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小説

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レビューが難しいなら小説を書けばいいじゃない ライブから生まれた小説
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2022年8月の記事一覧

秀樹

秀樹

 電話から彼女の声が飛んでくる。
「もしもし」
金曜日の23時過ぎ。
「あ〜もしもしぃ〜」
 酔ってるな。
「秀樹何してた?」
「ん〜、そろそろ寝ようかなって思ってた。」
歯、みがかなきゃな。
「どこ?家にいるの?飲んでるでしょ。」
 彼女、奈津は酔っ払って歩きながら電話してくる癖があるので前から心配なんだ。
「もう帰ってきたよ!秀樹が心配するから!」
ならよかった。
「今日ゼミの発表の日

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雅志

雅志

 夏休みがはじまる前の日の夜、ぼくの妹が生まれた。

 4年生までぼくの苗字は垣内だった。お母さんが再婚して、渡辺になった。その前のお父さんの苗字は知らない。ぼくが赤ちゃんの時にお母さんはぼくを連れて実家に帰った。お母さんが再婚するまで、ぼくはその家でおじいちゃんおばあちゃんお母さんと暮らした。

 お母さんは総合病院の外科病棟の看護師だ。渡辺のおじさんは入院患者さんだった。
 お母さんはぼくのお

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敬

 つきあってもうすぐ6年になる彼女に別れを告げられた。
 正確には少し距離を置きたいと言われただけだけど、このまま自然消滅しそうな気配が濃厚だ。

 今度の土日久しぶりに二人でどこか行きたいと思って会社帰りの電車降りてLINEしたら彼女が電話してきた。
 「もしもし?」
「ああタカシごめん。会って話したいのは山々なんだけど、会ってしまったら、なんか流されちゃいそうだから、今言うね!
なんてい

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