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小説

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レビューが難しいなら小説を書けばいいじゃない ライブから生まれた小説
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2022年9月の記事一覧

ゆい

ゆい

ずっとおかしいと思っていた。わたしがおかしいのかそれともこの世界がおかしいのか。

知らないおじさんに「かわいいね」と言われるとゾッとして吐き気がした。
祖父母と両親とランドセルを買いに行った時、ピンクじゃなくてブラウンを選んだらみんな少しがっかりしているように見えた。
漫画の主人公が男の子を好きになって、告白して手を握ってキスをして背景がお花畑になるのが理解できなかった。
修学旅行の夜はみんなの

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美華

美華

「田嶋美華って名前、かっこいいよな。」
多田が言った。
放課後の教室。今日は二人で日直なので、わたしは日誌を書いている。多田遼太は机と椅子の乱れを直して、床にゴミが落ちていないかチェックしている。
 「は?名前はかっこいいけど、顔はイマイチってか。」
こちとら伊達に16年間この名前で生きてきてないんだよ。
 「あ、ごめん。そういう意味じゃなくて、単純に四字熟語みたいでかっこいいなって…」

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