見出し画像

【コラムその3】 「新人弁護士は信用できない」と言われた時のボス弁の神対応

コラムは小笠原耕司先生の名言を紹介するコーナーとなりつつありますが、事務所内でも先生と呼ぶ理由弁護士バッジを付けない理由に続き私の古巣のボスであった小笠原先生のエピソードです。

私が採用した弁護士を信用できないということは私の人を見る目を信用しないということだ!

これもまた私が弁護士になって1〜2か月の頃の話です。

弁護士になってすぐのヒヨッ子にもかかわらず、小笠原先生から超有名企業のクライアントの案件を主担当として担当するように言われました。
私は、新人の私にとても大切なクライアントの仕事を任してくれたことがとても嬉しく思い、喜び勇んでクライアントの担当者にご連絡しました。

すると担当者の方(超有名企業の役員クラスの方です。)は明らかに私がピヨピヨしているのに気が付き、弁護士になって何年と聞かれました。
イヤな予感がしつつもウソをつくわけにもいかず、正直に弁護士登録したばかりですと答えました。
すると担当者の方から、大切な案件を新人が担当するのというのはイヤなので担当者を変えて欲しい、そのように小笠原先生にも直接連絡すると言われてしまいました。

すぐに小笠原先生に報告に行ったところ、小笠原先生はその場でその担当者の方に電話しました。

私は当然主担当は外されるだろうと思ったのですが、小笠原先生の対応は異なりました。

担当者の方(繰り返しになりますが超有名企業の役員クラスの方です。)が電話に出るなり、小笠原先生は語気鋭く話し始めました。

今、報告を受けたが、新人という理由で担当を変えて欲しいとはとても失礼な話だ。

私は人を見る目に自信を持っている。私が採用したのだからうちの勤務弁護士は新人であってもみな優秀だ。
そして、その弁護士がしっかりとこの案件を解決できると自信を持っているから主担当にしているんだ。

それを新人だからという理由で担当を変えて欲しいだなんて私の人を見る目を疑っているに等しい。

それでも担当を変えろというなら、この案件はウチの事務所では担当しない。

相手は超有名企業ですよ。しかも、その役員クラスの方ですよ。
お付き合いしている弁護士なんて複数います。「新人が担当するのがイヤだったら依頼するな」などと言えば他の事務所に依頼されてしまうし、もう二度と依頼が来ないかもしれません。

そのようなリスクを顧みず、私の目の前で武内を変えろというなら依頼するなと啖呵を切ってくれた小笠原先生はメッチャ格好良かったです。

顛末を話すと、結局ご依頼は継続となり主担当も変わらず私のままでした。

私は小笠原先生にそこまで信頼されていることにとても喜びましたし、ボスがそこまで啖呵を切ってくれた以上は絶対によい解決をしなければと新人ながら必死に頑張りました。

そして、当然小笠原先生も普段以上に積極的に関与してくれ、案件は無事に上手くまとまりました。

後日談

小笠原事務所を卒業してずいぶん後になってから、小笠原先生に当時の優しさに感謝の気持ちを伝えつつ、あのクライアント相手によくあんなこと言えましたねと聞いてみました。

すると、小笠原先生は

あの会社は従業員を大切にするよい会社だし、そこの偉い人なんだから採用や新人教育に関わったことがあるだろう。
ちょっとトラブルを抱えて不安になっただけで新人の大切さを知ってるはずなので、こちらの新人に対する考え方を伝えればきちんと分かってもらえると思っていたよ。

とのことでした。

そして、その後も先方の担当者とは仲良くしており、今も顔を会わせるとあの時よい解決をしてくれたおかげで助かったと言ってもらえるとのことでした。

案件には小笠原先生も積極的に関与してくれているのですから、私が関与してるから安心してくださいと無難な回答をすることもできたと思うのです。

そのようなことをせず、真正面から「新人弁護士であっても信頼しているから担当させているのだ」と伝えた小笠原先生は本当に格好良いと思いました。

また、そうは言いつつも、案件には積極的に関与してきちんと結果を出し、新人に担当させながらも結果を出すことで、依頼者からもより信頼されるという最高の結果を出しました。

10数年経った今もあの時の小笠原先生の対応は神対応だったと思います。


今は私も自分の法律事務所を構え勤務弁護士にお仕事をお願いしている身になりましたが、同じようなシチュエーションになったら小笠原先生のような対応ができるか考えるとこともあります。

でも、やっぱり私だったら、新人が担当しますが私が方針を決めてしっかり監督しているから大丈夫ですよと無難な回答をするだろうなと思います。

※本記事はクライアントとのやり取りを含むため小笠原先生の事前の許可を得て掲載しています。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?