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ブックレビュー 「東京タワーオカンとボクと、時々オトン」

はじめに

「親子の絆」という言葉があります。親子の血が繋がっている関係は様々な人と関わりながら、生きていく上で唯一無二であると言えます。この物語はそんな「親子の絆」の本当の意味を考えさせられるストーリーです。

あらすじ

主人公の「ボク」(周りからはマー君と呼ばれる)は福岡県の筑紫に、子煩悩で誰よりも優しい母(オカン)と、定職に就かず自由奔放な父(オトン)の間に生まれます。ボクはオトンとは幼い頃から別居状態になり、母の力強さとやさしさに助けられながら、母思いの息子に育ちます。

その後ボクは高校は大分に行き一人暮らし、大学は東京の大学を選びます。その間定期的に会うオカンと、節目節目で最低限の親の努めを果たすオトン。ボクは美術系の仕事に就きますが、熱中することができずに職を離れ堕落した日々を過ごします。

そんな中ボクが30歳になった時、オカンが癌になってしまいます。そしてボクはオカンの面倒を見るため、東京にオカンを呼び15年ぶりの一緒に暮らし始めます。その生活の中でかつての楽しさに満ちた生活が戻り、ボクの仕事も少しずつ前に進み始めます。

しかし、そんな生活も束の間、再びオカンのガンが再発。そんな絶望的な状況で、止まりかけていた3人の「親子の絆」という歯車が少しずつ動き始めます。

おすすめポイント

①各章の導入部

物語の中の各章の導入部には、ボクの心の心境や考え方の変化が綴られています。歳を取るにつれて変わっていく考え方と、変わらない考え方がそこには描かれており、一人の人間の成長について深く考えることができます。

②オトンの知らないオカン、オカンの知らないオトン

別居状態ではあるものの、会えば普通の夫婦のような関係性のオカンとオトン。しかし、ボクがオカンにはオトンに見せない姿のオカンがあり、オトンにはオカンには見せない姿のオトンがいることに気づくシーンがあります。私には父と母と子が家族という小さな組織で、誰もが皆抱える問題を描写したシーンにとらえられ非常に考えさせられました。

③東京について

様々な地域から、人々が集い日本の首都として機能している東京。作中でそんな東京を「人々が東京タワーを中心にぐるぐる回転している」と表すシーンがあります。この「ぐるぐる」という表現は、作中でこの例え以外でも様々なシーンで使用されます。私は東京という都市の状態を様々な日常的な場面で比喩しているように感じ、「ぐるぐる」という表現が出てくる度に更に集中して読書をしていました(笑)


最後に

・この物語は「親子の絆」以外にも様々な描写や、背景を楽しむことができます。そのため、あまり小説を普段読まない人などに是非読んでもらい、読書の楽しさを感じていただきたいです!



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