お酒を飲みながら、料理をすること
料理が、ずっと苦手だった。
調味料や調理器具でどんどん台所が埋まっていき、メモリ不足のPCみたいな気持ちで、狭っこい範囲でちまちま作業をするのも、料理をしている間、何を考えていたらいいのか分からなくなって、なんとなく暇に感じてしまう目や頭も。
それが、今ではとびきりたのしみの時間になった。お酒を飲みながら、動画をみながら料理をつくるようになったからだ。ちびちび好きな缶をあけながら、ぼんやり見るともなしに動画をみながら、何かを刻むのは楽しい。ふわふわした心地の中で、猛然とにんじんをすり下ろしたり、玉ねぎを炒めるのは、とても楽しい。
Amazonの、FIREタブレットを買ったことが大きかった。安くて台所に置いて気楽にばんばん使えるタブレットで、大きさが実にちょうどいい。動きもサクサクでとても快適だ。(amazonのサイバーマンデーのときに買うと、5000円くらいで買えた)
これを買ってから、約一年ほど経つけれど、年末におせち料理を、ガンプラを組み立てるように少しずつ作った日のことが忘れられない。
昼間からちびちびやりながら、Netflixでアニメをまとめて観たり、テラスハウスを副音声付きで観たり、ドキュメンタリーをぐんぐん観ていた。手元ではゆっくりとおせちが仕上がってゆき、それでも私は日曜日にごろごろしながら、好きなテレビをみてるみたいな気持ちだった。
不毛と堕落の甘美な罪悪感と、もくもくと真面目に作業をする時間が同時進行している感じがとても良かった。今年の年末も、そんなふうにおせちを作るのを楽しみにしている。
また、毎週のお弁当の作り置きも、ささやかだけれどとてもたのしい。あまり時間がないので、どれだけマルチタスクが出来るかを、ひそかに自分で試したりしている。
卵を茹でながら、調味液を作りながら、肉を焼きながら、オクラに塩を馴染ませながら、バチェラーを観ながら、缶をあおる。自分で全部しているけれど、のんびりした気持ちのままに、料理が全自動で出来ていく気持ちを味わえてたのしい。
これからも、私はふわふわしながら何かを作る。何かをみながら、何かを飲みながら、何かを炒めて、何かを和える。うすぼんやりした心地と、てきぱきする手作業のどっちもを感じながら、動画をみる。苦手なことが、楽しいことに変わることはとてもうれしい。