【コラムその2】弁護士バッジを付けないのは依頼者のため?!
【コラムその1】なんで事務所内でも先生って呼ぶの?に続き、私の師匠である小笠原耕司先生の教えの紹介です。
弁護士バッジってありますよね。ひまわりをかたどったと言われる金色のアレです。
弁護士バッジってつけなかったり裏返しにつける先生方も多いのですがアルシエンの弁護士も弁護士バッジをほとんどつけません。
大きいからとか目立つからとか色々と着けない理由はあるのですが、依頼者のためというのが1番の理由です。
依頼者のためにバッジは付けない?
依頼者のためとカッコ良いことを言いましたが、これも古巣の小笠原耕司先生の教えです。
当時弁護士になりたての私は、弁護士になれたことが嬉しくて弁護士バッジをつけていました。
登録してすぐのある日、依頼者のお宅に行く必要がある業務があり、その際に弁護士バッジをつけて行ったら小笠原先生に「弁護士バッジなどつけるなと!」と言われてしまいました。
生意気盛りだった私は、弁護士は弁護士バッジ(記章)をつけると規程にも書いてあるのになぜバッジを外せと言われないといけないのだと思い、小笠原先生になぜバッジを付けてはいけないのか理由を尋ねました。
※なお、正しくは「帯用」であり「着用」ではないので、必ずしも身に付ける必要はないようです(日本弁護士連合会会則第29条第2項)。
その時、小笠原先生は僕の生意気な質問に怒りもせず、分かりやすく、以下のように説明してくれました。
事務所に来た人は名刺交換をするのだから武内くんが弁護士って分かるよね。だったら弁護士バッジをつけなくても弁護士って分かるでしょう。
裁判所に行けば立居振る舞いから、本人か弁護士かは分かるよね。弁護士バッジをつけなくてもどちらが弁護士って分かるでしょう。
弁護士と一緒にいることを周りの人に言いたいという人は、「この人は私の顧問弁護士なんですよ」などとと自ら紹介してくれるよね。弁護士バッジをつけなくてもよいでしょう。
でも、今日は依頼者の家に向かっているんだよ。
弁護士バッジを付けた人が家に入っていくのを近所の人が見たら「あの家何かトラブルがあったのかな」と思われてしまう可能性があるよね。
バッジを付けていなければスーツを着た人が家に入っただけだから、営業マンか来たとしか思われないでしょう。
これは依頼者の家以外でもそうだよね。
例えば裁判所に依頼者と一緒に行く時に、たまたま依頼者が知り合いに会ってしまったとしたらどう?
弁護士バッジを付けていなければ官公庁街を仕事の人と一緒に歩いているだけだと思われるよね。
でも、弁護士バッジを付けている人と歩いているって知られたら、たまたま会った友人に「何か裁判を抱えているのかな」と思われてしまうかもしれないよね。
弁護士というのは人のトラブルを抱える仕事なんだよ。
依頼者は、弁護士と一緒にいるだけで「ひょっとしてトラブルを抱えているの?」と思われる可能性があるんだよ。
ふつう依頼者はトラブルを抱えていることを他の人に知られたくないよね。
でも、依頼者から弁護士に対して「弁護士と一緒にいるとは知られたくないから弁護士バッジを外して欲しい」とは言えないよね。
ということで、依頼者に迷惑をかける可能性がある以上は、弁護士バッジは付けちゃダメなんだよ。
飲みの席の話題にどうぞ
この話を聞いたとき、小笠原先生は弁護士バッジを付けるか付けないかだけでも、ここまで依頼者のことを考えているのかと驚きました。
それ以来、私も、その教えを守って、セミナー講師と取材の写真撮影以外では弁護士バッジは付けないようにしています。
(※決してバッジを付けている先生を否定する意図はなく、あくまで師匠である小笠原先生の教えを守っているという趣旨です。)
そして、事務所に入った弁護士にも小笠原先生の教えを伝えるようにしています。かくしてアルシエンの弁護士は誰もバッジを付けなくなりました。
このコラムをお読みの同業の先生の中には、元々弁護士バッジを付けていなかったり裏返して付けている先生方も多いかと思います。
飲みの席などで「弁護士です」というと「バッジは付けていないの?」とか「何で裏返しに付けているの?」とか聞かれることもありますよね。
もしそのような際には、大きくて目立つからとかではなく、上のエピソードをお話しすることをオススメします。
バッジ一つでそこまで依頼者のこと考えているなんて、何て依頼者想いの素敵な弁護士なんだと思われます。
私もこれまで何度この話をしたことか(笑)。
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