生きてるって、すごい。

ガンになって感じたこと。

本にも書きましたが、あるとき、電車で目の前におじいさんが座っていました。年齢は70歳くらいでしょうか。

そう、白髪で眉間にしわを寄せ、苦しそうな表情で、目をつぶって、寝ていました。

以前の僕なら、気にも留めなかったでしょう。

おじいさんの存在すら、気づかなかったでしょう。

でも、その時僕は「肺癌ステージ4」。

医者からも「1年生存率3割」「5年生存率10%以下」と言われていました。

おじいさんの顔を見た瞬間、

ああ、すごい!

この人、この年齢まで生きてるんだ!

すごい、すごいよ、おじいさん!

あなたは本当に、すごい人です!

そういう感嘆と賞賛の気持ちが湧いてきました。

ガンになるまで明確に、いや、明晰に自覚していませんでしたが、僕たちはいつかは死にます。

でもそれは「いつか」であって、目前に迫ってきているものではありませんでした。

僕は「肺癌ステージ4」という現実が目の前にやってきて、はじめて「死」という現実に向かい合ったのです。

それまでは「思考」の中で、いつかはやって来る「死」に対して準備をしてきたつもりでした。

「死ぬときに、後悔しないようにしよう」とか、

「笑って死ぬために、やりたいことをやろう」とか。

でも、そんな「思考」の作り出す「対策」は、現実の死の恐怖の前では無力でした。

考えた「対策」で何とかできるほど、僕にとって「死」は甘くなかったのです。

人は必ず死にます。

それは、必ずやって来ます。

そもそも「死」とは何なのか?

では「生きる」って何なのか?

この3次元世界で肉体という乗り物の中に入っている「魂」って、何なのか?

これは、思考で考えて答えが出るものではないでしょう。

自分が「体験」の中で「つかんで」いくものではないでしょうか。

まあ、とにかく、長生きするってことだけでも、十分以上に凄いこと。

おじいさん、あなたの寝顔で、僕は気づかせて頂きました。

ありがとうございます。

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