がスタート。
マツコさんは、僕をを窺っている。
最初のやりとり。

僕「今日は、み、み、みそ、みそ、、」
いかん!のっけから噛んでしまった。
見逃さないマツコさん。
すかさず突っこみが入る。
「みそみそみそ、って!もしかして緊張されてます?」
いきなり突かれた。苦笑いする僕。

そこでマツコさん、
「緊張しないでくださいよ。だってあなた、厚生労働省でもっと凄いもの見てきたでしょう〜?」
上手い。ディスってるのか持ち上げてるのか、その両方に取れる最強のツッコミである。
いきなり、芸術的な言葉の操り。

最初の5分間位、マツコさんは、僕を確かに窺っていた、確かに。
どれぐらい突いていいのか、どの程度の圧力なら持ちこたえられるのか。どの辺をくすぐれば良さが出てくるのか。最初のスモールトークで、試されている感覚。
それが分かるだけに、僕も妙に冷静になる。

序盤、まるでボクサーが試合開始直後に軽くジャブを入れてくるように、いろんなディスりを軽く差し込んでくる。
僕は基本、他人のディスりには動揺しない。むしろ空気を楽しんでみる。だんだん2人の周波数が合ってくるような感覚がある。

マツコさんは、ディスるたびに、そして僕が苦笑いするたびに、大きな声で「冗談よぉ〜」とフォローすることを忘れない。
オンエアではその部分はほとんどカットされているが、実はマツコさんが、叩いては撫で、押しては引くのリズムで収録は進んでいくのだ。
この辺りが「超一流」の技か。
これを味わえることは幸運だ。

序盤、僕の味噌汁インスタ の紹介をした。モニターに僕のインスタ が映る。300以上の味噌汁の写真。

ここでマツコさんがどれを「よく見せて」と言うのか。スクロールしてみせる。
マツコさんが「ちょっとそれよく見せて」と指差したのが、あのハンバーガー味噌汁だ。
来た!最も意外性のある具材をチョイスをしてもらった。事前に仕込んでないのに、この写真を瞬時で見つけるマツコさんの観察力は凄い。

当然、マツコさんは仰天する。
僕は「これ、結構うまいんですよ」と応戦する。
でも!ただ、意外ね、と言うだけでは、この話はオチがない。どうする?スタジオの圧が瞬時にかかってくる。

とっさに口をついて出た。
「でもマツコさん、ハンバーガーを液体として召し上がったことないでしょ?」
意味不明だ。
この、ちょっと上から目線を含んだボールを投げ込んでみた。
「あるわけないだろ!」のマツコさん。
よし、オチがついた。意味不明のボールだったが、見事にマツコさんは返してくれた。こういうのは快感でもある、

番組の会話は僕がリードするのが役割。無意識のうちに、こう話したらこう突っ込まれるか、なんてことが頭をよぎる。でも、マツコさんは決して素人が考えるような、予想通りの反応はしない。変幻自在。僕も神経を研ぎ澄ます。

同時に、マツコさん、ものすごく相手に関心を寄せている。集中している。そんな人だ。

例えば。僕の妻の好きな味噌汁ベストスリーを紹介する時、出ているスライドに、妻の年齢が書いてあった。その瞬間マツコさんは、「あれ、年齢書いていいのか?」「後で修正しといたほうがいいよ。」なんて気遣いを見せる。

トムヤンクン味噌汁を紹介した時も、「これ作るくらいなら、奥さんをタイ料理に連れて行けばいいじゃない!」と。
常に、目線は家族、特に女性の目線に置く。

そしていよいよ、スタッフも最もピリピリしていた、味噌汁の試食がスタートする。
トマトや唐揚げや梅干しの入った味噌汁。さあどう反応するのか。

ここまで軽快にキャッチボールしてきた会話が、味噌汁でトーンダウンしてはならないし、マツコさんは忖度なし。嫌いなものは嫌い、という。
さあ、ここから。
僕の味噌汁を食べていただこう!


いよいよ味噌汁の試食。妻や娘が一押しの味噌汁が次々と運び込まれる。

オンエアではわからないが、マツコさんは相当に丁寧に味わう。
編集でカットされているが。味噌汁をすすってから言葉を発するまで7,8秒間の時間がある。
よく考えて言葉を選んでいる。その7,8秒間の間、スタッフにも僕にも緊張が走る。

それは「反応」ではない。本当に言葉を紡いでいる。単なるウケ狙いのリアクションではなく、反射的なコメントはなく。じっくりと味わっている。

お追従はないが、不誠実さもない。マツコさんには、作ってくれた人、この企画へのリスペクトがにじんでいるように感じた。
素人相手とは言え、軽いツッコミで場をかき混ぜようと言う安易さはない。マツコさんは“誠実”であった。

しかも、マツコさんの食べ方は美しい。映像で確認していただければわかる。箸の持ち方、腕の持って行き方、キャラの印象と少し距離があるような美しい所作で召し上がる。
これだから多くのファンがいるんだだろう。ワーワー叫んでいるような芸人番組とは趣が違う。

マツコさんのコメントは、「評価」と言うスタンスではない。「これにチーズ乗せたい」「これはウインナーの出汁が出ている」などと、思いがけず中立的である。

僕の考案した味噌汁、どうにか気に召さないものでも無いようだ。
そして、唐揚げを味噌汁に入れたものを出したとき。これを気に入るかどうかは、かなり分かれ目だ。

マツコさんは「唐揚げ、違和感がないわ。前から僕は味噌汁の中にいます、と言う顔をしてる」と表現した。
唸った。
味噌汁に合うとか合わないではなく、違和感がない事を、擬人法で彼女は表現したのだ。その言葉のチョイスは見事だ。

このほか、チラリとマツコさんは、味噌と醤油の歴史の長さについて触れていた。よく勉強されている。ひけらかさない知識の断片を見た。

オンエアではほとんどカットされていたが、収録の途中で「私はお酒飲んでも全然酔わないんだよなぁ」といった独り語りの時間帯もあった。スパイスとして、アクセントとして、使える部分を準備すると言う配慮なのか。少しだけ自虐的な要素を出しながら、僕に負荷をかけずに、独り語りする。

結局、マツコさんは6杯の味噌汁を飲み干した。普通、テレビの試食と言うものはちょっと食べて残すものだが、全部飲み干された。
そこにも誠実な姿勢を見た。

さらに、スタッフの方が、味噌汁の美しい映像で加勢してくれて。オンエアでは見事な作品に仕上がっていた。

マツコさんの見せる優しさと強さ。思慮深さと軽快さ。このバランス配合の妙に唸ることしきりだった。
一流はすごい。

僕は、今回、味噌汁を紹介するために出かけた。でも、マツコさんと言う器の中に、番組スタッフの皆さんが出汁を入れ、そこに具材としての私がかき混ぜられた。今回の番組作成自体が一杯の味噌汁のようだった。

ともあれ、一流芸能人とのガチンコの真剣勝負は人生の財産。光栄な共演の機会。いろんなことを感じたし、学んだ。

コロナの時代、抵抗力をつけるつけるためにも味噌汁のポテンシャルはとても大きい。これからもコツコツと作っていこう。

マツコさんと番組スタッフの皆様に心より御礼申し上げます。

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◆#ミソシラー としてインスタグラムにて
味噌汁の魅力を発信しております!
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