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アマプラで「映画すみっコぐらし」を観て、感情のカタストロフに沈没した話。

助けてください。全く泣き止めなくなってしまいました。

去年の映画公開時に、何やらざわめきがあったことは知っていたのです。「ラストが凄い」とか「ひよこの正体は」等のワードをちらちら見かけました。だから『何か』あるんだろうな〜って知っていました。
知っていたはずなのに、観賞後、翌日になっても、バスタオルを濡らしてしゃくり上げているこの始末。何だ。あれは何だったんだ。

結論から言うと、Amazonプライムに入っている方は、ぜひとも「映画すみっコぐらし 飛び出す絵本とひみつのコ」を投与することをお勧めします。たった1時間と5分です。コロナに身も心も疲弊して、何をしていても心細い今、人類にはすみっコたちにしか癒せない領域がある!!!



この映画は、前半は言ってしまえばほとんどEテレです。
すみっコの世界のなかで、人畜無害な生き物たちがマイペースにゆるゆる過ごす様子が綴られます。

大きいお友達には少々、眠たい展開があるかもしれません。しかしそれは後のカタストロフの為の布石なので、1秒たりとも漏らさずに眼前のふわもこたちを注視してください。
まさか1時間後、自分が生搾りグレープフルーツの搾りかすになることなんて、全く予見できないであろう、束の間の平和な時間をお楽しみください。


彼らは、食べ残されたとんかつの脂身や、エビフライのしっぽ。本当は恐竜の子供だと言えずにいる、とかげ。恥ずかしがり屋のねこ、寒がりの白くま。昔は頭にお皿があったような気がしている、みどりいろのペンギン。どこかへなちょこで憎めない、ころころした生き物たち。

私は正直なところ、このキャラクターたちを映画を観るまで、よく知りませんでした。

文房具売り場の1コーナーに、ふわふわと積み上がったマスコットを見かけたり、ちびっこたちが楽しそうにグッズを選ぶ様子を微笑ましく眺めることはあれど、特段気にかけたことはない存在でした。信じられねえ。今は完全に家族だと思ってるんですけど…!!


プロローグを終えて序盤、いつもの喫茶店でごはんを注文するすみッコたち。そこで見つけた飛び出す絵本に吸い込まれた先は、おとぎ話の世界。

彼らは桃太郎になってみたり、人魚姫の世界にもぐりこんだり、さまざまな「昔々あるところに」を体現します。この時点もまだ、私の精神は完全に無事です。ふわふわで微笑ましいギャグと、心温まる連携をのんびりとした気持ちで見守っていました。


(以下、重要なねたばれを含みます)


中盤、灰色の迷子のひよこが現れてから、若干風向きがかわります。
「このひよこの正体は何?」「きみのおうちはどこ?」とストーリーに達成するべきタスクが課されるからです。

ここで私は「あーなるほどね」と完全に分かり顔をしていました。
「灰色のひよこ」に、「おとぎ話」ときたら、大人は即「把握」の顔をしてしまうことでしょう。これ、分かっちゃったな〜。

(でもどうか、私のこの陳腐な予想を裏切ってくれ…!頼む…!)と祈りながら観ていくと、お前のチンケな思惑などお見通しだと言わんばかりに、あっさりとひよこは「みにくいあひるの子」ではない事が答え合わせされます。

え???違うの???じゃあ誰???この子は何???と私がはてなマークに埋もれる中、「じゃあ、すみっコに来る?」「いっしょにおいでよ!」と優しくみんなに受け入れられ、涙をこぼす迷子のひよこ。

元の世界へ戻るゲートも見つかり、みんなで力を合わせてゲートをくぐろうと奮闘します。

でも、なぜだかひよこだけは、ゲートから弾きだされて通ることができません。そこで、なんとか突破しようと必死に頑張るのではなくて、全てを理解した表情でさよならと手を振ります。自分が絶対にゲートを通れないことを知っているからです。

ここで完全に気がつきました。

序盤、どこか生きづらそうなキャラクターたちの属性を知り「これ自分じゃん」と思ったのは誰だった?

(もう最近世界しんどすぎるし、この子たちと一緒になってごろごろしてたいな〜)と頭を掠めてもどうしたって次元の壁を乗り越えられないのは誰だった??

「すみっコにおいでよ」と言われて、まるで自分が言われたみたいに嬉しくて、ひよこと一緒に涙をこぼしていたのは誰だった???


私じゃん!!!!!


ひよこ!!!君はわたしだ!!!!私だったんだ!!!!!


お話の中のひよこの正体は、絵本のまっしろなページに書かれた、鉛筆の落書きでした。まっしろのページにぽつんと書かれたひとりぼっちの姿。
それは、やさしいあの子たちの世界になんて、到底混ざることができない、現実の世界を生きる寄るべなき私たちの姿そのものでした。


ここからはもう完全にタランティーノなのですが、元の世界へ帰ってきたすみっコたちはすぐに、絵本の白紙ページのひよこの周りに、赤い屋根のおうちや、広い庭、たくさんのお花を描き足してくれます。
ひとりぼっちで寂しくないように、色とりどりのひよこの姿に扮した自分たちも、ひよこの周りを囲むように描いてくれます。1人じゃないよと言わんばかりに。
確定してしまった悲しい過去も、おとぎ話の中でだけは叶えられる。
ワンスアポンアタイム、イン、すみっコぐらし!!!


そこまで‥そこまでしてくれるというのか!!きみたちはなんて、なんて優しいんだ!!!!!


幼少のみぎり、ごんぎつねを読んだときに、ごんの命が助かって暖かいところでごはんをいっぱい食べたり、ふかふかのお布団で眠るところを画用紙に描いた。友達のきつねも周りにたくさん描いた。悲しい物語は変えられないけれど、優しい続きを想像することに慰められた。

それと同じことを、お前、すみっコ、きみたちがしてくれるというのか!!!まさかそこに私が居ないことを、寂しいとでも思って、おもって、くれていると言うのか…!!!!


次元の壁は越えられない。いくらすみっコたちがぬいぐるみになっても、いっしょに遊ぶことは出来ない。だけどきみのことは忘れないよ。同じ世界でごろごろしたかったよ。同じ生き物になって、ぎゅっと抱き合いたかったよ。そんなかんじのエンドロールが流れて、私は壊れかけの蛇口になりました。

すみっコ…!!みんな…!!きみたちは家族だッ!!!!!


もう完全に泣いているのだが、映画すみっコぐらしは2019年の11月に公開された映画です。これが2020年の3月26日という異様なまでの早さで、Amazonプライムにて公開されました。
サンエックスさんの懐の深さ、その意味を考えるだけで、このしんどい日々に、どれだけ寄り添ってくれるつもりなんですか!!とまたバスタオルを濡らすことになってしまいます。やさしいかよ〜!!!

映画館でみていたら、間違いなく無限に洗顔することになっていました。己の涙で。それが安全安心におうちで観られるのですから、ご鑑賞しない選択肢はないはずです。

いろいろと気がふさいでストレスが溜まっているとき、心がつかれてへろへろなとき、何も考えたくないとき、ただただやさしい毛布のような生き物たちにぎゅっと抱き締められてきてください。涙の搾りかすになるデトックス効果は凄まじいものがあります。

わたしは可及的速やかに家族たちの何らかのグッズを購入したいと思います。

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